住宅ローンの返済が思うようにいかなくなり、「この先どうなってしまうのだろう」「家を失ってしまうかもしれない」といった不安や焦りでいっぱいになっている方は少なくありません。
しかし、住宅ローンの返済が困難になったとしても、すべてが終わってしまうわけではありません。
「任意売却」という方法で、ご自身の意思で家を売却し、新たなスタートを切る道筋があるのです。
本記事では、任意売却の基本的な知識やメリット・デメリットから、最も重要な「どこに、いつ相談すべきか」までわかりやすく解説します。
この記事を読み終えることで、あなたは任意売却について深く理解し、信頼できる専門家を選んで最善の結果を得るための具体的な一歩を踏み出すことができます。
一人で悩まず、まずは正しい情報を知り、行動を開始しましょう。
この記事の目次
任意売却とは?基礎知識と仕組み

任意売却とは、住宅ローンの返済が難しくなった不動産を、金融機関(債権者)の同意を得て売却する方法です。
本来、住宅ローンが残っている不動産には金融機関によって「抵当権」が設定されており、ローンを完済しなければ抵当権は解除されず、事実上売却できません。
しかし、売却価格がローン残高を下回っている「オーバーローン」の状態でも、金融機関の同意を得られれば抵当権を解除してもらい、特別に売却を進めることが可能になるのです。
任意売却を選択するケースの例
任意売却を選択するのは、具体的にどのような状況に陥った方なのでしょうか。
いくつかの例を挙げます。
・リストラや病気などがきっかけで収入が減り、住宅ローンの返済が難しくなった
・離婚の際に、財産分与のために家を処分したい
・住宅ローン特則(※)が利用できない
・投資用のアパートの空室が続き、家賃収入が得られなくなった
・相続した実家を売却したいが、ローンや担保が残っている
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※「住宅ローン特則」とは? 「個人再生」という借金を減額し、分割返済できる債権整理の手続きで使える制度のこと。 「住宅資金特別条項」とも呼ばれる。 この制度では、住宅ローン返済中でもマイホームを手元に残すことができる。 |
任意売却を利用するための主な条件
任意売却は、誰でも、どのような状況でも利用できるわけではありません。
手続きを進めるためには、下記の条件を満たす必要があります。
・債権者(金融機関)の同意を得ている
最も重要かつ基本的な条件です。
売却価格でローン全額を回収できなくても、金融機関が抵当権を解除し、売却することに同意しなければ任意売却は成立しません。
・売却活動期間に余裕がある
任意売却は、「競売の開札期日の前日」までに決済を完了させる必要があります。
この期日が迫っていると、交渉や売却活動に必要な期間が確保できず、物理的に不可能になります。
まさに時間との戦いであり、早期の決断と行動が求められます。
競売については、【競売との違い】で解説しているので、こちらをご参考ください。
・共有者の同意がある
不動産が夫婦や親子など複数人の共有名義になっている場合、共有者全員の同意がなければ売却できません。
・連帯保証人の同意がある
任意売却後に連帯保証人に残債の請求がいく可能性があるため、連帯保証人の同意も必要となるのが一般的です。
これら条件を満たすことで、任意売却を利用することが可能となります。
【注意】このような場合は任意売却を利用できない!
一方、下記のような状況では、任意売却の利用が難しくなる、あるいは不可能になることがあります。
・税金の滞納によって差し押さえられている
税金や健康保険料を滞納し、国や自治体に不動産が差し押さえられている場合、税金の回収が優先されるため、金融機関が抵当権解除に応じにくくなります。
・競売日間近である
競売の開札日が迫っているなど、売却活動や交渉に必要な期間(目安として3ヵ月以上)が確保できない場合は、間に合わない可能性が高くなります。
・共有者や連帯保証人からの同意が得られない
関係者全員の足並みが揃わなければ、手続きを進めることはできません。
・売却価格が住宅ローンの残高を大きく下回っている
売却価格がローン残高に対しあまりにも低すぎると、債権者である金融機関が任意売却を認めず、競売による回収を選択する可能性があります。
任意売却の5つのメリットと3つのデメリット

