新築住宅を購入する際には大きなお金が動くため、費用に関する不安がある方もいることでしょう。

住宅取得時の消費者の負担を軽減するため、国や地方自治体ではさまざまな制度があります。

本記事では、2023年に受けられる新築取得時の住宅助成金や補助金制度、減税制度を解説します。

なかには、100万円以上もの住宅助成金が受け取れる制度もあるため、活用できる制度についてしっかりと把握して返済計画をイメージするとよいでしょう。

新築取得時の住宅助成金・補助金制度や減税制度の一覧

住宅助成金などに関する制度のイメージ


新築取得時に国からもらえる住宅補助金や助成金制度、減税制度の一覧は次の通りです。

制度の種類 補助・減税金額

住宅助成金

補助金制度

こどもエコすまい支援事業 100万円/1戸
ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス実証事業


112万円/戸+α

地域型住宅グリーン化事業 最大140万円/戸
LCCM住宅整備推進事業


最大140万円/戸

減税制度 住宅ローン控除


35万円/戸

不動産取得税の減税 (不動産評価額-控除額)×3%
固定資産税の減税


固定資産税額の1/2

住宅取得資金の贈与税が非課税
最大1,000万円
(非課税限度額の上限)
 
登録免許税の軽減


最大0.1%

それぞれの制度について、ここから詳しく解説します。

【2023年】国からもらえる新築購入時の住宅助成金や補助金制度4選

国からもらえる住宅助成金のイメージ


2023年時点で国からもらえる住宅助成金・補助金制度は次の通りです。

  • こどもエコすまい支援事業
  • ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス実証事業
  • 地域型住宅グリーン化事業
  • LCCM住宅整備推進事業

それぞれの制度を利用するための要件や補助金額について解説します。

①こどもエコすまい支援事業

こどもエコすまい支援事業は、ZEH水準の高い省エネ性能の住宅を新築する子育て世代や、若者夫婦が対象の住宅助成金です。

ZEHとは、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略語です。

高断熱で気候に左右されにくく高性能な住宅設備を導入し、石炭や天然ガスなどの一次エネルギーの年間消費量がおおむねゼロになる住宅を指します。

制度の概要

こどもエコすまい支援事業の要件や補助金額は、次の通りです。

対象者
  • 2004年4月2日以降に生まれた子どもがいる世帯、または、夫婦のどちらかが1982年4月2日以降に生まれている
  • こどもエコすまい支援事業者で新築住宅を建てる
対象住宅
  • 家を建てた方の住居である
  • 床面積が50㎡以上である
  • 土砂災害特別警戒区域に建てた住居ではない
  • 都市再生特別措置法第88条第5項において同条第3項の規定による勧告に従わなかった場合、その旨が公表されていないもの
  • 完成していない、または、完成から1年以内の未入居の住宅である
  • ZEHレベルの高い省エネ住宅であると証明できる
  • 交付申請時に基礎工事または、出来高工事の完了が確認できる
補助金額


100万円/1戸

引用元:こどもエコすまい支援事業「注文住宅の新築 対象要件の詳細」

これから新築する住宅が対象になるか判断が難しい場合は、住宅会社に相談するとよいでしょう。

申請方法・申請期限

こどもエコすまい支援事業の申請手続きは、家を建てる住宅会社がおこないます。

2023年3月31日から、交付申請の受付を開始しています。

予算に達したため、2023年度は9月28日に申請受付を終了しています。

②ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス実証事業

ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス実証事業は、高性能な住宅に対する補助金です。

次の3事業があり、それぞれに住宅性能が異なります。

事業名 住宅性能
ZEH支援事業 創エネでエネルギー収支ゼロ
次世代ZEH+(注文・建売・TPO)実証事業 創エネでエネルギー収支ゼロ

再生可能エネルギー
次世代HEMS実証事業 創エネでエネルギー収支ゼロ

再生可能エネルギー

太陽光発電システムなどの最適制御(HEMS)

