マンションを売却する際にはトラブルを招く可能性も考慮しましょう。なかには、契約を結び、代金を支払った後でクレームをつけてくる買主もいるので、臨機応変な対応が求められます。この記事では、マンション売却でよくあるトラブルと対処法をまとめていきます。

売主には瑕疵担保責任がある!期間や内容を決めておこう

マンションを売却した際、最も多いのは売主と買主の間で起こるトラブルでしょう。

売主には瑕疵担保責任があります

契約内容から支払い方法までトラブルの火種はたくさんありますが、なかでも「設備に関するクレーム」は頻繁に出てきます。たとえば、「暮らし始めたら壁紙がはがれている」「扉のたてつけが悪い」など、不便に感じた部分を売主に対応するよう要求してくる買主はいます。そんなとき、売主は「瑕疵担保責任」によって、マンションの不備を修繕しなければいけません。

■瑕疵■
不動産物件における損傷や破損部分のこと

■瑕疵担保責任■
売主が売却する物件について、瑕疵を修繕してから引き渡さなければいけない責任

そのため、支払いが済んだ後だろうと買主がすでに住み始めていようと、買主は瑕疵について売主の負担で対応するよう要求できます。瑕疵担保責任の期限は、基本的に契約から1年間です。ただし、契約内容によって期限を短縮することも延長することも可能です。

もしも、契約書に「売主は半年間の瑕疵担保責任を負う」と記載されていれば、買主はその期間に従わなくてはいけません。また、買主の合意さえあるなら、売主は瑕疵担保責任なしでマンションを取引できます。

ただし、トラブルを防ぐためには事前に瑕疵担保責任の範囲、期限を説明して買主に納得してもらうのが無難でしょう。

クレーム対策には下見が重要!売主が立ち会おう

マンション売買におけるクレームは、往々にして売主と買主の水かけ論になりがちです。

買主としては、マンションに不備があれば「瑕疵担保責任によって売主負担で修繕するのが当然だと考えます。一方、売主は「身に覚えがない瑕疵まで責任を負う必要はない」と判断するでしょう。その結果、話し合いが平行線をたどってしまう恐れがあるのです。こうしたトラブルを防ぐために、契約締結前には必ず買主を下見に招待しましょう。そして、下見には売主も立ち会うのが得策です。一緒に物件の隅々をまわり、丁寧に説明しましょう。

代理人に立会いを任せた場合、買主の感触や反応までは直に感じとれません。予想されるクレームの種は下見の時点でつぶしておくのがおすすめです。また、下見には「悪質なクレーム」を防止する意味合いもあります。ほとんどの買主は、特に問題がない物件についてクレームをつけるようなことはしません。

しかし、なかには自分でつけた瑕疵について補償を求めたり、瑕疵を理由に取引額の一部返還を訴えたりしてくる悪質な買主もいます。下見を適当に行ってしまうと、理不尽なクレームに対しても強気で対処できなくなります。

下見は買主が納得するまで行い、売却後に無駄な時間をとられないようにしましょう。

「履行の着手」はどう決める?手付金をめぐるトラブル

手付金トラブルとは?

マンション売却では、「手付金」を要求するケースも少なくありません。

■手付金■
◇売却価格とは別に売主が買主から受け取るお金のこと
◇契約が正当に履行されるための、担保のようなもの
◇問題なく支払いが済めば買主へと返却される

■手付解除■
◇手付金を犠牲にして買主が契約を解除する行為
◇買主が何らかの理由で契約を解除してきた場合は手付金は売主の元に残る

もし手付解除をされると売主は再び長い時間をかけて買主を見つけなければいけない
売主が絶対に物件を売り渡したかった場合、手付解除をされると損害が出てしまう

そこで、問題になるのが
■履行の着手■
◇買主がすでに契約を履行するために動いていれば「履行の着手」が認められる
◇手付解除は不可能になり、契約どおり買主は代金を支払うことになる
※「履行の着手」の定義はケースバイケース

あらかじめ、契約書にどの程度の手続きを済ませれば「履行の着手」になるのか、文言を加えておきましょう。

仲介業者を利用するなら契約内容を慎重に

不動産売買では、不動産仲介業者に依頼する方法もあります。

仲介業者は、個人よりはるかに広いネットワークを持っていますし、法律の知識も豊富です。優良な業者と契約すれば、理想的な買主と出会えるでしょう。ただし、仲介業者との契約には3種類あり、それぞれ内容が大きく異なります。契約を結んだ後で「仲介業者だけに有利な内容になっている」と驚かないためにも、契約内容を事前に把握しておきましょう。

仲介業者を利用する場合は契約内容を事前に把握!

まず、売主の自由度が高い契約が「一般媒介契約」です。

媒介契約
■一般媒介契約■ ◇売主は複数の仲介業者と同時契約できる
◇売主自ら買主を探し直接取引を行えることがメリット

■専任媒介契約■
◇1つの仲介業者としか契約できない
◇売主自ら買主を探すことは可能

■専属専任媒介契約■
◇仲介業者を1社にしぼらなくてはいけない      
◇売主自ら買主を探した場合も、仲介業者を通して契約しなくてはいけない
◇売主の行動は厳しく制限されるが、買主が見つかるまでの期間が早くなる特長もある

ちなみに、多くの仲介業者は専属専任媒介契約をすすめてくるので、惑わされず売主にとって最適な契約方法を考えましょう。

値下げ要求は安易に受けないようにしよう

マンションの売却価格をどう設定するかは、取引の成否を左右します。

値下げ要求は安易に受けない


おすすめなのは、最初のころは標準価格よりも高めに設定しておくことです。よほどの理由がない限り、いきなり安く設定する必要はありません。そして、時間が経つにつれてだんだんと価格を下げていきます。多くの買主は、売りに出たばかりの物件に対し「少し待てば安くなるだろう」と考えます。そのため、最初から売却価格を安くするメリットはほとんどないのです。また、価格が安すぎると買主候補が現れても値下げ交渉に応じられません。ちなみに、マンション売却を望むなら高確率で値下げ交渉を持ちかけられると覚悟しましょう。買主候補の要求するまま値下げに応じると、確かに物件は早く売れます。ただし、それで本当に利益が出るのか慎重に考えましょう。

また、仲介業者を利用したときも売却価格に関するトラブルは起こりがちです。価格を下げて買主を見つけようと提案してくる業者は少なくありません。しかし、業者は売主との契約期間内に買主を見つけて成功報酬をもらいたいので、交渉期間を縮めようと値下げをすすめてくるのは当然です。

売主の得にならない値下げは受け入れなくていいので、マンション売買では最低限「これ以下では売らない」というラインを守り抜きましょう。

トラブルを防ぐには契約内容と知識が大切

マンション売却のトラブルは、主に「契約内容の不備」と「知識不足」によって引き起こされます。どんなに理不尽なクレームを受けたとしても、契約書が整っていれば冷静に対処できます。契約書に違反するクレームについては相手にしなくていいからです。また、不動産売買についての知識が足りないと、悪質な買主や仲介業者にだまされやすくなってしまいます。マンションを売るときはルールをしっかりと勉強し、トラブルを避けられるような契約書を作成しましょう。