分譲マンションのような区分所有建物は一戸建てなどとは異なり所有者が何でも自由にできるわけではありません。建物や敷地は分割できないため他の区分所有者との関係で変更や処分には制限があります。

したがって、区分所有建物の売却を成功させるためには、区分所有建物の特徴を正しく理解し資産価値を把握することが大切です。ここでは、区分所有建物の特徴について説明し、売却する際に留意すべき点について解説します。

区分所有建物とはどのようなものか

区分所有建物
建物の区分所有等に関する法律
(以下、区分所有法)に定められている

■区分所有法第1条
「一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるとき」
は、それぞれを所有権の目的とすることができるとされている

このような建物の部分に対する所有権を「区分所有権」という

区分所有権の対象となるためには、まず建物の各部分が構造的に独立していることが必要です。つまり、それぞれの部分がほかの部分と壁などで完全に遮断されて独立性を有していることが必要となります。したがって、障子や襖、間仕切りなどで区切られているような部屋は区分所有権の対象とはなりません。

また、建物の各部分に利用上の独立性があることも必要です。それぞれの部分が他の部分とは完全に独立して利用できることが必要であり、各部分をひとつの住居や店舗、事務所などとして利用できなければなりません。

代表的なのは分譲マンション

区分所有建物の代表的なものは分譲マンションです。分譲マンションは全体として一個の建物となっていますが、それぞれの住戸は完全に壁で遮断されて独立性を持っています。また、それぞれの住戸は、ひとつの住居として独立して利用されています。したがって、それぞれの住戸に対して所有権を成立させることができる区分所有建物であるということです。

分譲マンションと同様の構造であっても、賃貸マンションの多くはオーナーが建物全体を所有しています。構造的には区分所有建物になりえますが、各住戸に所有権が成立しているわけではないので、このような場合は区分所有建物にはなりません。もっとも、各住戸を異なるオーナーが所有してそれぞれが賃貸に出しているような場合には、そのマンションは区分所有建物になります。

区分所有建物所有者の権利

区分所有法第2条3項
区分所有建物において、建物の独立した部分として区分所有権の対象となっている部分のことを「専有部分」という

分譲マンションでいえば、それぞれの住戸部分のことです。この部分はそれぞれ独立しているので区分所有者が単独で所有していることになります。

しかし、区分所有建物には他にも廊下や階段、エントランス、エレベーターなどを含む躯体部分があります。

区分所有法第2条4項
これらの部分は分割して考えることができないため、「共用部分」と呼ばれている
区分所有法第11条1項
共用部分は区分所有者が共有することになる
※共用部分に対して区分所有者が持っている権利は共有持分であるこということ

分割して所有できないエントランスなどは共用部分

建物は土地を利用する権利がないと建てることはできません。区分所有建物の所有者が建物の敷地を利用する権利のことを「敷地利用権」といいます(区分所有法第2条6項)。敷地利用権も分割して考えることはできないものです。

そのため、敷地利用権が所有権である場合には、敷地は区分所有者の共有となります。また、敷地利用権が地上権や賃借権である場合は準共有と呼ばれます。区分所有者が敷地に対して持っている権利も共有持分であるということです。

なお、共有持分は原則として専有部分の床面積の割合によって決められます。

区分所有建物では共有持分だけを分離して処分することはできない

区分所有者は、専有部分に対する所有権を有するとともに、共用部分および敷地に対する共有持分を持っているということになります。これらの3つの権利は理屈のうえでは別々に捉えることもできるため、それぞれ別個に処分できそうにも思えます。たとえば、敷地利用権だけを誰かに売却したり抵当権の対象としたりすることもできそうです。

実際、かつてはこのようなことが行われていました。しかし、専有部分と敷地利用権などを別々に処分できるようにしておくと、多数の住戸のある分譲マンションなどでは土地の権利関係が複雑になり、トラブルに発展してしまう可能性があります。また、土地の登記記録も膨大な量となって権利関係を正しく把握するのが難しくなるおそれもあります。そこで

区分所有法第22条1項
1983年に区分所有法が改正され、敷地利用権と専有部分を分離して処分することが禁止された
区分所有法第15条
共用部分の持分についても専有部分の処分に従うものとし、専有部分と分離して処分できないものとされている

したがって、分譲マンションを売却する場合には、専有部分の所有権だけでなく、共用部分の共有持分や敷地の共有持分も買主に移転することになります。抵当権を設定する場合も、専有部分と共用部分の共有持分、敷地の共有持分のすべてが抵当権の対象です。区分所有法によって、専有部分と共用部分の共有持分、敷地の共有持分は常に一体として取引されることになりました。

そのため、区分所有建物については建物の登記を見れば敷地権に関する登記も確認できるようになっている一方、土地登記簿には所有権移転や抵当権設定などの登記はされなくなっています。つまり、区分所有建物では建物登記簿が土地登記簿の役割を兼ねているということです。

区分所有建物の専有部分と共用部分の区別に注意しよう

区分所有者は専有部分を単独所有しているものの、分割できない共用部分や敷地を共有しているので、建物利用にあたってはルールを決めて共同管理をしていく必要があります。基本的に専有部分は所有者が自由にして良い部分ですが、共用部分は所有者が単独で勝手なことはできません。

したがって、分譲マンションを所有している場合には、単独所有の対象となっている専有部分と共有の対象となっている共用部分の区別に注意する必要があります。専有部分は壁や床、天井に囲まれた居住に利用する空間です。注意すべきなのは、ほかの住戸との境界を区切っている壁や床、天井自体は共有部分であるということです。したがって、壁のコンクリートに勝手に穴を開けたりすることもできません。

