住宅売却の際によく聞く言葉に「ホームインスペクション」があります。ホームインスペクションを日本語で言えば「住宅診断」と訳されます。住宅がどのような状態にあるのかを第三者が見極めてくれるホームインスペクションは、どのような観点から何がわかるのでしょうか。ここでは、ホームインスペクションについて、いまさら聞けない基本情報を説明します。
この記事の目次
ホームインスペクションとは
ホームインスペクションは、特定非営利活動法人日本ホームインスペクターズ協会が認定したホームインスペクターが、第三者の立場から住宅を診断することを指しています。
ホームインスペクター
◇住宅の劣化状況
◇欠陥箇所の洗い出し
◇早急に対策をしなければならない修復の箇所
◇今後修復をしたほうがいい箇所
◇修復が必要となる箇所
◇修復をした場合の概算費用
などを報告しアドバイスを行います。もちろん自分自身でこれらを確認することはできますが、専門的な知識があれば、より深い診断を行うことができますし、ぞれぞれのポイントから複数にまたがる原因を導き出すこともできます。
建物の状態は、外観から目視しただけでわかるものもあれば、詳しく機材を使って測定しなければわからない場合もあります。ホームインスペクターは、あらゆる方法を活用して住宅のコンディションを調査します。
住宅を購入前にホームインスペクションを行うことで、候補に入っている建物のコンディションを把握するだけでなく、安心して取引を行うことができます。また、住宅を売る場合には、ホームインスペクションの結果を踏まえた適正価格を提示できます。
さらには、現在住んでいる住宅の補修の計画を立てるうえで、ホームインスペクションの結果を参考にする場合もあります。不動産の売却を考えるときに、ホームインスペクションの結果を参考にして有利な条件を提示することもできます。
さまざまな場面で利用できるホームインスペクションは、住宅の所有者、購入予定者、不動産仲介業者など、住宅物件の状況を正しく理解したい多くの人が利用しています。特に新築の建物よりも中古の建物をリフォームすることの多い米国では住宅売買の際に、約70%から90%の人がホームインスペクションを利用しています。
日本では、徐々に利用者が増えてきています。住宅売買の場で、ホームインスペクションという言葉が出てくる回数も増えてきました。
ホームインスペクションは目的をもって利用
ホームインスペクションの対象は住宅全体に及んでいます。そのため、ホームインスペクションの内容は幅が広く、すべての項目について細かにチェックを行うと多大な費用と時間がかかります。
そのため、多くの場合は、ホームインスペクションを何故行い、何が知りたいかを最初に明確にし、診断をする項目を決めていきます。たとえば、阪神・淡路大震災や東日本大震災の後には、多くの住宅やマンションで耐震診断が行われました。このように、その時々で目的を絞って行うことになります。
そのなかで、最も多いのが中古住宅を売買する前に目視で行う住宅のコンディション把握です。ホームインスペクションのなかでも一次診断と呼ばれる診断は短時間で行われる軽微の住宅診断です。目視でわかる範囲で住宅の状況を確認することができます。
◇基礎となる箇所に不具合の兆候が見られないか
これらは専門家が外観から見て判断することができます。また、室内から雨漏りの形跡などは目視確認できますので、簡単なチェックとはいえ多くの診断情報を得ることができます。
一次診断でより詳細を確認したほうがよいと判断された場合は、二次診断を行います。二次診断では、専門器具を使った診断を行うこともありますし、より専門知識を持つ診断者に依頼することもあります。
ホームインスペクションは、住宅の状態を明確な数字やチェックリストで見ることができる家の成績表です。すべてを細かく見るのではなく、大まかな状態と、気になるポイントを中心に見ていくと、目的にあった判断をすることができます。
売却を考えるときにはホームインスペクションの結果を基に、よりよい条件で売却するために自分自身で修復しておいたほうが良いものと、価格を下げるなどを行ったほうが利益を得られるものとを分類して考えていきます。
たとえば、外観の修復はある程度事前に行ってから売却価格を決めたほうが、より高額な売却価格を設定することができます。
ホームインスペクションは誰がいつ利用する?
