不動産を相続したけれど、すでに持家があったり建物の老朽化などで売却を検討している方もいるかと思います。
しかし、「売却にはどのような手続きが必要なのか」や「税金はかかるのか」など不安な点も多いですよね。
相続不動産の売却が完了するまでには約1年ほどの期間が必要になるため、今後の計画をしっかりと立てることが大切になってきます。
こちらの記事では、相続不動産の売却における流れや注意点、税金についてや減税措置についても紹介していくのでぜひ参考にしてみてください。
相続不動産の売却の流れと手続き
不動産を相続したけれど、そもそもどのような流れや手続きを行えばいいか分からないですよね。手続きには期限もあるので、そちらも踏まえて相続不動産の売却の流れと手続きについて詳しく紹介していきます。
まず、相続不動産の売却の流れは以下のような手順です。
①遺言書の有無を確認
②相続する財産と相続人の確認
③遺産分割協議
④不動産の名義を変更
⑤相続税の申告と納付
⑥不動産を売却する
⑦確定申告
①遺言書の有無を確認
不動産を相続したら、まず3ヶ月以内に遺言書の有無を確認しなければなりません。
遺言書がある場合はその指示に従い遺産分割を行い、遺言書がない場合は法定相続人で遺産分割協議を行います。
遺言書には種類があるため、まずはどの分類に当てはまるか確認してみましょう。
自筆証書遺言 | そのまま相続登記の添付書類として使用することができないため、開封する前に家庭裁判所で検認の申立てをし、検認済証明書を付けてもらう必要がある |
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秘密証書遺言 | そのまま相続登記の添付書類として使用することができないため、開封する前に家庭裁判所で検認してもらう必要がある 法務局へ秘密証書遺言を保管する遺言書保管制度を利用している場合は検認不要 |
公正証書遺言 | 原本が公証役場に保管されているため検認不要 そのまま相続登記の添付書類として使用することが可能 |
②相続する財産と相続人の確認
こちらも3ヶ月以内に遺産と債務の確認をし、相続人の確認を行う必要があります。
先述の通り、遺言書がない場合は法定相続人で遺産分割協議を行います。
法定相続人とは、民法で定められた遺産の相続人の対象者を指します。
配偶者が常に優先となり、配偶者以外は以下の優先順位で法定相続人になります。
出典:国税庁
被相続人の所有する不動産が分からない場合は、市区町村で「名寄帳」の交付を申請することで確認ができます。
③遺産分割協議
相続する財産と相続人の確認後は、遺産分割協議を行います。
こちらの内容を決定する際は、法定相続人が全員合意していることが必須になります。
相続不動産の分割方法は以下の種類があります。
現物分割
被相続人が所有していた預貯金や車、不動産などの財産をそれぞれ個別で分割する方法です。
公平に資産を分割する点では難しいかも知れませんが、この方法であれば単独で不動産を相続することができます。
代償分割
不動産のようにそのままでは分割が難しい遺産を一部の人が相続し、その他の人には相続人が公平になるように代償を支払うという分割方法です。
換価分割
相続した不動産を売却し、得た代金を相続人で分割する方法です。
共有分割
遺産を共有名義にしたり、権利を等分するなど法定相続割合で共有する分割方法です。
以上の分割方法を比較すると、相続不動産の売却には「換価分割」か「現物分割」が適していると言えます。
分割方法が決まったら、法定相続人全員の署名と実印の押印をした「遺産分割協議書」に内容をまとめ、印鑑証明書と共に保管しておきましょう。
④不動産の名義を変更
不動産の相続人が決定したら、不動産の名義変更を行います。このことを「相続登記」と言います。
相続登記に必要な書類は、遺言書に従う場合と遺産分割協議を行った場合で異なります。
名義変更(相続登記)に必要な書類
遺言書に従う場合 | 遺産分割協議を行った場合 |
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どちらも任意で相続関係説明図があると良いでしょう。
⑤相続税の申告と納付
相続税の申告と納付は、相続開始の翌日から10ヶ月以内に行う必要があります。
相続税の申告と納付の対象となるのは以下の場合です。
- 相続する財産の総額が、基礎控除額を超える場合
- 配偶者控除やその他の特例を利用して基礎控除内に収まる場合
⑥不動産を売却する
不動産を相続したら売却活動を行います。
不動産の売却方法には、「買取」と「仲介」の2つの方法があります。
買取は不動産会社に直接買い取ってもらう方法で、仲介は不動産会社に依頼をし買主を見つけてもらう方法です。どちらにもメリット・デメリットがあるので、自身に合った売却方法を選択すると良いでしょう。
不動産売却についてはこちらの記事でも詳しく紹介しているので、ぜひ読んでみてくださいね。
不動産売却で失敗しないために!トラブルを回避する4つのコツとは?