共用部分は専有部分以外の部分です。勘違いしやすいのはベランダやバルコニー、専用庭などです。

これらは、それに接している特定の住戸の居住者だけが使用できることになっているので専有部分であると思い込んでいる人もいますが、実は共用部分です。これらは、特定の居住者だけが専用に使用できる「専用部分」ですが「専有」部分ではありません。

したがって、バルコニーなどの専用部分であっても使用方法などについては管理規約で決まっていることが多く、勝手に加工してはいけないだけでなく、置いてはいけないものが決まっていることも多くなっています。

また、専有部分と共用部分の境界にある窓サッシや玄関ドアなども共用部分ですので、自分好みのドアや窓に勝手に変更することはできません。

区分所有建物は区分所有者が管理組合をつくって共同して管理します。管理の方法については区分所有法に定められており、管理組合における決議の方法などについても細かい規定があります。管理組合では通常過半数によって決議を行いますが、共用部分を変更するなどの重要な事項については4分の3以上の多数によらなければ決議できません。また、建て替えを決議する場合には5分の4以上の多数が必要です。

区分所有建物を高く売却するためにリフォームは有効か?

分譲マンションのような区分所有建物を売却する際、少しでも高く売るために事前にリフォームをすることは有効でしょうか。たしかに、リフォームをすれば中古のマンションも見栄えが良くなり価格を高くすることは可能ですが、問題はリフォーム費用の分を取り戻せるほど高く売れるかどうかです。

専有部分のリフォームを行ってもその費用を回収できるほど高く売却できる可能性はほとんどないと考えられる

この点、一戸建てなどであれば建物全体をリフォームすることも可能ですが、区分所有建物でリフォーム可能なのは専有部分だけです。バルコニーやドア、窓など共用部分を自分だけでリフォームすることはできません。また、マンションのエントランスや階段、エレベーターなど、購入希望者の印象を大きく左右する共用部分についても変更は不可能です。

したがって、どんなに室内をきれいにリフォームしても購入希望者の印象を良くする効果は限られています。中古マンションの購入者は、専有部分だけでなく共用部分の劣化や管理の状況に強い関心を持っているからです。

また、そもそも中古マンションを購入する人の多くは、購入後に自分でリフォームすることを予定している人が多いものです。内装や設備などについては個人によって好みが異なるため、自分でリフォーム内容を決めたいと考える人がほとんどでしょう。好みに合わないリフォームによって価格が高く設定されていると感じれば購入を見送る人も多くなることが予想されます。

リフォームを前提にマンションを探している人は室内のきれいさなどはあまり重視せず、専有部分のリフォームのしやすさや好みの間取りであるかどうかに関心を向けます。また、マンションの躯体部分や共用部分など購入後に自分で変更できない部分についてもチェックするものです。

個々の区分所有者単独では変更できない共用部分があるのが区分所有建物の特徴です。そのことからすれば、専有部分のリフォームを行ってもその費用を回収できるほど高く売却できる可能性はほとんどないと考えられます。

区分所有建物の相場価格を把握しよう

不動産を売却する際には相場価格を把握することが非常に重要です。相場より安く売って損してしまうことがないようにしなければなりません。

不動産の相場価格は通常周辺で同種の物件がどのような価格で取引されているのかを参考にして知ることになります。この点、分譲マンションの相場価格を知ることは比較的簡単です。同じマンション内で既に売却されている住戸がある場合や売り出し中の住戸がある場合が多いからです。

もちろん、同じマンション内の住戸であっても、住戸位置や専用部分であるバルコニー、日照の向きや設備のグレードなどによって価格は異なります。ただ、マンション躯体部分に対する評価、交通利便性や生活利便性、周辺環境などの立地条件については完全に共通しているので、各住戸の特徴を十分勘案すれば市場で売却できそうな価格の予想はかなり精度の高いものになるでしょう。

正確に相場価格を知りたい場合には、不動産仲介会社に価格査定を依頼するのがおすすめです。この場合、複数の会社に依頼して査定価格を見比べれば相場価格を正確に把握できます。また、査定を依頼した不動産仲介会社の中から信頼できそうな会社を選んで売却を依頼しましょう。

その際には、最も高い査定価格を出した会社を安易に選ぶのではなく、査定の根拠や売却活動について合理的で納得できる説明をしてくれる会社を選ぶことが大切です。

区分所有建物の特徴を理解して売却を成功させよう

分譲マンションのような区分所有建物は、一戸建てなどとは異なる特徴があります。

専有部分と共用部分や敷地の関係を正しく把握しておくことで、自分の所有する区分所有建物の資産価値を正しく知ることができるはずです。特に区分所有建物では、共用部分の管理状況に対する買い手の関心は強いため、日常的に管理について関心を払っておくことが大切です。

専有部分と共用部分、専用部分などの区別、それらの使い方に関する管理規約や使用細則などについて正しく把握しておけば、資産価値を正しく把握して買主に対しても説明ができます。また、これらを理解した上で売却活動を強力にサポートしてくれるのが不動産仲介会社です。

仲介業者を探すなら、不動産売却査定サイト「イエイ」がおすすめです。大手はもちろんのこと全国にある地元に強い不動産会社1000社以上との取引がありますし、大切な不動産と売主を守るための万全なサポート体制がありますので、一度利用されてみてはいかがでしょうか。

頼れる売却のパートナーを見つけることが売却成功の鍵となるでしょう。