この記事の概要
  • 解体費用は坪単価だけでなく、状況によっても大きく変動する
  • 見積もりに含まれない付帯工事、アスベスト除去、地中埋設物は高額になりがち
  • 費用を抑えるには、複数社から相見積もりを取る、自治体の補助金を確認する、残置物を自分で処分するなどの工夫が大切

50坪の家の解体を考え始めたけれど、まず気になるのが「一体いくらかかるのか?」という費用の問題ではないでしょうか。
インターネットで調べると「坪単価〇万円」といった情報はすぐに見つかりますが、「その数字だけで総額を計算していいのだろうか?」「見積もりを取った後で、想定外の追加費用が発生したらどうしよう…」といった不安は尽きません。


解体費用は、建物の構造や立地だけでなく、庭の木一本、古いブロック塀一つで大きく変動する非常に複雑なものです。
正しい知識がないまま計画を進めてしまうと、気づかぬうちに数十万円、場合によっては100万円以上も損をしてしまう可能性があります。


この記事では、そうした不安や疑問を解消するために、50坪の家の解体にかかる費用の相場から、プロの見積書に記載される詳細な内訳、そして賢く費用を抑えるための具体的な節約術まで、専門的な知識を初心者にも分かりやすく徹底解説します。

【構造・地域別】50坪の家の解体費用の相場

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50坪の家の解体費用を考えるうえで、まず押さえるべき最も大きな要因は「建物の構造」と「立地(地域)」の2つです。
頑丈な建物ほど解体に手間と時間がかかり、人件費や廃棄物処理費が高い都市部ほど費用は高くなる傾向にあります。

建物の構造は、主に「木造」「鉄骨造」「鉄筋コンクリート(RC)造」の3つに分類されます。
それぞれの特徴と費用相場を見ていきましょう。

構造 相場費用 特徴
木造 150万円~200万円 日本の戸建てで最も一般的な構造です。他の構造に比べて解体が比較的容易で、発生する廃材も軽いため、費用は最も安価になる傾向があります。
鉄骨造(軽量鉄骨造) 150万円~250万円 プレハブ住宅やアパートなどでよく見られる構造です。木造よりは頑丈ですが、解体は比較的スムーズに進みます。
鉄骨造(重量鉄骨造) 200万円~300万円 3階建て以上の住宅や店舗などで採用される頑丈な構造です。太い鉄骨を解体するために大型の重機やガス切断などの工程が必要となり、費用は高くなります。
鉄筋コンクリート造(RC造) 250万円~350万円以上 マンションやビルに用いられる最も強固な構造です。コンクリートを破砕機(ブレーカー)で砕きながら解体するため、非常に手間と時間がかかります。また、騒音や振動が大きくなるため、防音対策なども含めて費用は最も高額になります。

また、解体費用は人件費や産業廃棄物の処理費用が地域によって異なるため、エリアごとにも差が生じます。
一般的に、東京や大阪などの大都市圏は地方に比べて高くなる傾向があります。

以下の表は、地域別の費用相場をまとめたものです。
ご自身の状況に近いものをご参照ください。

構造 関東エリア相場(目安) 関西エリア相場(目安)
木造 190万~250万円 180万~230万円
鉄骨造(軽量鉄骨造) 200万~250万円 185万~240万円
鉄骨造(重量鉄骨造) 240万~300万円 225万~280万円
鉄筋コンクリート造(RC造) 270万~400万円 260万~380万円

50坪の家の解体費用の見積もり内訳

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プロの解体業者が作成する見積書は、主に8つの項目で構成されています。
これらの内容を理解することで、どこにどれだけの費用がかかっているのかを把握でき、業者との交渉や比較検討がしやすくなります。
解体費用の見積もり内訳は以下の通りです。

本体工事費

建物そのものを取り壊すための費用で、解体費用総額の約3〜4割を占める中心的な項目です。
一般的に「坪単価」で算出されることが多い部分ですが、その内訳は主に以下の要素で構成されています。

【人件費】
現場で作業を行う作業員や、重機を操作するオペレーターの人件費です。
解体工事は人手が必要なため、この人件費が本体工事費の大部分を占めます。

【重機関連費】
油圧ショベルなどの重機を使用するための費用です。
自社で保有している業者もいますが、多くはリースで調達するため、そのレンタル料や燃料代、現場まで運ぶための回送費などが含まれます。