住宅ローンの返済が難しくなり、任意売却を選択するとどのようなメリットがあるのでしょうか。
また、どのようなデメリットがあるのかを理解することも非常に重要です。
ここからは、任意売却を利用する主なメリットとデメリットをご紹介します。
任意売却のメリット
任意売却を選択すると、競売を避ける上で下記の5つの大きなメリットがあります。
・市場価格に近い価格で売却できる
任意売却は通常の不動産売却と同じような流れで進められるため、市場価格に近い価格で売却が可能です。
市場価格の8~9割の価格で売却できる可能性もあります。
一方、競売では市場価格の7割程度まで下がってしまうケースがほとんどです。
・周囲に事情を知られずに売却できる
任意売却は通常売却と同様に、売却活動中に不動産の所有者の情報は公開されません。
競売のように裁判所のWebサイトや新聞に情報が掲載されることがないため、周囲に事情を知られずに売却を進められます。
・諸費用や引越し費用を売却代金から支払える
売却にかかる仲介手数料や抵当権抹消費用などの諸費用を、売却代金から捻出できる場合があります。
さらに、交渉次第では引越し費用も売却代金の配分の中からも捻出することが可能です。
引越し費用は、一般的に10万~30万円程度が相場と言われています。
・残債は分割返済することができ、交渉次第で軽減も可能
本来、住宅ローンの滞納を放置すると「期限の利益喪失」という状態になり、一括返済しかできなくなります。
しかし、任意売却の場合は金融機関と交渉することで、売却後も無理のない範囲で月々の分割返済が可能になります。
専門家が交渉すれば、返済額が軽減される可能性も高まります。
・契約日や引渡し日の融通がきく
金融機関が認める範囲内であれば、契約日や引渡し日などを相談して決められます。
家族の都合なども考慮しながら日程調整ができるため、競売のように強制的な退去を命じられることはありません。
任意売却のデメリット
任意売却を検討する際は、メリットだけではなくデメリットも理解した上で選択することが大切です。
・信用情報機関に登録される恐れがある
住宅ローンを滞納すると、信用情報機関の個人信用情報に滞納履歴が登録されます。
これが、いわゆるブラックリストに載るということです。
滞納履歴は約5~7年程度残り、その期間はクレジットカードの作成や新たな借り入れの審査に通らなくなる可能性があります。
・金融機関や連帯保証人の同意が必要
任意売却には、金融機関の同意だけでなく、残債の支払い義務が残る連帯保証人の同意も必須です。
事前にしっかりと事情を説明し、理解を得る必要があります。
・期間内に売却できないと競売になることもある
任意売却ができる期間は限られており、買主が見つからず時間が過ぎてしまうと、最終的に競売にかけられてしまう可能性があります。
そのため、早期の相談と売却活動が極めて重要です。
任意売却は「競売」や「通常売却」と違う?

住宅ローンの返済が困難な状況下では、「任意売却」と「競売」のどちらを選ぶかで、その後の生活が大きく変わります。
ここからは、「任意売却」と「競売」、「通常売却」の違いについて、詳しく解説します。
違いを把握し、あなたにとって最善な手段で、家を手放す準備を進めていきましょう。
競売との違い
競売とは、住宅ローンが支払えず滞納を続けた際に、裁判所の手続きのもと、対象の不動産が強制的に売却されることを指します。
任意売却と競売の主な違いは下記のとおりです。
| 項目 | 任意売却 | 競売 |
|---|---|---|
| 売却価格 | 市場価格に近い価格 | 市場価格の7割程度 |
| プライバシー性 | 高い (通常売却と同様) |
低い (裁判所のサイトなどで情報が公開される可能性が高い) |
| 退去日 | 融通がきく | 所有者の意思は関係なく強制的に退去を命じられる |
| 残債の分割返済 | 可能 (金融機関と交渉できる) |
難しい (一括請求される可能性が高い) |
| 諸費用・引越し費用 | 捻出できる可能性がある | 基本的に捻出できない |
通常売却との違い
任意売却と通常売却の大きな違いは、担保を有する金融機関の同意が必要かどうかという点です。
| 売却方法 | 違い |
|---|---|
| 通常売却 | 不動産の売却価格がローン残債を上回る(アンダーローン)場合、売却代金でローンを完済できるため、金融機関の同意は不要です。 |
| 任意売却 | 売却価格がローン残債を下回る(オーバーローン)場合、ローンを完済できないため、金融機関の「抵当権を解除し売却を認める」という同意が必須となります。 |
任意売却の相談先一覧と窓口の選び方