制度の概要

「ZEH支援事業」「次世代ZEH+(注文・建売・TPO)実証事業」「次世代HEMS実証事業」のそれぞれの概要は次の通りです。

<ZEH支援事業>

  ZEH ZEH+

対象者

  • 新築住宅を建てる個人
対象住宅
  • ZEH
  • Nearly ZEH
  • ZEH Oriented
  • ZEH
  • Nearly ZEH
主な要件
  • ZEHの要件を満たすこと
  • ZEHビルダーで建てること
  • ZEHの要件を満たすこと
  • ZEHビルダーで建てること
  • 省エネ基準の25%以上の一次エネルギーを削減していること
  • 以下の2つ以上を導入すること
    ①外皮性能の強化
    ②高度エネルギーマネジメント
    ③電気自動車の充電設備または、V2H充電設備
補助金額


55万円/戸


100万円/戸

引用:2023年の経済産業省と環境省のZEH補助金について「ZEH支援事業」

<次世代ZEH+(注文・建売・TPO)実証事業>

対象者
  • 新築住宅を建てる個人
対象住宅
  • ZEH+
  • Nearly ZEH+
主な要件
  • ZEH+の要件を満たすこと
  • 以下のひとつ以上を導入すること
    ①蓄電システム
    ②V2H充電設備
    ③燃料電池
    ④太陽熱利用温水システム
    ⑤太陽光発電システム10kW以上
補助金額


100万円/戸

引用:2023年の経済産業省と環境省のZEH補助金について「次世代ZEH+(注文・建売・TPO)実証事業」

<次世代HEMS実証事業>

対象者
  • 新築住宅を建てる個人
対象住宅
  • ZEH+
  • Nearly ZEH+
主な要件
  • ZEH+の要件を満たすこと
  • 高度エネルギーマネジメントを導入し、蓄電システムまたは、V2H充電設備を導入すること
  • 燃料電池、太陽熱利用温水システムの導入も可
  • AI・IoT技術などによる設備の最適制御を実施すること
     
補助金額


112万円/戸

引用:2023年の経済産業省と環境省のZEH補助金について「次世代HEMS実証事業」

これらの一定の助成金に加え、補助金が加算される仕組みがあります。

定置型の蓄電システム2万円/KWhや、燃料電池2万円/台など、導入する住宅設備によって異なります。

申請方法・申請期限

申請はZEH認定ビルダーがおこないます。

ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス実証事業の申請は4月下旬からはじまり、予算に達し次第受付を終了します。

③地域型住宅グリーン化事業

地域型住宅グリーン化事業は、国土交通省の選定したグループが建てた省エネルギー・高耐久の木造住宅を対象に助成金がもらえます。

18歳未満の子どもがいる世帯や夫婦のどちらかが39歳未満の世帯では、通常よりも補助金が多くもらえる「こどもエコ活用タイプ」が選択できます。

制度の概要

地域型住宅グリーン化事業の概要は次の通りです。

  こどもエコ活用タイプ 通常タイプ
対象住宅
  • 認定長期優良住宅
  • ZEH、Nearly ZEH、ZEH Oriented
  • 認定低炭素住宅
     
補助金額


105~140万円

70~110万円

引用:地域型住宅グリーン化事業評価事務局「地域型住宅グリーン化事業グループ募集要項」

こどもエコ活用タイプは、こどもエコすまい支援事業の要件を満たした場合において、定額100万円から補助金が加算される仕組みです。

補助金額は住宅の性能や活用実績の有無によって異なります。

地域材を使用して家を建てる地域材加算や、伝統的な地域の技術を使って家を建てる地域住文化加算も含まれます。

申請方法・申請期限

地域型住宅グリーン化事業にグループ登録をした事業者が申請をおこないます。

申請期限については、事業者に問い合わせが必要です。

完了実績報告までに引き渡しを完了する必要があるため、引き渡しまでのスケジュール管理が重要です。

④LCCM住宅整備推進事業

LCCM住宅整備推進事業では、住宅新築時だけではなく運用時、廃棄時のCO2排出量をマイナスにする住宅を対象とした補助金事業です。

温室効果ガスの排出量と吸収量が実質ゼロを目指す、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けた、脱炭素化住宅の普及を目的としています。