先述したように、この費用は建物の構造や立地条件によって大きく変動します。
例えば、木造は比較的解体が容易なため安価ですが、頑丈な鉄筋コンクリート(RC)造は特殊な重機が必要となり、手間と時間がかかるため高額になります。
また、重機が入れないような狭い場所では、手作業での解体(手壊し)が必要となり、人件費がかさむため費用が2〜3倍になることもあります。

仮設工事費

工事を安全かつ効率的に進めるための準備費用です。
具体的には、作業員の足場設置騒音や粉塵が近隣に飛散するのを防ぐための養生シートの設置仮設トイレの設置などが含まれます。
50坪の家は規模が大きいため、足場やシートの面積も広くなり、この費用も相応にかかります。
一般的に1㎡あたり800円〜1,000円が目安です。

廃材処分費

解体工事で発生した木くず、コンクリートガラ、鉄くず、ガラスなどを、法律に基づいて適正に処分場へ運搬・処理するための費用です。
近年、廃棄物処理費用は全国的に上昇傾向にあり、総額に占める割合も大きくなっています。

整地費用

建物を解体した後の土地を平らにならす作業費用です。
重機で地面を均し、見栄えを良くします。
土地の売却や駐車場として利用する場合は「砕石舗装」、新たに家を建てる場合は「真砂土舗装」など、その後の土地の用途によって仕上げ方が異なり、費用も変わります。
費用相場は1㎡あたり300円〜600円程度です。

付帯工事費

建物本体以外で、敷地内にある構造物を撤去するための費用です。
これは「坪単価」には全く含まれないため、追加費用の大きな要因となります。
主な付帯工事とその費用目安は以下の通りです。

付帯工事 費用目安
ブロック塀の撤去 1mあたり2,500円~5,000円
カーポートの撤去 1台用で2万円~
庭木・植栽の伐採・伐根 1本あたり、または量に応じて数万円~
庭石の撤去 1㎥あたり12,000円~
物置の撤去 1台あたり2万円~
井戸の埋め戻し・お祓い 5万円~10万円程度

諸経費

工事そのものではなく、工事を管理・運営するために必要な経費です。
具体的には、役所への各種申請手続き(道路使用許可など)の代行費用近隣挨拶で配布する粗品代現場管理費保険料、そして業者の利益などが含まれます。
一般的に、工事費総額の10%前後が目安とされています。

アスベスト調査・除去費用

2006年以前に建てられた建物には、発がん性物質であるアスベスト(石綿)が使用されている可能性があります。
法律の改正により、現在ではほとんどの解体工事で事前の調査が義務付けられています。
もしアスベストが見つかった場合、専門の作業員による除去作業が必要となり、これが高額な追加費用となります。
アスベストは危険度に応じてレベル1〜3に分類され、除去費用が大きく異なります。

レベル 除去費用
レベル1(吹付け材など) 1㎡あたり2万〜3万円
レベル2(保温材など) 1㎡あたり1万〜2万円
レベル3(スレート・成形板) 1㎡あたり5,000円〜15,000円

地中埋設物撤去費用

工事を開始してから判明する、最も予測が難しい費用です。
地面を掘り起こした際に、以前の建物の基礎コンクリート片浄化槽井戸など、図面にはない障害物(地中埋設物)が見つかることがあります。
これらを撤去・処分するための費用は、見積もりには含まれておらず、別途請求されるのが一般的です。

50坪の家の解体費用が高くなる理由

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50坪という広さは、一般的な戸建て(約30坪)に比べて床面積が1.6倍以上あるため、単純に解体する面積や廃材の量が多くなり、基本費用が高くなります。
それに加えて、以下のような要因が重なると、解体費用はさらに高額になる可能性があります。

建物の階数

同じ「延床面積50坪」でも、その階数によって費用は大きく変動します。

【2階建て・3階建ての場合】
2階建てや3階建ての場合は高所での作業が発生するため、安全確保と騒音・粉塵の飛散防止のために、建物の周囲全体に「足場」を組み、防音・防塵シートで「養生」する必要があります。
そのため、足場の「設置・解体費用」や「レンタル料」が発生します。
50坪の家となると、その外周も長くなるため、使用する足場やシートの面積も広くなり、仮設費用が高額になります。

【平屋の場合】
意外に思われるかもしれませんが、延床面積50坪の「平屋」は、延床面積50坪の2階建てよりも高くなるケースがあります。
平屋は、建物の面積(50坪)がそのまま「基礎(コンクリート)の面積」と「屋根の面積」になります。
そのため、2階建ての基礎(25坪)に比べ、2倍の面積のコンクリートを破壊し、搬出する必要があり、作業と処分費が増加します。
同様に、屋根材(瓦など)の撤去・処分量も2倍になります。