任意売却を成功させるためには、相談する窓口選びが非常に重要です。
任意売却の相談先は、法律、金融、不動産取引の専門性によって複数あります。
ここでは、それぞれの窓口の特徴と、どこに相談すべきかの判断基準を解説します。
相談できる窓口と役割
任意売却の相談先は、主に下記の4つが挙げられます。
それぞれの役割について理解しておきましょう。
| 相談窓口 | 役割と特徴 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 任意売却に強い不動産会社 | 売却活動と債権者との交渉の実務担当。 | 交渉のノウハウが豊富で、市場価格に近い売却を実現しやすい。 | 法務や税務の専門知識は別途必要になる場合がある。 |
| 司法書士・弁護士 | 債務整理や法的手続きの専門家。 | 自己破産や個人再生などの根本的な債務問題を解決できる。 | 売却活動自体はできないため、不動産会社を紹介されることが多い。 費用が高額になりやすい。 |
| 借り入れ先の金融機関 | 住宅ローンの債権者。 | 任意売却前に返済プランの見直しの相談ができる。 | 債権者なので、債務者(あなた)にとって必ずしも有利な提案をするとは限らない。 任意売却を認めないケースもある。 |
相談先を決める上での優先順位と判断基準
複数の相談先がある中で、あなたがまずどこに相談すべきかという優先順位は非常に重要です。
しかし、任意売却について一番最初に検討すべき相談先は、任意売却を専門とする不動産会社です。
任意売却は、売却実務(買主探し)だけでなく、金融機関との交渉という法的な側面も併せ持っています。
任意売却に特化した不動産会社は、この両方の実務を最も多く経験しており、専門的なノウハウを持っているため、迅速かつ有利に手続きを進められる可能性が高いからです。
司法書士・弁護士へ相談すべきケース
弁護士や司法書士は法的なトラブルや債務整理のプロですが、特に下記のケースでは専門的な相談が必要です。
・住宅ローン以外にも借金が多く、自己破産や個人再生などの債務整理を視野に入れている場合
・連帯保証人や共有者との関係が深刻で、法的な調停が必要な場合
金融機関へ相談すべきケース
住宅ローンを借りている金融機関も相談先の候補です。
下記の状況の場合に相談すると良いでしょう。
・まだ滞納はしていないが、一時的に支払いが厳しい場合
・返済計画の変更を打診したい場合
ただし、金融機関は債権者であるため、任意売却に消極的な態度を取る場合があります。
その結果、時間を浪費させられる可能性があるため、任意売却を進める際は、先に不動産会社に相談し、交渉時に同席してもらうのが最もスムーズな方法です。
任意売却を安心して任せる不動産会社の選び方と悪徳業者対策

任意売却を成功させる鍵は、パートナーとなる不動産会社選びにあります。
信頼できない業者に依頼してしまうと、売却活動が長引いたり、不当な費用を請求されたりするリスクがあるためです。
ここでは、任意売却を安心して任せる不動産会社の選び方と、悪質な業者に騙されないためのポイントを解説します。
信頼できる不動産会社のチェックポイント
数ある不動産会社の中から、本当に信頼できる専門家を見極めるためには、下記の5つのポイントを確認することが重要です。
・任意売却の具体的な解決実績(件数や事例)
「任意売却も扱っています」という会社ではなく、Webサイトなどで具体的な解決件数や成功事例を提示している、実績豊富な専門会社を選びましょう。
実績が多いほど、債権者との交渉ノウハウやイレギュラーな状況への対応力が高いと判断できます。
・弁護士・司法書士との連携体制が構築されているか
任意売却後の残債処理や法的な債務整理まで視野に入れるため、法律の専門家とスムーズに連携できる体制があるか確認してください。
ワンストップでサポートしてくれる体制があれば、依頼者側の負担が大幅に軽減されます。
・デメリットやリスクも包み隠さず説明してくれるか
売却後の信用情報や残債について、デメリットも含めて正直かつ詳しく説明してくれるかどうかが、その業者の誠実さを示す基準になります。
メリットばかりを強調する業者は避けるべきです。
・売却後の残債処理や引越しまでサポートしてくれるか
単に家を売るだけでなく、売却後の引越し先の提案や、残債の返済交渉に関する具体的なアドバイスなど、生活再スタートまで親身になって寄り添ってくれるかどうか確認しましょう。
【注意】悪徳業者が使う手口と回避策
残念ながら、住宅ローン問題で不安を抱える人につけこむ悪質な業者も存在します。
こうした業者を回避するためにも、彼らの手口を知っておきましょう。
特に注意すべき悪徳業者の手口は下記のとおりです。
・仲介手数料以外の不当な費用を要求する
「コンサルタント料」「調査費用」などの名目で、仲介手数料以外に着手金や成功報酬を要求された場合は、法律違反の可能性が高いです。
契約書に記載のない費用がないか、細部までチェックしてください。
・引越し代金の高額捻出を「確約」する
「引越し代金を○○万円保証します」など、高額な費用を確約する謳い文句は危険です。
引越し費用の捻出は債権者(金融機関)との交渉次第であり、事前に「確約」することはできません。
・競売情報を元に強引な訪問や電話営業を行う
競売情報が公開された後に、自宅に突然訪問したり、強引な電話営業を仕掛けたりする業者は、無免許の悪質な業者が紛れている可能性があるため、関わらないようにしましょう。
・メリットばかりを強調し、即決を迫る
デメリットやリスクを説明せず、「当社に任せれば絶対に大丈夫」と即決を迫る業者は、依頼者の利益より自社の利益を優先している可能性があります。
不安点を解消するまで、決して契約してはいけません。
任意売却の相談から引渡しまでの流れ
信頼できる不動産会社を選び、依頼した後、実際に任意売却はどのような流れで進むのでしょうか。
全体の流れを事前に把握しておくことで、不安なく手続きを進めることができます。
任意売却は、一般的に下記のような流れで進められます。

