マンションを売却したくても「いくらで売れるか」が分からなければ、なかなか踏ん切りがつかないものです。しかし、マンションの売却価格は不動産業者に査定を依頼することで知ることができます。査定価格を聞いたうえで売却するかどうかを検討できるのです。

そこで、不動産鑑定評価の方法や注意点について紹介します。

マンションの査定額の調べ方とは?

マンションの査定額の調べ方

マンションなどの不動産における査定額を調べる方法には「原価法」「収益還元法」「取引事例比較法」の3つがあります。

原価法

原価法とは、建物の再調達価格(その時点でまったく同じ建物を新築するといくらかかるか)を算定し、原価修正分をマイナスして査定額を算出する方法です。マイナス補正される条件としては、年数の経過による資産価値の低下などがあります。ただし、リフォームなどを行って資産価値を向上させるような努力をしている場合には、これを考慮して算定されます。

ここでいうリフォームとは、基本的に第三者が客観的に判断できる「資本の投下(お金を払って修理している)」がないと認められないケースもあるので注意が必要です。自分でリフォームを行って、決算時に費用や減価償却費として計上していないケースでは考慮できない場合もあります。

原価法は一戸建て住宅やマンションの査定において利用されることが多い方法です。

収益還元法

収益還元法は、購入者が売却予定の不動産を運用した場合、「将来的にどれぐらいの収益を上げることができるか」を算定して対象物件の価格を計算します。自宅として使っていた区分所有のマンションでも、「賃貸物件として使用した場合」と仮定して算出することが可能です。

例えば、月額家賃10万円で賃貸できるような物件であった場合において、投資利回りを5%と仮定します。そうすると、一般的に収益還元法で査定する場合は1年(12カ月)で計算することになっているので、計算式は「10万円×12カ月÷5%=2400万円」となります。このように、収益還元法のベースは「賃貸としていくら利益がでるか」という考え方です。

そのため、主に投資用の不動産の価格査定においてよく利用される方法だといえます。

■家賃10万円
■投資利回り5%
■12か月
として

10万円×12カ月÷5%=2400万円

取引事例比較法

取引事例比較法はその名のとおり、他の物件における実際の取引事例を参考に対象物件の価格を査定するものです。近隣エリアにおいて同程度の物件が取引された事例を探し、いくらで売却できているかを調べて対象物件に適用します。ただし、物件によって築年数や構造、建物の状態などは異なります。そのため、それらの要素を加味して最終的に算定する方法です。

また、近隣エリアに参考となる事例がない場合には、より広範囲の条件が似たエリアの事例を参考にすることがあります。しかし、このような場合ではどうしても誤差が大きくなってしまいがちですので注意が必要です。さらに、参考にした事例が「売却を急いでいた」などの理由で相場より安い金額で売却している可能性もありますので、気を付けましょう。

正確な査定額を知るには訪問査定を

不動産の査定方法

不動産の査定方法には大きくわけて「机上査定」と「訪問査定」の2つがあります。机上査定とは「原価法」「収益還元法」「取引事例比較法」のように、計算上で対象物件の価格を査定する方法です。それに対して、訪問査定とは実際に物件の状態を見たうえで価格を査定します。

机上査定の場合

机上査定のメリットとしては、「手軽に依頼ができる」「比較的短期間で査定価格が算出できる」というものがあります。そのため、複数業者に見積もりを依頼したい場合や売却を急いでいるようなときに利用するとよいでしょう。しかし、机上査定は築年数や付帯設備などの物件情報や周辺環境のデータだけで判断します。そのため、「データよりも実際の建物の状態が悪い」など、データとのくいちがいがあるような場合では正確な査定ができないこともあるのです。

このような理由から、特に売却を急いでいない場合で、より正確な査定が欲しいのであれば訪問査定を依頼した方がよいでしょう。また、売却を急いでいる場合でも机上査定を依頼した結果、査定額が間違っているとすぐに売却できない場合があるというリスクも覚えておいてください。