ホームインスペクションは目的を持って利用しようといっても実際には、誰がいつ利用するのでしょうか。ほとんどの場合、住宅の売買が目的です。住宅を今から買おうとする人は、住宅に問題がないかを専門家がチェックすることで安心して住宅を購入することができます。
住宅購入はとても大きな買い物です。あとから欠陥住宅であることがわかると大きな損失をこうむります。このようなリスクを避けるためにも、事前のホームインスペクションを行うことがポイントになります。売却するにしても、後々のトラブルを防止するうえでホームインスペクションを利用することも多いです。
住宅は新築でもない限り、どこかに欠陥があります。安心して住むためには、これらの欠陥を把握したうえで、いつ、いくらくらいのメンテナンスが必要になるかを計画することになります。また、売買の際の価格交渉でも住宅の修繕箇所や改善点は根拠を示すことで適正な判断をすることができます。
ホームインスペクションは、第三者が中立な立場で公正に診断を行うものですから、売買の際に片方だけに有利になる情報ではないという点で、両者にメリットがあります。
ホームインスペクションでわかること
実際にホームインスペクションを行うとどのようなことがわかるのでしょう。診断箇所は大きく5つになります。
外回り
基礎の部分
◇モルタル仕上げの場合は、モルタルの浮きや剥がれの有無を見る
外装材の表面チェック
◇外装材のチョーキングも確認
◇チョーキングとは塗装表面が紫外線や風雨によって劣化しチョークのような粉状になった状態のこと
屋根部分
◇屋根仕上げ材が金属の場合は、腐食がないかの確認も重要な項目になる
軒裏
雨樋
◇樋部分は変形、破損、外れ、変退色の有無を確認
◇金属部分は変形、破損、サビを見る
◇配管配線や留め付け具、外部手すりなども同様にさびや破損を中心に確認
バルコニー・外部階段
室内
壁面
◇タイル部分も同様
◇タイルの関しては、浮きや剥がれ、ひび割れの確認
床
◇カーペットや畳の場合は腐食やカビにも注意
◇歩いたときの軋みや床鳴り、沈みなどのチェックも行う
天井
室内
床下
■基礎部分
■束とそれぞれの箇所
◇ひび割れ欠損などを見ていく
◇特に土台の部材に腐朽がないか、虫食い跡がないか、湿り気がないかの確認は重要
◇基礎部分では、木くずの堆積がないか、蟻道と思われる付着物がないかの確認を行う
天井裏
◇腐朽
◇水染み跡
◇虫食い跡
を確認
接合部分に関しては、接合に使われている金物のさびやゆるみの確認
設備
給水設備
給湯設備
排水設備
◇排水不良やつまり、漏水確認も行う
換気設備
このように、正しく稼働しているかをそれぞれの設備の観点から見ていきます。
ホームインスペクションの流れと相場
ホームインスペクションを行いたいと思ったらまずは
- ホームインスペクションを行っている会社に連絡して、どのような診断をしたいかを相談します。
- 見積もりを作成してもらい、診断内容と料金を確認します。
- 業者が決まれば、診断日時を調整します。
- 必要に応じて、平面図、立面図といった診断に必要な書類を事前に提出します。
- 当日は、ホームインスペクターが現地で診断を行います。
- 結果は、当日その場で聞くことができます。
- 後日、きちんとした報告書が送られてきます。
ホームインスペクションにかかる時間は、住宅の大きさや調査をする内容によって異なりますが、大体30坪ほどの住宅であれば半日ほどで完了します。
相場は依頼をする会社によって若干の違いがあり、目視による一次診断で一般的に5万円から6万円程度です。二次診断で機材を使用する場合は、10万円以上になることもありますので事前にしっかりと確認しておくことが重要です。
ホームインスペクションを積極的に利用しよう
ホームインスペクションは、安心して住宅に住むために行われる健康診断のようなものと言えます。
売買のときには、適正な価格でリスクなく売買ができる成績表にもなります。今まで大切に使ってきた住宅を売却する際には、家の価値を理解して購入する人に使ってもらいたいと考えます。しかし、中古物件は見た目だけで価格交渉をすることにもなりかねません。
今まで、どれくらいメンテナンスを行い、家の状態がどのようなレベルにあるかを示すためにホームインスペクションを行うことをおすすめします。ホームインスペクションを利用して第三者の公正な判断を得ることは購入した方にも、売却した方にも大きなメリットを得ることができます。
そして、「信頼できる不動産会社」選びも大切です。何故なら、このホームインスペクション会社を不動産会社がすすめてくる場合もあるからです。そして不動産会社とインスペクション会社が深い関係にある時、不動産会社に有利な診断結果をすることもあり得るのです。売手・買手のことを一番に考えてくれる不動産会社を探すことは重要なことです。
ですが、数ある不動産会社を自身で周り探し出すことはとても大変です。そこで、国内主要大手や地元密着の有力不動産会社など1000社から不動産会社を選べるイエイがおすすめです。
不動産の価格査定比較ができるのはもちろんですが、自身にあう不動産会社が見つけやすいのも魅力です。また、不動産売却へのサポート体制もしっかりしているので、一度利用してみてはいかがでしょうか。
ホームインスペクションを積極的に利用し、自身に合う不動産会社をしっかり選び、リスクの少ない賢い売却を目指しましょう。