相談から引渡しの完了まで、一般的には4〜7ヵ月程度かかります。
買い手がすぐに見つかれば早く完了しますが、なかなか見つからない場合は売却活動が長引いてしまうため、余裕をもって計画することが大切です。
買い手が見つからない場合は最終的に競売にかけられてしまう可能性もあるため、「相談はなるべく早く」という原則をあらためて意識しておきましょう。
任意売却をスムーズに進めるための3つのポイント

信頼できる不動産会社を選んだ後も、任意売却を成功させるには、依頼者側での積極的な準備と協力が不可欠です。
ここでは任意売却で失敗しないためのポイントを3つ紹介します。
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1.初回相談時に書類を準備する |
1.初回相談時に書類を準備する
任意売却はスピードが命です。
初回相談時に必要な書類を揃えておくことで、専門家はあなたの現状を正確に把握し、具体的な解決策を提示しやすくなります。
督促状、ローン残高証明書など、債権者から送られてきた書類一式を漏れなく準備しておきましょう。

2.売却活動には全面的に協力する
売却活動は仲介会社に一任することもできますが、よりスムーズな売却を目指すのであれば全面的に協力することが大切です。
内覧の際は協力的に対応し、外壁の汚れを綺麗にするなど、購入希望者の購入意欲を高められるよう、物件の印象を良くする努力も重要です。
3.連帯保証人がいる場合は早めに同意を得る
任意売却は、連帯保証人の同意がなければ手続きを開始できません。
売却完了後も残債の支払い義務が残るため、時間をかけて丁寧に事情を説明し、競売に比べて任意売却のメリットが大きいことを理解してもらいましょう。
同意交渉に不動産会社のスタッフに同席してもらうのも有効な手段です。
任意売却に関するよくある質問(FAQ)

任意売却という選択肢が見えてきても、実際に手続きを進めるとなると、さまざまな不安が頭をよぎるかもしれません。
ここからは、多くの方が抱えるであろう任意売却に関する疑問点について、具体的にお答えしていきます。
家を売った後、借金(残債)はどうなりますか?
任意売却をしても、売却代金でローン全額を返済できなければ、残った借金(残債)の返済義務は消えません。
しかし、競売と異なり、不動産会社や弁護士を通じて金融機関と無理のない分割返済計画について交渉することが可能です。
現在の収入状況を基に交渉することで、月々の負担を軽減できる可能性が高まります。
引越し費用や当面の生活費はどうすればいいですか?
引越し費用については、任意売却の場合、売却代金の中から債権者(金融機関)との交渉によって一部を捻出してもらえる可能性があります。
しかし、新しい生活を始めるための生活費は自分で準備する必要があります。
住宅ローンの返済を停止している期間を活用し、生活再建に向けた計画を立てることが重要です。
今の家に住み続ける方法はありますか?
愛着のある自宅に住み続けるための選択肢として、主に「リースバック」と「親族間売買」があります。
・リースバック
自宅を第三者に売却し、売却後に賃貸契約を結んで家賃を払いながら住み続ける方法です。
リースバックについてより詳しく知りたい方は、下記の記事をご参考ください。
・親族間売買
親族が住宅ローンを組んで自宅を買い取り、あなたがそのまま住み続ける方法です。
これらの方法は専門的な知識が必要なため、必ず信頼できる不動産会社に相談してください。
まとめ|任意売却は早めの行動と不動産会社選びが重要

本記事では、任意売却の基礎知識から、最も重要な相談先の選び方について解説しました。
住宅ローンの返済問題は、「誰に相談するか」と「いつ行動を起こすか」の2点が解決の鍵を握ります。
あなたが有利な条件で新たなスタートを切るためには、競売の期日を意識し、支払いが厳しくなりそうと感じた瞬間に、まず行動を開始することが大切です。
そして、実績が豊富で、弁護士などと連携し、売却後の生活再建まで親身にサポートしてくれる信頼できる不動産会社を選ぶことで、その後の手続きはスムーズに進みます。
一人で抱え込まず、まずは適切な専門家を選び、早めに相談することから始めましょう。
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