不動産を売ったり買ったりするときに発生する税金についてわからない、よく知っておきたいという方は少なくないのではないでしょうか。売却・購入価格に目が行きがちなのですが、不動産売買には諸費用や税金がかかります。
しっかり整理しておくことで安心して取引が出来ますので、少しでも知っておきましょう。
この記事の目次
不動産売却時の税金(不動産譲渡税)
所有している不動産を売却した際に発生する税金があります。とは言え、税金がかかるのは譲渡した不動産価格にそのまま税率計算されるわけではなく、売却に係わる経費や今まで所有していた期間にかかった経費などを引いた上で、利益が出た場合です。
景気が良いときに高値で買い、凄く安くなってから売る場合にはかからないのですが、逆に昔まだ不動産価格が安いとき(40年近く前など)に買って、周辺が開発されて便利になった時に売る場合などは、税金がかかる可能性が高いのです。
居住用不動産を売却する場合と、事業用の不動産を売却する場合では、税金の計算方法に違いがあります。キーワードは居住用も、事業用も「5年」「買い換え」の2点です。
売却する不動産の所有期間が「5年」を超えるか超えないか、売却したお金で次の物件への「買い換え」があるか無いか、これをチェックする必要があります。
売却時にかかる税金
居住用
3,000万円特別控除
■所有期間5年超10年以下(長期譲渡所得)
買い換え無し
3,000万円の特別控除
買い換えあり(譲渡損が発生した場合)
居住用財産の買い換えに係わる譲渡損失の繰り越し控除の特例
居事業用
特定事業用資産の買い換えの特例
買い換え無し
所有期間5年以下(短期譲渡所得)
所有期間5年超10年以下(長期譲渡所得)
簡単にまとめると上記の表のような形になります。
「5年」超は長期、「5年」以下は短期です。同じ売却にしても色んな事情はありますが、4年経ったところで売却した場合と5年超えてから売る場合では、税金にかなり違いがあるのです。
売却で出た利益に対して、税金がかかります。所得税と住民税です。利益に、双方の税額合計を掛けます。
例えば利益1000万円として計算すると
短期:所得税30%+住民税9%=39%(390万円)
となり、短期で売るとほぼ倍です。
さらに、10年以上所有していると低率分離課税やその他の特例云々と、細かい税金の決まりごとがたくさんでてきます。税金はそのときの時代背景によって国の政策等で変化するものですので、実際に売却を考えるタイミングで調べないと正確な数字をはじくことは難しくなります。
ご自身の所有している不動産について正しい情報を調べておく、もしくは専門家に調査を依頼して正しい情報を得ることがトラブルを未然に防ぐ方法です。
不動産を相続したときの税金
次に、「不動産相続時にかかる税金」についてです。
自分の親や兄弟から、不動産を相続した際にはその不動産には相続税がかかります。税率は最大で55%です。そこまで大きな税率がかかるのはそれなりの財産額がある場合になりますが、不動産は高額なものです。
ですので、首都圏の利便性の高い場所に自宅があればそれなりの税金がかかってくることを想定しておかなくてはなりません。そして、不動産にかかる相続税の恐ろしい点は不動産を分割することが出来ないということです。
不動産相続時の問題例
例えば、1億円と評価された不動産を遺して親が亡くなったとします。その家で、親は長男家族と同居していました。親が亡くなったのは突然であったため、財産の分け方については兄弟で何の相談もしていませんでした。
長男家族は、親と同居していた家でそのまま生活することを望みますが、他の兄弟は相続された家は3分割なので1億円の評価の3分の1ずつ欲しいと主張します。長男は、残された家に住み続けるために、兄弟に手渡すお金として約6666万円もの現金が必要になります。
さらに、相続税までかかってきます。不動産にかかる税率は様々な控除があったとしても高額です。そんな現金があれば問題はありません。
結局、不動産は売却せざるを得なくなり、様々な不都合が生じます。親族間の関係まで壊れます。さらに、この場合の不動産売却に関しても、譲渡所得税等がかかってきます。相続で取得した不動産だからといって、特例はありません。