制度の概要

LCCM住宅整備推進事業の概要は次の通りです。

対象住宅
  • 新築戸建て
  • 強化外皮基準を満たし、UA値1,2地域(0.4W/㎡K以下)、3地域(0.5W/㎡K以下)、4~7地域(0.6W/㎡K以下)であること
  • 再生可能エネルギーなどをのぞいた基準一次エネルギー消費量から、25%以上の一次エネルギーを消費すること
  • 再生可能エネルギーの導入
  • 再生可能エネルギーなどを加え、基準一次エネルギー消費量の100%以上の一次エネルギーを消費すること
  • LCCO2の算定が0以下となること
  • CASBEEがB+ランクまたはそれ以上になること
  • 土砂災害特別警戒区域外に建てること
補助金額


設計費+補助対象工事のかかり増し費用の1/2
(上限:140万円/戸)

引用:国土交通省「LCCM住宅整備推進事業」

申請方法・申請期限

LCCM住宅整備推進事業の申請は、住宅を新築する事業者がおこないます。

申請は4月中旬から開始され、予算に達し次第受付を終了します。

申請後に交付決定通知が届いたあと、工事着工です。

住宅購入時の減税制度5選

住宅購入時の減税制度のイメージ

新築住宅購入時には、次の減税制度が活用可能です。

  • ①住宅ローン控除
  • ②不動産取得税の減税
  • ③固定資産税の減税
  • ④住宅取得資金の贈与税が非課税
  • ⑤登録免許税の軽減

なかでも、住宅ローン控除はかなりの節約が見込めるため、忘れずに活用しましょう。

①住宅ローン控除

住宅ローン控除は、住宅ローンを借入れて住宅を取得する方を対象に所得税が減税される制度です。

住宅ローン控除額の要件は次の通りです。

  • 床面積が50㎡以上あること
  • 世帯の合計所得が2,000万円以下であること
  • ローン返済期間が10年以上あること
  • 工事完了または引き渡しから6ヶ月以内に入居すること

入居後13年間において、年末のローン残高の0.7%が所得税から控除されます。

住宅ローン控除の最大控除額は次の通りです。

住宅タイプ 最大控除額
長期優良住宅・低炭素住宅 令和5年入居 令和6・7年入居

省エネ住宅(ZEH)


35万円


31万5,000万円

省エネ基準適合住宅


31万5,000万円


24万5,000万円



上記以外の住宅

 

28万円


21万円

21万円


0円

引用:国土交通省「住宅ローン減税の概要について」

住宅ローン控除を受けるためには、会社員の方も初年度のみ確定申告が必要です。

2月中旬から3月中旬までに、税務署に申告書を提出しましょう。

>> 住宅ローン控除とは?いくら戻るかの計算方法をわかり易く解説

②不動産取得税の減税

不動産取得税とは、土地や住宅の取得時にかかる税金です。

新築住宅の取得時には、床面積が50㎡以上240㎡以下であれば、不動産取得税の減税される特例措置が適用できます。

不動産取得税の控除額は次の通りです。

長期優良住宅 一般の住宅
1,300万円 1,200万円

引用:国土交通省「認定長期優良住宅に対する税の特例」

実際にかかる税額は、(不動産評価額-控除額)×3%で算出可能です。

申請は不動産の登記が完了したあと、管轄の都道府県税事務所でおこないます。

申請期間は申請先によって異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。

③固定資産税の減税

固定資産税とは、不動産を取得する方が毎年支払わなければいけない税金です。

新築住宅取得時は次の住宅において、固定資産税が一定期間減税されます。

  • 2024年3月末までに新築した住宅
  • 建物の1/2以上が住居
  • 居住部分の床面積が50㎡以上280㎡以下

減税される期間は、建物の構造により異なります。

  • 3階以上ある耐火・準耐火住宅:5年間
  • 長期優良住宅:5年間
  • 上記以外の住宅:3年間

固定資産税の減税額は、居住部分の床面積によって次のように算出方法が異なります。

居住部分の床面積 減額される金額
居住面積120㎡以下 固定資産税額の1/2
120㎡以上 固定資産税額の1/2(120㎡相当分)