不動産の売却に必要な書類
不動産売却を依頼する際はこちらの書類が必要になります。
- 登記済権利証または登記識別情報
- 建築図面(間取り図)・測量図
- 建築確認済証・検査済証
- 地積測量図・境界確認書
- 固定資産税納税通知書・固定資産評価証明書
- マンションの利用規約
- マンションの使用細則・維持費
引渡しの際は、以下の書類を準備しましょう。
- 身分証明書
- 実印・印鑑証明
- 銀行口座書類・通帳
⑦確定申告
譲渡所得がある場合は、確定申告が必要になります。
遺産分割協議により換価分割を行った場合は、相続人全員の確定申告をしましょう。
節税特例を受けたい際も、確定申告時に申請するため忘れずに行いましょう。
確定申告を行う時期は、相続不動産を売却した翌年の2月から3月になります。
契約書を紛失している場合はどうする?
相続不動産の売却に伴い譲渡所得税の確定申告をする際、不動産の取得価格が売買契約書の紛失で分からない方も多いかと思います。売買契約書がないと譲渡代金の5%しか取得費として認められず、かなりの譲渡税がかかってしまうので損をしてしまいますよね。
売買契約書を紛失してしまっている場合、以下の方法で対応できます。
- 売主または仲介業者に署名捺印してもらって再発行をする
- 購入時の不動産会社または売主に連絡しコピーをもらう
- 購入費が分かる資料をできるだけたくさん集める
- (パンフレット、領収書、通帳、住宅ローンの書類など)
- 抵当権設定登記の住宅ローンの金額を確認する
相続不動産を売却する際にかかる税金
相続不動産の売却においてどのような税金がかかるのか把握しておきたいですよね。
こちらでは、減税措置についても合わせて紹介していきます。
まず、相続不動産の売却でかかる税金は以下です。
- 登録免許税
- 譲渡所得税
- 印紙税
登録免許税
相続不動産の売却をするためには、相続人への名義変更(相続登記)が必要になります。
その際にかかる税金が「登録免許税」です。
登録免許税は売却不動産の固定資産税評価額に対して0.4%で課税されます。
また、令和6年4月1日より相続登記が義務化されます。
内容と期限については以下を参考にしてください。
義務に違反した場合は、ペナルティが発生するので注意しましょう。
参照:東京法務局
譲渡所得税
不動産の売却において利益が発生した場合は、譲渡所得税が課税されます。
譲渡所得税は、「住民税」と「所得税」を合わせて計算します。
被相続人と相続人を合わせた所有期間が、不動産を売却する年の1月1日の時点で5年以内か5年以上かによってその税率が変わります。
5年以内 (短期譲渡所得) |
住民税率9% | 所得税率30% |
---|---|---|
5年以上 (長期譲渡所得) |
住民税率5% | 所得税率15% |
譲渡所得税は以下のような計算式で求められます。
譲渡所得税=譲渡所得×税率
={譲渡価格-(譲渡費用+取得費)}×税率
印紙税
印紙税とは、不動産の売却時に作成する「売買契約書」に対して課税されるものになります。
不動産の売却価格によってその金額が変動します。
参照:国税庁
減税措置について
相続不動産の売却において適応される減税措置は、「相続財産の取得費加算の特例」と「相続空き家の3,000万円特別控除」の2種類があります。
どちらも申請できる期限があるので、損をしないためにもしっかり把握しておきましょう。
特例 | 申請可能な期限 |
---|---|
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例 | 相続開始日の翌日から3年10ヶ月以内 |
被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例 | 相続開始日から3年を経過する日の年の12月31日まで |
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
