「故郷へのUターン」「急な転勤を言い渡された」「住み替えを検討している」「相続した不動産がある」などの様々な理由から、所有する「戸建」や「マンション」などの不動産を「売る」のか「貸す」のか、どちらを選択するべきか悩んでいる方がいらっしゃるのではないでしょうか。

「売る」ことにも「貸す」ことにも、それぞれメリット・デメリットがあります。また不動産は、高額なお金が動きますので、選択一つで大きく損をしたり、逆に大きなお金を手に入れることができます。そのことから、どちらを選ぶべきか簡単に言いきることは難しいのです。

「売る」「貸す」それぞれのメリット・デメリットとはどのようなものなのでしょうか。

不動産売却のメリット・デメリット

不動産を売るメリット

不動産売却のメリット・デメリット

■不動産の売却代金を現金に換えられる
■売却額を確定できるため、将来、地価が下落してもリスクがない
■不動産の維持管理などにかかる手間とお金が不要になる
■売却で得た収益で、新しい不動産を購入することも可能
■固定資産税などがなくなり、税金面で負担が軽くなる

維持費もいらずローンも完済

所有しているマンションを売る場合は、物件の維持費用も必要がなくなります。 そして、ローンが残っている場合は、うまくすればローンを完済して身軽になれるかもしれません。

ローンの残高が無いのであれば、売却代金としてまとまった資金ができますので、次の物件の購入資金や運用資金に充てることも可能だと思われます。

「不動産を売るデメリット」

■大切な資産を失ってしまう
■売却に伴う諸経費(仲介手数料など)が発生する
■買い手が見つからず、売却に長期間を要することもある
■購入希望者に、自分の生活を見られてしまう

売却損がでる可能性がある

マンションを売却した代金で残りのローンを完済出来なかった場合、自己資金などを使ってローンの完済をしなければなりません。つまり、売却損が出るということです。ただし、この点については一定の条件を満たすことで、給与所得などからその損失額を控除することもできます。

不動産を貸すメリット・デメリット

不動産を貸すメリット

不動産を貸すメリット・デメリット

■不動産を所有しながら継続して安定した家賃収入を見込める
■長年住んだ愛着のある家を手放さなくてもよい
■所有する不動産を担保に融資を受けることも可能
■将来、自分の子供に相続させることもできる
■再開発エリアなど周辺環境が変わり、地価が急上昇することも

賃料が入ってくる

この賃料を元に、ローン返済がある方はローンのカバーを行なうことが出来ますし、場合によっては利益が出る可能性もあります。そして、ローンの完済後は、家賃が定期収入となるのです。

マンションを貸す場合に、どれぐらいの賃料が得られるかは、情報誌やインターネット上から近隣の家賃相場を調べればだいたい見当がつきます。 また、せっかく購入したマンションを手放す必要が無い点もメリットと言えるでしょう。

不動産を貸すデメリット

リフォーム費用などが必要になる賃貸する場合

■賃貸する場合、リフォーム費用などが必要になる
■家賃収入を得る場合、確定申告をする義務が発生する
■借り主の急な退去などで空室が発生すると収入を得ることができない
■税金・管理維持費などの経費が必要になる
■住宅ローンのある方は、金融機関の承認が必要な場合も

一定の経費が発生する

貸主には「貸しに出す物件を借りる人が使用できる状態に維持する義務」があります。なので、建物の修繕や管理の他にリフォームなどの経費が必要になります。

また、ローンの返済額によっては、家賃収入でローンのカバーが出来ずに、毎月の収支がマイナスになる場合も考えられます。 なので、現在のローン残高、毎月の支払額、維持費、家賃収入などを含めた検討が重要になってきます。

借り主が退去すれば収入はない

空室になるリスクは外せません。入居者の入れ替わりなどで、年間の入居率が常に100%になることはほぼないため、ある程度の割合で空室が出ることを含めて検討しなければなりません。