ただし、その相続税の申告書の提出期限(亡くなった日から10ヶ月)の翌日以後3年以内に、相続や遺贈により取得した財産を売却した場合には、売却した人の相続税額のうち一部を、売却した不動産の譲渡所得の計算上控除する取得費に加算することができます。
これによって、多少は譲渡益を減らすことが出来て、税額の抑制になります。
さらに細かく言うと
相続によって、取得した不動産を売却するまでの所有期間は、被相続人が不動産を購入した日(当時の登記日)までさかのぼるので、相続発生日(被相続人が亡くなった日)ではありませんのでご注意ください。
さきほどの例では、親が亡くなって相続されたときではなく、親が不動産を買ったときということになります。
相続によって取得した不動産を売却する場合に、経費として認められる【取得費】は、現時点の市場評価額ではなく被相続人が不動産を購入した時の購入金額となります。
購入された時期によっては、まだ不動産が安かったかもしれませんし、場所によっては地価が大幅に上昇した可能性もあります。それによっては、税金が想像以上にかかってしまうことがありますので注意しましょう。
被相続人が、どの時期に、いくら払って購入した不動産かによって税金の金額が全く異なるので確認しておきましょう。購入金額を証明する契約関係の書類や、経費の額を証明する領収書などが見つからない時は、売却金額の5%を取得費として控除の計算をすることとなります。
相続の際に細かい計算などは税理士などのプロに相談することになると思いますが、手元に資料を残しておくことが大事になってきます。不動産を相続した際に売却が必要となると、譲渡に関する税金も相続税もあるので想像以上に税金がかかる可能性があります。
利益があった場合のことなので、そこまで深刻に考えなくてもいい場合も多いと思いますが、高額な不動産になればなるほど、その周辺で考えられるリスクも多いということを知っておいていただきたいと思います。
不動産を取得した時にかかる税金
土地や家、マンションを購入した際にかかる税金は、時系列で並べると「印紙税」「登録免許税」「不動産取得税」となります。
印紙税
登録免許税
■建物を新築した場合の所有権保存登記
■ローン借り入れの際の抵当権設定登記
にかかる税金
銀行・郵便局で納付又は印紙にて法務局に直接納付するが、実際は司法書士に預ける場合が多い
不動産取得税
都道府県が課税する地方税
※納期は各都道府県により異なる 軽減によって支払いをしなくて済む場合も多くある
■計算に用いられるのは固定資産税評価額
※建物・土地にそれぞれ評価額があり各都道府県が管理している
※登記費用などもこの額を基に計算されている
控除の計算は下記の通り
建物
土地
■(下記①か②の多い金額)
①= 45,000円
②=(土地1m2当たりの固定資産税評価額×1/2)×(課税床面積×2(200m2限度))×3%
例
建物の固定資産税評価額が1200万円以内なら不動産取得税の建物分は0円
土地の固定資産税評価額は3,000万円とする
マンションの場合、土地は共有持分のみで計算
■共有持分が60㎡だとすると
(3,000万÷60㎡×1/2)×(70㎡×2)×3%=105万円が控除可能額となる
■土地の取得税計算
3,000万円×1/2×3%=45万円から105万円控除可能なため0円
※このような場合、税金がかかることはない
まとめ
色々、税金についてまとめて書きましたが、不動産それぞれの状況によってかかる税金は全然違うということを感じていただけたのではないかと思います。
表面的に表示されている不動産価格や、諸経費に目が行きがちですが、税金についても理解を深めておくことで不動産取引を安全に安心して行うことが出来ます。不動産業者も、税金についてすべて完璧な知識を持つことは非常に大変です。
相談した担当者の方が、スムーズに案内をしてくれたとすれば、非常に勉強家だということの一つの証明にもなります。特例、軽減などが随時変わるのが税金なので、都度確認しながら、不動産の売却・購入を進めていただければと思います。