相続や贈与で被相続人から取得した不動産を売却すると、確定申告の際に譲渡所得税の支払いが必要になり負担が大きくなってしまいます。
それを軽減するために活かせるのがこちらの特例です。
要件を満たし一定の期間内に相続不動産の売却を行っていれば、以下で紹介する計算式で求められる金額を取得費として譲渡所得から差し引き、支払い額の負担を減らすことできるので、要件に当てはまる方はぜひ活用したいですよね。
【特例の適用を受けるための要件】
- 相続や遺贈により財産を取得したものであること。
- その財産を取得した人に相続税が課税されていること。
- その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。
「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」(国税庁)を加工して作成
取得費として加算できる金額は下記の計算式で求められます。
参照:国税庁
被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
平成28年4月1日以降に相続した不動産を令和9年12月31日までの期間に売却している場合、以下で紹介する要件を満たしていれば譲渡所得から特別控除される特例です。
※取得した相続人の数が3人よりも多く、令和6年1月1日以後の譲渡の場合は最大2,000万円までの控除が対象となります。
【適用要件】
- 昭和56年5月31日以前に建築されたこと。
- 区分所有建物登記がされている建物でないこと。
- 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。
「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(国税庁)を加工して作成
相続不動産売却の際に押さえておきたい注意点
相続不動産の売却において押さえておきたい注意点は以下のようになります。
- 減税措置には併用可能な特例と不可のものがある
- 遺産分割協議書に換価分割目的で遺産を取得することを明記しておく
- 迅速に対応してくれる不動産会社を選ぶ
減税措置には併用可能な特例と不可のものがある
減税措置には併用可能な特例と不可のものがあるので、注意しておきましょう。
相続不動産の売却をする際には、こちらの国税庁の資料を参考にしてみてください。
参照:国税庁
遺産分割協議書に換価分割目的で遺産を取得することを明記しておく
換価分割には、相続不動産を共同で売却する「共同登記型」と特定の相続人が不動産を売却し、そのお金を他の相続人に分配する「単独登記型」があります。
この単独登記型でお金を分配する行為が「贈与」とみなされてしまうため注意が必要です。
そのため、遺産分割協議書に換価分割目的で遺産を取得することを明記して対策をうっておくと良いでしょう。
迅速に対応してくれる不動産会社を選ぶ
相続不動産を売却する際は、手続きや減税措置が申請できる期間に期限があるため、迅速に対応してくれる不動産会社を選ぶことが大切です。
また、不動産を高く売ってくれる不動産会社を見極めると良いでしょう。
相続不動産の売却に必要な相続登記の手続きは4ヶ月を目途に行い、一般的に不動産の売却までに3~9ヶ月かかると言われています。
そのため、不動産を相続してから売却が完了するまでには約1年ほどの期間が必要になることを把握し、余裕を持った行動を心がけましょう。
相続不動産の売却は事前の確認が大切
相続した不動産を売却するためには、流れや必要な手続き、税金についてもしっかりと理解しておくことが重要です。
また、手続きや減税措置においても申請できる期限が限られているためしっかりと把握しておきましょう。
法定相続人同士での協議も、後になって揉めないためにも同意を得たうえでの行動が大切になってきます。
それぞれが納得のいく方法で、相続した不動産を売却を進めていきましょう。