不動産の売買は、契約を締結された時点をもって完了というわけではありません。売主は、売却した不動産を買主に引渡して初めて契約が履行されます。そのため、契約を締結した後も責任をもって売却する物件を管理しなければならないのです。
ここでは、不動産売買における引渡しまでの注意点について紹介します。
この記事の目次
引渡しの期日までにするべきことを済ませよう
不動産の売買契約を締結したら、物件の引渡しまでに売主のするべきことはたくさんあります。不動産の売買契約では、引渡しに関する事項についても取り決められるのが通常です。そのなかでは、決められた期日までに不動産の引渡しを完了する旨についても記載されることになります。もし、その期日を過ぎても引渡しが完了できないとなると、債務不履行と見なされて違約金の支払いを請求されることもあります。
それだけに、所定の期日から逆算して、するべきことをきっちりこなしておかなければならないのです。売買契約から不動産の引渡しまでの期間は、約1カ月といったところが相場となっています。
売買契約で引渡しの期日を決めてしまったら、後になってそれをキャンセルすることは容易ではありません。引渡し期日を失念していたということがないよう、契約書をしっかり確認して期日を忘れないようにしてください。引渡しについてわからないことがあるなら、速やかに不動産会社に問い合わせて確認するようにしましょう。
ちなみに、売却代金の決済も引渡し時に行われるのが通常です。売買契約を結んだら、すぐに売却代金をもらえるわけではありませんので注意しましょう。
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時間がかかることもある?登記の準備は早めに済まそう
不動産の売買契約を結んだら、まず司法書士に依頼して所有権移転登記の準備をしなければなりません。この準備をしっかりしておかないと、引渡し日に滞りなく所有権移転登記ができなくなってしまいます。
所有権移転登記は自分でも手続きすることができますが、専門的な知識が必要になるので司法書士などに依頼するのがよいでしょう。とりわけ登記記録の実際の状況が異なる場合、登記の変更手続きにも時間がかかってしまいます。
たとえば、「登記記録の住所と現住所が違う場合」や、「結婚などによって苗字が変わっていた場合」など、所有権移転登記をする際に特別な手続きが必要になってしまいます。
売買契約締結から不動産の引渡しまで、実際そこまで時間がありませんから、不測の事態にも備えてなるべく早く専門家に手続きを依頼するようにしてください。また、売却物件に抵当権が設定されている場合は、抵当権の抹消手続きも合わせて行っていく必要があります。まだローンの残債がある場合は、金融機関とも日程を調整しなければなりません。
抵当権抹消登記にも同じように時間がかかることがあるので、金融機関や不動産会社とも連携をとって早め早めの対策を取っておくようにしましょう。
敷地の測量を専門家に依頼する
締結した売買契約が実測売買であれば、不動産の引渡し前に敷地の測量をしておかなければなりません。
実測売買とは
実測売買とは、売買契約の締結後に土地の測量を行い、そこで算出された面積を基準に売買代金を決定する手法のことです。
敷地の測量は、専門の測量士や土地家屋調査士に依頼することになります。実際の測量には、境界の確認をするために近隣住民の立ち合いも必要とされます。測量士や土地家屋調査士と共に近隣住民とも日程の調整をする必要があるので、引渡し前に測量を終えられるよう早めに準備しておくようにしましょう。
また、敷地の測量をしない場合でも、敷地の境界を確認しておく必要はあります。敷地の境界確認は買主の現地立ち合いのもと行われるのが通常です。日程の調整は仲介の不動産会社が行ってくれることが多いですが、なかには境界の確認が難しい場合もあります。その場合は、土地家屋調査士の現地調査が必要になります。
境界があいまいな場合は、近隣住民とトラブルになることもあるので、やはり早めの準備が不可欠となるでしょう。
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建物が古い場合は解体工事をすることも
きちんと更地にしてから渡しましょう
家屋が古くなっている場合などは、建物を解体して更地にしたうえで引渡しを行うこともあります。その場合は、引渡しまでに敷地を更地にしておかなければなりません。解体工事業者に依頼して、期日までに解体工事を完了できるように調整しましょう。
更地にして引渡しをする場合、建物を解体しただけでは足りません。解体した廃材などもすべて撤去し、何もない状態で引渡しをするのが原則です。
土地が狭く、重機が搬入できない場合などは、工事が延びて思いのほか日数がかかってしまうこともあります。また、天候不良によって工事ができないといった事態も考えなければなりません。そのため、ギリギリの日程で解体工事を強行するのはおすすめできません。
引渡しの期日より数週間前には、整地を終えているくらいの余裕を持って解体工事を依頼したいところです。
ただし、建物の解体については、契約に融資利用の条項が付されることがあります。融資利用の条項とは、買主が不動産購入の融資を受けられなかったときに、売買契約を白紙に戻すことができるという特別条項のことです。この融資利用の条項がある場合は、白紙解除の可能性がなくなったときをもって解体工事を始めることになります。
期日までに引っ越しできるよう準備する
売買契約を締結したら、売主は期日までに引っ越しを済ませておく必要があります。完全な空き家にして引渡すのが原則ですが、それぞれの契約によって引渡しの条件は異なります。契約書を参照しながら、什器や備品の確認をして引渡しの当日に備えましょう。
遅くとも、引渡し期日の数日前には新居への引っ越しを完了しておきたいところです。
時期によっては、引っ越し業者を手配するのが難しい場合もあります。春先などは引っ越し業者が繁忙期に入るため、こちらの予定通りに引っ越しの予約をできないこともあるでしょう。引っ越し業者は、早めに連絡しておかないと費用が割高になってしまうこともあるので、新居が決まっているなら早めに引っ越しの予約を取り付けるようにしてください。
とりわけ、売却した物件を賃貸で貸し出していた場合、貸借人の退去が売買契約の条件になっていることが多いです。賃借人に対しても、いきなり出ていけとはいえないので、日程を調整して無理なく退去してもらえるようにしましょう。退去を巡って賃借人と揉めることも考えられます。そのため、やはり早め早めの行動が大切になります。
さまざまな書類や鍵の準備も忘れずに
引渡しが完了するまで、売却した不動産は売主に帰属することになります。そのため、不動産に関わる税金や電気代などの光熱費も、引渡し日までは売主が負担しなければなりません。固定資産税や都市計画税などの支払いがまだ残っているなら、事前にしっかりと済ませておくようにしてください。
それから、引渡しの当日には、不動産だけでなく必要書類の引渡しも行います。実測の図面や付帯設備の保証書や取扱説明書など、前もってしっかり準備しておいてください。
ほかにも、住民票や印鑑証明書、固定資産税価額証明書なども引渡し当日に必要になります。また、鍵の引渡しも当日行いますが、合鍵などもすべて渡すのが通常です。誰かに合鍵を預けている場合などは、引渡しの期日までに返してもらうようにしましょう。引渡し日に書類や鍵が用意できていないと、滞りなく引渡しを完了できなくなってしまうので、抜かりないように準備しておいてください。
まとめ
準備をきちんと終えて当日に備えよう
売買契約した不動産をスムーズに引渡すためには、期日から逆算した計画的な準備が欠かせません。期日までに準備を終えておくのはもちろん、可能であれば引渡し当日も現地へ足を運んで異変がないか確認しておきたいところです。引渡しがきちんと完了するまで、物件の管理責任は売主の側に帰属しています。
売却した不動産を気持ちよく引渡すためにも、最後まで気を抜くことなく当日に備えましょう。