また、住宅ローンを残したまま貸しに出す場合、今後もし別のマンションを購入したくなった時にセカンドローンの扱いとなって、借り入れ(融資)がかなり困難になります。ローンの残高によっては融資枠が狭くなります。

なお、マンションを人に貸すということは、賃貸業を営むということにもなります。不動産会社に管理を任せる場合でも、貸主としての心構えがそれなりに必要ですし、安定した収益を得るためにはそれなりの努力が必要となってきます。

不動産オーナーとしてのノウハウを学べるという意味では、メリットがありますが、会社勤めで忙しい方やわずらわしいことは避けたいという方などにとっては、デメリットとなるでしょう。

そういった方にはサブリースや空室保証・家賃保証などの解決策もないわけではありません。

所有しているマンションを貸しに出す場合は、物件の築年数・立地条件・ローンの残高・空室が出ている期間のリスク・貸しに出す為の維持費などの必要経費など、このような要素を整理・把握し、色々な面から検討した上で決定することをオススメします。

「立地条件」や「エリア特性」をよく理解すること

「売る」「貸す」のメリット・デメリットをそれぞれピックアップしました。しかし、皆さまが所有している不動産は全国各地にあり、立地条件・エリア特性などによっては上記のメリットを享受できない場合もあります。

たとえば、「賃貸」の場合、利便性の高い都内エリアでは需要が多くあり、常に安定した収入を期待できます。しかし、最寄り駅から遠いなどの郊外エリアでは賃貸に適さない立地もあり、誰かに貸したくても長い間、空室状態ということも考えられます。

よく理解する「立地条件」や「エリア特性」

マンションで空室が長く続けば、管理費・修繕積立金など毎月の維持費がかかり、大きな自己負担を抱え込むことになります。 一般的には不動産は「売った方がおトクな立地」、「貸したほうがおトクな立地」にどちらか一つに絞ることができると思います。

あなたが所有しているマンションの立地条件や状態(築年数など)、ローンの有無・経済的・家庭的な事情など様々な要素で差が出ますから、きっちりとシミュレーションをして、比較・検討することをオススメします。

きっと「売る」「貸す」を具体的に判断ができるのではないでしょうか。

マンションの価値を算出!「マンションPER」とは?!

最後に、マンションを所有・購入している方には知っておくべき数値があります。それは、マンションの資産価値をはかる「マンションPER」という数値です。

マンションPER
東京カンテイという不動産のデータバンク会社が算出し、どこを購入すればマンション価値が高いか一目で分かるランキング形式のデータ

■計算式
マンションPER=部屋価格 ÷(目安月額賃料×12)
(実際には、管理費・修繕積立金・部屋の補修料などがかかる)

マンションPERは、購入した金額を回収するのに必要な期間を表したものなので、数値(=年数)が低いほど「収益性に優れたマンション」ということになります。

マンションPERは、マンションを「資産」として考えた時、優良かどうかを判断するための目安にもなります。

実質利回りと表面利回り

マンションのチラシに「利回り○%」という表記があるのをご覧になったことはないでしょうか。

貸しに出す場合、気をつけるポイントとして、所有しているマンションを貸した場合の「利回り」があります。この「利回り」とは、有力な判断材料の1つになります。

利回り
購入時の費用(投資額)に対して1年間で、どれぐらいの収入を得られるかを割合で表わすもの

■利回りの算出方法
利回り=年間の家賃収入÷購入費用×100

また、「利回り」には、表面利回り実質利回りの2つがあり、上記の計算式は表利回りを算出するものです。リスクを回避するためには、実質利回りに注目する必要があります。

実質利回りについて
■年間の総家賃収入から賃貸物件の運用費用
(委託費、仲介手数料、管理費、固定資産税、火災保険料など)
を差し引いた年間の純収入で考える

■実質利回りの算出方法
実質利回り=(年間の家賃収入-年間の支出)÷購入費用×100

マンションを貸しに出すのなら、上記の実質利回りで6%〜8%、理想の数字は10%と言ったところです。