駐車スペースの有無

解体工事には、重機や廃材を運ぶための大型トラック、作業員の車など、多くの車両が出入りします。
50坪の家でも、敷地内に工事車両(特にトラックや重機)を停めるスペースがない場合、業者は近隣の駐車場を利用せざるを得ません。
そのため、近隣の「コインパーキング代」や「月極駐車場の賃料」が、工事期間中の実費として「諸経費」に上乗せされます。都心部や住宅密集地では、この駐車料金だけでも高額になることがあります。

地鎮祭やお祓い

工事の安全を祈願するためにお祓いや地鎮祭を行う場合、その儀式にかかる費用(神主への謝礼など)は、解体工事費とは別に発生します。
この儀式は完全に任意で、法的な義務は一切ありません。
しかし、「何となくバチが当たりそう」といった不安を解消したり、施主が安全祈願を行うことで、工事関係者も安心し、作業への意識が高まる側面もあります。
また、「井戸を埋める」「古くからある大きな木を切る」「長年住んだ思い入れの強い実家を解体する」といった場合には、感謝と浄化の意味を込めてお祓いを行うケースが非常に多いです。
相場は、2万円〜5万円程度になります。

解体費用を安く抑える7つの方法

解体費用を安く抑える7つの方法のイメージ画像

高額になりがちな解体費用ですが、いくつかのポイントを押さえることで、賢く費用を抑えることが可能です。
ここでは、誰でも実践できる7つの方法をご紹介します。

複数業者から相見積もりを取る

1社だけの見積もりでは、その金額が適正価格なのか判断できません。
必ず3社以上の解体専門業者から見積もりを取りましょう。
業者間で価格競争が働くため、数十万円単位で費用が変わることも珍しくありません。
また、各社の見積もり内容を比較することで、工事内容や費用の内訳が明確になり、信頼できる業者を見極めることにも繋がります。

家の中の残置物を自分で処分する

家の中に残された家具や家電、衣類などの不用品(残置物)の処分を業者に依頼すると、「産業廃棄物」として扱われるため、高額な処分費用がかかります。
自治体の粗大ごみ収集などを利用して、自分でできる限り処分しておくことで、数万円から十数万円の節約が可能です。

自治体の補助金・助成金を活用する

お住まいの自治体によっては、老朽化した危険な空き家の解体に対して補助金助成金制度を設けている場合があります。

【東京都世田谷区の例】
がけ地の近くにある危険住宅の移転・除却に対し、最大97.5万円の補助金があります。
詳しくは、世田谷区ホームページ「土砂災害特別警戒区域内への支援制度(その2)」をご確認ください。

【大阪府大阪市の例】
密集市街地の防災性を高める目的で、対象地区の老朽住宅の解体に対し、最大200万円(集合住宅の場合)の補助制度があります。
詳しくは、大阪市ホームページ「大阪市密集住宅市街地重点整備事業(防災空地活用型除却費補助)補助金交付要綱」をご確認ください。

制度の有無や条件は自治体によって大きく異なるため、まずは「〇〇市(区町村名) 解体 補助金」と検索して、ご自身の地域の制度を確認してみましょう。
また、住宅リフォーム推進協議会が提供する「地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト」でもご自身の地域の補助金制度を調べることができます。

工事の時期を調整する

解体業界にも繁忙期と閑散期があります。
年度末(2月〜3月)年末は公共工事や企業の決算期が重なり、業者が忙しくなるため価格交渉が難しくなります。
一方で、閑散期にあたる4〜9月頃は比較的工事が少なく、価格交渉に応じてもらいやすい可能性があります。
スケジュールに余裕があれば、閑散期を狙って依頼するのも一つの手です。

建物滅失登記を自分で行う

解体後に行う法的な手続き「建物滅失登記」を専門家(土地家屋調査士)に依頼すると、4万円〜5万円程度の報酬費用がかかります。
この手続きは、法務局で手順を確認すれば自分で行うことも可能です。
必要書類の準備に手間はかかりますが、数万円の費用を確実に節約できます。
建物滅失登記を自分で行う方法については、以下の記事で詳しくご紹介しているので、ぜひ参考にしてくださいね。

有価物(鉄くず等)の買取を業者に確認する

骨造やRC造の建物の場合、解体時に発生する鉄骨や鉄筋などの金属くずは「有価物」として売却できます。
優良な業者であれば、これらの売却益を解体費用から差し引いてくれます。
見積もりの際に、「有価物の買取は可能ですか?」と一言確認してみましょう。