訪問査定の場合

 訪問査定の査定は、担当者が実際の不動産を見に来て、周辺環境や室内状況などを確認したうえで査定を行います。そのため、査定額をアップさせたい場合は、少しでも見栄えがよくなるように室内および外観の清潔感を保つようにしましょう。他にも、「市街地への乗り継ぎのアクセスがよい」「近隣に商業ビルが建設される予定がある」など、実際にそこに住んでいる人でなければ得られない良い情報があれば担当者に教えておくと査定額に影響することがあります。

訪問査定では、物件状況以外にも周辺のインフラやエリアの法規制などについても調査しますので、査定結果が得られるまでは早くても数日かかるでしょう。少しでも早く結果が欲しい場合には、「購入時の売買契約書」や「建物図面」、「権利書」などの書類をそろえておくと、担当者の仕事がスムーズに進みます。

机上査定と訪問査定にはそれぞれ特徴がありますので、状況に応じて上手く使い分けることが大切です。

査定額で売れないときの対処法

価格を見直す、下げる

せっかく対象物件を査定してもらっても、その価格どおりに売れないこともあります。そのようなときは、まず「売却価格を下げる」や「相場よりも安い価格にする」といった選択肢を選ぶのが現実的です。

多くの人にとってマンションなどの不動産は非常に大きな資産だといえます。そのため、少しでも高い値段で売りたいものですが、いつまでも高い価格のままでいても売り出し期間が長くなってしまうだけです。一般的に、マンションは築年数が経てば経つほど価値が下がってしまうので、長くても3カ月程度売れなかったら価格について検討した方がよいでしょう。

また、相場よりも安くすると購入希望者に「お得感」をアピールできて、購入につながるケースがあります。ただし、相場よりあまりにも安くしてしまうと損をしてしまうことがあるので、気を付けましょう。基本的には、相場よりも少し低めの値段設定からはじめて、それでも売れなければ徐々に下げていく方法が良いです。

不動産に買い取ってもらう

不動産に買い取ってもらう場合

このような方法以外にも、「不動産仲介業者に買い取ってもらう」という方法があることも覚えておくとよいでしょう。売却は基本的に仲介業者に買主を見つけてもらう方法が一般的ですが、「一定期間内に購入希望者が見つからなければ仲介業者に買ってもらう」という契約をすることも可能です。

期間については物件によってさまざまで、期間内に売れなかった場合に買い取ってもらう価格は基本的に査定額より下がります。しかし、期間経過後は確実に買い取ってもらえるというメリットがあるので、売り出し期間を長引かせたくない人におすすめの方法です。

また、どのような方法を選ぶにしても「必ず価格交渉はある」という認識でおくことも大切です。

売主ができるだけ高く売りたいと思うのと同様に、買主はできるだけ安く買いたいと思っています。そのため、相場価格で売りに出していたとしてもほとんどのケースで「もう少し安くしてくれないか」という価格交渉はあるものです。この点を意識したうえで、最初は相場よりも少し高めに設定しておくのも売却価格を高くするためのテクニックだといえます。

売却するときは「理想の売却価格」とこれ以上はゆずれないという「最低限の売却価」をあらかじめ決めておくと、交渉がスムーズに進むでしょう。

まとめ

マンション売却価格の算定方法には大きくわけて3つのものがあります。それぞれの方法でも算定することができますが、どれにもメリット・デメリットがありますので一般的には3つの方法を併用して算定するのが良いとされています。物件の状況などに応じて、上手く使いわけるようにしましょう。

また、マンションの売却には必ず買い手である相手が必要です。相場価格のまま売却できるケースはまれで、ほとんどの場合で交渉によって価格が決定されます。売却価格を決めるときは、あらかじめ交渉によって値下げされることも想定した価格を設定するとよいでしょう。