不動産査定書を得るには、2つの方法があります。

1つは不動産鑑定士に依頼する方法、もう1つは不動産会社へ依頼する方法です。このページでは、それら2つの違いと必要書類や費用について解説していきます。

査定書が必要な理由によって、依頼する場所は異なる

不動産の価格査定を受け、不動産査定書を得るにはこの2つともう1つが不動産会社などで簡易査定や訪問査定をする方法です。不動産会社で簡易査定や訪問査定を依頼する場合、基本的には無料である場合が多いです。

不動産を売却するだけなら、売却することを専門に行っている不動産会社に依頼した方が良いこともありますが、裁判所などに正式書類として提出する場合には不動産鑑定士に依頼する必要があります。

一般的な査定と不動産鑑定士による査定の違い

一般的な査定とは売却のための査定で、3か月以内に売却可能と思われる価格のことです。一方、不動産鑑定士による鑑定評価は鑑定評価基準に基づいて行われ、正確な評価を知ることのできるものです。

査定は不動産を売買する不動産会社が行うものが中心で、基本的には無料で価格の査定を受けることができる点が大きく、不動産を売買するための参考に価格を知りたいというのであれば不動産会社に査定を依頼する方が良いでしょう。

一方、鑑定評価は国家資格である不動産鑑定士だけに認められた独占業務で、こちらは10万円程の手数料が発生するうえに、依頼してから鑑定評価書が完成するまでに時間がかかります。その分、遺産分割時や裁判等での説得力は高く、必要に応じて鑑定評価を検討してみるのも良いでしょう。

一般的な査定と不動産鑑定士による査定の違い

不動産会社(一般的な査定)
■手数料・・・無料
■査定書の有無・・・ないことが多い(ある場合も売却後の作成)
■評価手法・・・主に取引事例比較法
■準拠する法律・・・自由
■裁判資料として・・・弱い
不動産鑑定士(鑑定評価)
■手数料・・・約10万円
■査定書の有無・・・ある
■評価手法
◇取引事例比較法
◇収益還元法
◇原価法
■準拠する法律・・・鑑定評価基準
■裁判資料として・・・強い

評価手法の違い

不動産会社が行う査定と不動産鑑定士が行う鑑定評価とではさまざまな違いがあります。例えば、評価手法の違いです。

一般的に、不動産会社が行う査定では取引事例比較法(実際の取引事例から価格を決める)により価格が判断されます。その査定方法にルールはなく、担当営業マンの経験に基づいた判断がなされることが多いです。

また、査定価格の根拠を示す査定書が作成されないこともよくあります。

一方、不動産鑑定士が行う鑑定評価では鑑定評価基準に基づき、取引事例比較法と収益還元法(不動産の収益性に着目して価格を決める)、原価法(同じ不動産を再度取得した場合を想定して価格を決める)の3つの評価手法を用いるのが基本となっています。

こうして作成された不動産鑑定評価書はかなりのボリュームがあります。

売却査定を依頼する場合の注意点

複数の不動産会社に売却査定を依頼した際、その中で単純に査定額の高い会社を選ぶということはやめておきましょう。

売主としては少しでも高い価格で売りたいことはもちろんですが、不動産会社の中にはそうした気持ちを利用する会社もあります。特に売却をメインに行っている不動産会社の場合、売却による仲介手数料が生活に影響しますので営業マンも本気です。

特に都心や競合がひしめく地域になるとこの傾向が強くなるのですが、実際の査定価格(相場)よりも少し高い価格を提示して、最初に媒介契約を取りにきます。

実際に高い価格で売れれば良いのですが、買主としては当然少しでも安い価格で買いたい気持ちが働くため売れ残り、結局は査定価格よりも値下げを重ねるという可能性が高いのです。

この時点で、売主は

・最初の査定価格から値引きを重ねてきた期間を無駄に消費してしまった
・この期間、広告に掲載されつづけた事で売れ残り感が出てしまった
・売れると思っていた査定価格で売れないと気づかされ心理的ダメージを受ける

などの、さまざまな被害を受けています。

売却査定を依頼して査定価格を聞く時には、査定価格の高さで決めるのではなくなぜその査定価格なのか、その根拠を聞くようにすると良いでしょう。

不動産鑑定士に依頼する場合の注意点

不動産鑑定士に依頼する場合、まず連絡をとってみて鑑定の流れや費用について相談すると良いでしょう。不動産鑑定士はインターネットで、「不動産鑑定」と、地名をキーワードとして検索すると良いです。

不動産鑑定士もいろいろ

不動産鑑定士が行う鑑定評価でも価格が異なる

不動産鑑定士が行う鑑定評価は、裁判等で強い実証資料となるものですが、実は不動産鑑定の評価額は不動産鑑定士によって異なります。同じ不動産鑑定士が、同じ鑑定評価基準に則って行う鑑定評価といえども、人間が行うものなので、評価する者によって違うのです。

それでは、どの価格が正しいのかというと、不動産鑑定の中身を詳しく見るしかありません。より精度の高い鑑定評価書を得たければ、信用できる人に依頼するか、依頼する側が不動産鑑定の知識を身につける必要があります。

不動産鑑定士に支払う報酬は、対象の不動産の額や種類によって異なる

不動産鑑定士が鑑定を行い作成した不動産鑑定評価書は、だいたい10万円程とお伝えしましたが、鑑定を依頼する不動産の額や種類(専門用語で類型と呼ぶ)によって異なります。

不動産鑑定士に支払う報酬が10万円程度なのは、一般の3,000万円程度の不動産の鑑定評価を依頼した場合で、これが例えば1億円程度の不動産の鑑定依頼だと報酬もぐんと高くなります。

また、一般的に不動産売却の際に依頼するのは宅地や建物の所有権について鑑定を依頼しますが、これが例えば宅地や建物の借地権についての依頼となると支払う報酬が変わります。

一般的には所有権の評価よりも借地権の評価の方が作業量も多くなり、報酬も高くなります。

査定書を依頼する時に必要なもの

査定書を依頼するにあたって不動産についての資料を収集する必要があります。

必要なもの

査定書を依頼するにあたって、住宅を特定できる資料を用意しておく必要があります。登記簿等は不動産会社の方でも準備できますが、準備していった方が良いでしょう。

・住宅地図
・登記簿(法務局で取得できる)
・公図、地積測量図(法務局で取得できる)

あると良いもの

上記以外にも詳細な資料があるのであれば、持っていった方がより詳細な査定を期待できます。

・購入時の契約書や重要事項説明書
・権利証(または登記識別情報通知)
・建築確認申請書等の建築図書
・固定資産税評価額が分かる固定資産税の納税通知書等
・相続や贈与もからむのであれば家系図等(手書きのもので良い)

まとめ

不動産査定書を依頼する場合、不動産会社に無料査定を依頼する方法と不動産鑑定士に有料で鑑定評価書の作成を依頼する方法がありますが、どちらにするかは必要に応じて使い分けると良いでしょう。

不動産鑑定士の鑑定評価はより精度の高い価格査定が期待できますが、実際の売買は売主と買主の希望が合致するところで価格が決まります。不動産の売却のための不動産査定書であれば不動産会社の査定依頼書がいいでしょう。

一方、相続にあたって親族を納得させるための不動産査定書が欲しいといった理由でしたら、不動産鑑定士へ鑑定評価書の作成を依頼するとより説得力が高まります。