仲介業者を介さず直接依頼する

ハウスメーカーや工務店、不動産会社に解体を依頼すると、紹介料や管理費といった費用が上乗せされることがあります。
費用を抑えるためには、解体を専門に行っている業者に直接依頼するのが最も確実です。

解体工事の流れと期間

解体工事の流れと期間のイメージ画像

解体工事は、業者を決めてから更地になるまで全体で約1ヶ月半から2ヶ月ほどかかります。
ここでは、依頼から引き渡しまでの流れを各工程の目安期間とともに解説します。

【期間2~4週間】業者選定・現地調査・契約

まずは複数の解体業者に連絡を取り、現地調査を依頼します。
現地調査では、建物の構造や周辺環境、付帯物の有無などをプロの目で確認してもらい、正確な見積もりを作成してもらいます。
提示された見積書の内容を比較検討し、最も信頼できる1社と工事請負契約を結びます。
解体業者を選ぶ際のポイントについては、以下の記事で詳しく解説しているのでぜひ参考にしてくださいね。

【期間1~2週間】事前手続き

契約後は、工事開始前にいくつかの法的な手続きや準備が必要です。

【建設リサイクル法の届出】
延床面積が80㎡(約24坪)を超える建物を解体する場合、施主は工事開始の7日前までに自治体への届出が義務付けられています。
通常は業者が代行してくれますが、施主名義での届出となります。

【ライフラインの停止】
電気、ガス、電話、インターネット回線などの供給を停止する手続きを各契約会社に行います。
水道は工事中の粉塵飛散防止のための散水で使用するため、止めずに業者に名義変更することが多いです。

【工事開始1週間前】近隣挨拶

解体工事中の騒音や振動、トラックの出入りによるトラブルを防ぐため、近隣への事前挨拶は非常に大切な作業になります。
工事開始の1週間〜10日前に、最低でも両隣、向かいの家、裏の家には挨拶に伺いましょう。
基本的には業者が行いますが、施主も一緒に回ることで、より丁寧な印象を与え理解を得やすくなります。
工事期間、作業時間、連絡先を記載した挨拶状とタオルなどの粗品を持参するのが一般的です。

【期間1~2日】仮設工事

工事着手前に必要となる各種申請や、近隣住民への挨拶といった一連の準備が完了次第、初めに「仮設工事」を行います。
この工程では、まず作業員の安全確保と効率化のために足場を設置します。
その後、騒音や粉塵が周囲に飛散するのを防ぐため、建物全体を防音・防塵性能のある養生シートで覆います。

【期間1~3週間】本体解体

建物の解体作業に入ります。
建設リサイクル法に基づき、内装材(石膏ボードなど)、屋根材、窓ガラス、建物本体といった順に、素材ごとに分別しながら解体を進めます。
アスベストがある場合は、この段階で専門業者が除去作業を行います。

【期間2~5日】基礎撤去・整地

建屋の解体が終わると、地中に埋設されている基礎コンクリートを撤去する作業に入ります。 
ショベルカーなどの重機を使い、土の中に残った基礎を掘り出して搬出します。
基礎がなくなった土地は、重機で平らに固めながら「整地」を行い、きれいな更地の状態にします。

【期間1日】最終確認・引き渡し

工事が完了したら、施主立ち会いのもと最終確認を行います。
敷地内に廃材などが残っていないか、整地はきれいに行われているかなどをチェックし、問題がなければ引き渡しとなります。

最終的な解体費用は状況によって変動する

最終的な解体費用は状況によって変動するのイメージ画像

50坪の家の解体費用は、坪単価だけでは決まらず、構造や地域で大きく変動します。
相場は木造で150万円〜、最も高額なRC造では250万円〜350万円以上が目安になります。

注意すべきは、見積もりに含まれない追加費用です。
特に「付帯工事(ブロック塀や庭木)」「アスベスト除去」「地中埋設物」は高額になりがちです。

費用を抑えるには、必ず3社以上の相見積もりを取って比較し、信頼のおける解体業者に依頼をするようにしましょう。
また、自治体の補助金を確認したり、家財(残置物)を自分で処分するなどの工夫も大切です。

家の解体は、正しい知識がないまま計画を進めてしまうと、気づかぬうちに数十万円、場合によっては100万円以上も損をしてしまう恐れがあります。
そのような事態を回避するためにも、ぜひこの記事で得た知識を役立ててくださいね。