マンション売却時、管理費・修繕積立金・固定資産税などの費用は、どうなるのでしょうか。今回は、マンション売却時における管理費・修繕積立金・固定資産税の清算について解説します。

管理費や修繕積立金は精算できる?

管理費とは?

マンションの日常管理に使われる費用のことで、共有部分の掃除や点検、共有部分の電気代、植栽の手入れ、管理会社に支払う委託費など共有部分を快適な状態にするために利用されます。

修繕積立金とは?

マンションのメンテナンスのために積み立てる費用のことです。外壁や屋上の塗り替え、給排水管の交換などの大規模修繕時や自然災害による損傷の修繕時にも利用されます。

築年数が浅いマンションでは修繕積立金の負担が少ない傾向にあります。ただし築年数が経つごとに値上がりする物件が増えています。また築年数が古いマンションでは修繕費用が高くなるため、修繕積立金も高くなる場合があります。

転居後の管理費や修繕積立金は精算できる?

これらは、マンションの引き渡し日までは売主が払いますが、引き渡し日以降は買主負担になります。マンション引き渡し日以降の、管理費・修繕積立金・固定資産税は、売主に清算金として戻ってきます。

具体的には、管理費・修繕積立金・固定資産税はすべて先払いのため、日割り計算を行い、買主から売主に決済日(マンション売却のお金が入る日)に精算金として入金されます。

また売却後、これまで支払った管理費・修繕積立金は返還されません。これらの費用はマンションのために支払った費用なので今後の居住者のために利用されます。
特に修繕積立金は長期的な修繕を見越して徴収されているため、自身の居住中に大規模修繕が行われなかったとしても売却後に返還されることはありません。

続いて清算金について解説していきます。

清算金とは?

マンション売買における清算金とはすでに売主が払ってしまっているマンション受け渡し日以降の費用を、決済日に買主から売主に戻すお金のことです。

清算金には

  1. 管理費
  2. 修繕積立金
  3. 固定資産税

があります。

①管理費

マンションの管理費は修繕積立金と一緒に次月分を「前納」していることがほとんどです。そのため、マンションの引き渡し日を境に、引き渡し日以降、買主は売主に清算金として管理費を支払います。

例えば管理費が3万で引き渡し日が月中の場合

5月中に売主は管理費として
6月分の3万円をマンションの管理組合に支払済み

6月10日にマンション売却の決済日
引き渡し日は6月15日

6月10日に買主は売却金とともに
精算金として6月15日以降の管理費を支払う

6月15日に売主は買主にマンションを引き渡す

→つまり、買主は清算金の一部として決済日に1万6000円(16日分)を支払います。 

②修繕積立金

修繕積立金の清算についての考え方は、管理費と同じです。

マンションの引き渡し日以降は、買主が支払います。同様に修繕積立金も前払いですから、売主が事前に支払った修繕積立金を、マンション売却の決済日に清算金として買主から受け取ります。

例えば積立修繕金が1万で引き渡し日が月中の場合

5月中に売主は修繕積立金として6月分の1万円をマンションの管理組合に支払済み

6月10日にマンション売却の決済日、引き渡し日は6月15日

6月10日に買主は売却金とともに精算金として6月15日以降の修繕積立金を支払う

6月15日に売主は買主にマンションを引き渡す

→ つまり、買主は清算金の一部として決済日に5333円(16日分)を支払います。

また入居中に修繕は行われていなかったとしても、今まで支払った修繕積立金は戻ってきません。修繕積立金は管理組合の財産であるためです。

③固定資産税

固定資産税は1月1日に固定資産を所有する人が資産の価格に応じて前払いで収める税金で、一括納付か分割納付を選ぶことができます。固定資産税と同時に徴収される都市計画税も同様です。

固定資産税も、管理費や修繕積立金と同じで、マンション引き渡し日以降は買主が負担するため、マンション売却の決済日に清算金として支払います。

<1月1日が起算日>固定資産税が10万で引き渡し日が6月15日の場合

2022年4月に売主は固定資産税として2022年分を一括で10万円を納付済み

6月10日にマンション売却の決済日、引き渡し日は6月15日

6月10日に買主は売却金とともに精算金として6月15日以降の固定資産税を支払う

6月15日に売主は買主にマンションを引き渡す

→ 買主は清算金の一部として、決済日に54,795円(200日分)を支払います。

※都市計画税も固定資産税と同じで、引き渡し日以降は清算金として、買主が売り主に支払います。

また固定資産税に関しては、1月1日を起算日にするのが関東では一般的ですが、関西では4月1日を起算日することがあります。そのため買主は翌年の3月31日までの分を負担することになります。

<4月1日が起算日>固定資産税が10万で引き渡し日が6月15日の場合

買主は清算金の一部として、決済日に79,452円(290日分)を支払います。

 

もし買手と売手の業者が1月1日と4月1日と違う起算日の場合は、話し合いどちらかの方式で契約書を作成します。大抵は不動産業者の力関係できまることが多いです。

また清算金は日割りになり1円単位になりますが、端数処理は不動産業者により異なります。あまり気にする必要はありません。

実際は売主が1ヶ月分負担するケースが多い

ここまで管理費や修繕積立金について解説してきましたが、実際は売主が管理費・修繕積立金を1ヶ月分負担するケースが多いです。1ヶ月に支払う金額が少額であるため、日割り計算が面倒と考える場合や、売買契約を結んでくれたことに対して売主から買主に御礼の意味として全額負担する場合もあります。

ただし固定資産税の場合、高額になりがちなので、引き渡し日を起点に日割り分担することが多いです。

また管理費・修繕積立金・固定資産税の支払義務について法的な定めはありません。とはいえ、売買契約書には規定されており、これを拒否することは債務不履行に当たります。そのため、清算金を支払う必要がでてくるのです。

清算金を受け取るのは、マンション売却の決済日!

売主が買主から清算金が受け取れるのは、マンション売却の決済日です。決済日には、マンション売買に関わる、下記のすべてのお金のやり取りが行われます。

  1. 金融機関から、買主へ住宅ローンで借りた金額を振り込み
  2. 買主から売主へマンションの売却金額の振り込み
  3. 買主から売主へ清算金の振り込み
  4. 不動産業者・司法書士への報酬(仲介手数料は、決済日に半分・引き渡し日に半分払うのが通例です)

管理費や修繕積立金を売主が滞納したまま、マンション売却をした場合は?

もし、管理費や修繕積立金を滞納したまま、マンションの売却をしてしまうとどうなるのでしょうか?

法律上は、債務も買主が引き継ぐことになり、マンションの買主が滞納分の管理費と積立修繕費を支払う必要があります。しかし、買主はその金額を売主に請求することができるため、売主はこの債務から逃れることはできません。

マンション売却における清算金のまとめ

今回は、マンション売却時の管理費・修繕積立金・固定資産税の清算金としての払い方について詳しく解説しました。

マンションの売却が決まっているのに、管理費や修繕積立金の支払いがあることに疑問を感じる方も多いと思います。しかし引き渡しが終わるまでは支払う必要があるため、できるだけ早く売却手続きを終えることで費用を抑えられるでしょう。

マンション売買は数千万円の取引であるため、どうしても損をしたくないという心理が働いてしまいますが、清算金自体は全体に対する金額としてはわずかな額です。ですから、清算金のやり取りは売主も買主も、円滑に契約を締結し手続きを進めていくことが大切です。

極力損をしないようにと考えるなら、何よりも不動産業者選びで失敗しないことが大切です。一括査定サービスを利用し、複数の不動産業者の査定額を知るのと共に、やり取りをしながら安心して任せられる不動産業者を見極めましょう。