引用:名古屋市「新築住宅に対する固定資産税の減額について」

住宅の所在する市町村によって申請受付期間が異なるため、公式HPなどで確認が必要です。

④住宅取得資金の贈与税が非課税

住宅取得資金の贈与税とは、親族から住宅を相続した際に課される税金です。

次のように一定の要件を満たした住宅においては、住宅取得金の贈与税が非課税になります。

  • 床面積が40㎡以上240メートル以下かつ、家屋の1/2以上が居住部分であること
  • 建築後に使用されていない住宅、昭和57年1月1日以降に建築された住宅、または、地震に対する基準に適合する住宅

住宅取得資金の贈与税の非課税限度額は、次の通りです。

住宅性能 非課税限度額
省エネ住宅 1,000万円まで
上記以外の住宅 500万円まで

引用:国税庁「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」

住宅取得資金の贈与税を非課税にするためには、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までに、所轄の税務署に申請する必要があります。

⑤登録免許税の軽減

新築住宅の取得時には登録免許税が課せられますが、軽減制度が設けられています。

対象となる新築住宅は次の通りです。

  • 50㎡以上の個人の住居
  • 1年以内に住宅を登記している

登録免許税の軽減額は、次の通りです。

登記の種類 本則→軽減措置
所有権の保存 0.4%→0.15%
所有権の移転 2.0%→0.3%
抵当権の設定 0.4%→0.1%

引用:国税庁「登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ」

登録免許税の軽減措置は、2024年3月31日までです。

住宅の取得後、1年以内に登記を設定すれば申請の必要はありません。

住宅助成金は地方自治体からも受け取れる?

地方自治体から受け取れる住宅助成金のイメージ

地方自治体でも、「子育て世帯」「省エネ・創エネ住宅」「地産資材での建築」など独自の住宅助成金や補助金制度を受けられる場合があります。

ここからは、地方自治体でおこなう住宅助成金の一例をご紹介します。

福岡市でもらえる住宅助成金・補助金

福岡市では県産木材を使用し、一定の基準を満たす木造住宅を新築すると補助金が受け取れます。

助成額は一律50万円です。

また、県産木材を10㎡以上使用し、なおかつ内装の木質化が実施された住宅には、追加で20万円助成されるなどの追加タイプもあります。

引用:福岡県「ふくおか県産材家づくり推進助成制度」

仙台市でもらえる住宅助成金・補助金

仙台市では、高断熱・高気密住宅を新築すると補助金が受け取れます。

断熱性能のUA値や気密性能C値などをもとに、区分が分けられています。

補助金額は、最大240万円です。

引用:仙台市「せんだい健幸省エネ住宅」

住宅の助成金を受ける際の注意ポイント

住宅助成金を受け取る際のポイントのイメージ

住宅助成金を受ける際には、次のポイントを確認する必要があります。

  • 申請期間
  • 予算の上限の有無
  • 助成金の受け取り時期
  • 各制度の併用の可否

同じ条件で新築住宅を建てたとしても申請期間を過ぎてしまうと、もらえるお金が大幅に減ってしまいます。

また、制度によっては予算には上限の決められている場合があるため、申請時期に間に合うかどうかを各制度の公式HPなどで確認し、スケジュールを計画する必要があります。

助成金や補助金の受け取れる時期や、各制度が併用できるかどうかも確認しておきましょう。

まとめ

今回のまとめ

新築住宅取得時は受け取るお金を増やし、支払うべき税金を減らすと家計の負担が軽くなります。

国では4つの住宅助成金・補助金制度を設けているほか、各地方自治体でも独自の制度を設けている場合があります。

活用できる助成金があるかを事前に調べておくとよいでしょう。

各制度は住宅構造や家族構成によって条件に当てはまるかどうか、どれくらいの額が助成・減税されるのかが異なります。

費用負担を減らすためにも制度についてしっかりと把握し、新築住宅の引き渡し後のマネープランをイメージするとよいでしょう。