新しく建物を建てた場合には、建物表題登記が必要となります。とはいうものの、建物表題登記とは何か、いまひとつよく分からないという人も多いでしょう。

そこで今回は、建物表題登記とは何か、申請するためにはどのような書類が必要なのか、といったことについて詳しく解説します。

建物表題登記ってどんな登記?

不動産登記のひとつで建物を登記記録に記載させること

です。

不動産登記とは、その不動産がどのようなものであり、誰がその建物を所有しており、誰がその不動産でどのようなことをしたのか、ということを記録しておくものです。つまり、不動産の物的状況を法的に記録しているといえるでしょう。

新しくできた建物は申請しなと登記記録がないため、所有者が法務局に建物表題登記申請する必要があります。また、建物を新築したときだけではなく、登記されていない建物を購入した際にも申請が必要です。

表題登記以外の建物登記

建物表題変更登記
増築した際に申請する
建物滅失登記
建物を建て替えたり取り壊した際に申請する

とがあります。新築したときだけでなく、所有している建物に何か変化があった際にも、登記の申請が必要なのです。

新築・増築・リフォーム・建替えなどの際に申請が必要

所有権移転登記や抵当権設定登記の場合には司法書士に依頼する必要がありますが、不動産登記である建物表題登記は司法書士ではできません。依頼は不動産鑑定士にすることになります。

ただ、建物表題登記自体はそれほど難しいものではないので、自分で申請することも可能です。そのためには、登記簿に記載される情報として

◇建物の構造や床面積
◇新築年月日に関する証拠書類

を集める必要があります。

建物表題登記をしないリスク

建物表題登記は申請義務があるため、申請しないと罰則があります。

申請しないと罰則があります

本来、申請は建築後1カ月以内にしなければなりません。登録を怠った場合には、10万円以下の罰則に処せられる場合もあります。

とはいうものの、この登記は法務局などから催促されることがないため、登記をしないままにする人も多いのが現状です。そうして建物を担保にして融資を受けようとしたり、建物を子供や孫に相続させようとしたりしたときに登記をしていないことに気づき、慌てて申請するケースが多いのです。

しかし、たとえば相続が発生してから慌てて登記をしようとすると、所有権証明書関係を集めるのが難しくなる場合があります。

建築を発注したという事実関係を証する書面を紛失してしまったというケースや、施工業者から引渡し証明書を受けようとしても、施工を依頼した大工が亡くなっていたり会社が倒産していたりしていて証明書が受けられないというケースも多いのです。

仮に施工業者から引渡証明書を交付してもらえなかったとしても表題登記はできますが、その場合にはそれに代わる書類を集めることになるため、手続がより煩雑になります。そうした将来のリスクを考えても、あらかじめ登記をしておいた方がよいでしょう。

登記に必要な手続きの流れ

建物表題登記の手続き

法務局閲覧調査を行う
※新築した建物の敷地上に他の建物の登記がないかどうかを調べるために行うもの

※代々受け継いできた土地であれば必要ない 新たに購入した土地の場合には過去の状態が不明なため必要

※敷地上に他の建物の登記が残っている場合、残っている建物の滅失登記を申請しなければいけない

建物現地調査、事前仮測量を行う
※これにより得られたデータを基に登記申請書類と図面が作成される
これらの申請書類が揃ったら、書類の申請手続きを行う

建物表題登記と共に所有権保存登記や抵当権設定登記を行う場合には、司法書士に依頼することになります。その場合でも、建物表題登記のために用意した書類が必要となるため、まずは土地家屋調査士に依頼する必要があるでしょう。

順番
必要であれば滅失登記を行う

建物表題登記

続いて必要であれば所有登記、担保設定の登記

登記に必要な書類とは?

必要書類を自分で集めることができれば、土地家屋調査士に依頼せずに自分で申請することも可能です。

必要書類を集められたら自身で申請も可能

その際に必要な書類

所有権証明書
登記する建物を自分が所有していることを証明するために必要な書類
所有権証明書を取得するための必要書類
一般的には
◇建築確認通知書
◇工事完了引渡証明書
◇検査済証

これらの書類は建築を依頼したハウスメーカーや工務店に請求すると発行してもらえます。

住所証明書
■建物の所有者全員の住民票のコピー

※所有者が複数になる場合には、全員分の住民票を用意
※もし1つの住民票に所有者全員の名前が記載されているのであれば1枚だけでかまわない
建物図面と各階平面図
■建築確認通知書に記載されたデータを基に作成

ただし、そこに記載されていることが正しいかどうかの現地調査が必要
建物表題登記申請書
建物の住所、種類、構造、床面積、新築年月日等を記載
建物の位置を示した地図と建物の写真
◇地図は手書きのものでもよい
◇Googleマップなどを印刷して印をつけたものでもOK
代理権限証明書
申請者本人が法務局にいけない場合に委任状として必要となる

登記にかかる料金事情

建物表題登記自体には登録免許税はかかりません。そのため、建物表題登記にかかる料金は基本的に土地家屋調査士に依頼した場合に支払う報酬のみです。

登記にかかる料金

土地家屋調査士への報酬は、8~10万円が相場といわれています。価格に値幅があるのは、建物の大きさや数、敷地の土地の地番数によって費用が変わってくるためです。そのため、面積が広く2棟以上あるような建物の場合には、報酬費用が10万円を超えることもあるでしょう。

また、たとえば他人名義の土地を購入し、住宅ローンを利用してそこに新築一戸建てを建てたという場合には、建物表題登記と合わせてその他の登記も必要となります。

◇土地の所有権移転登記
◇建物所有権保存登記
◇抵当権設定登記
◇住宅家屋証明

には、建物表題登記と併せて土地家屋調査士や司法書士に支払う報酬として20~28万円程度はかかるでしょう。その場合には登録免許税として

■土地の所有権移転登記
15万円

■建物所有権保存登記
1万6800円

■抵当権登記
2万円

■住宅家屋証明
1300円

がかかります。そのほか、印紙税が合計で2194円となります。

こうしたことを考えた場合、登記にかかる全体の費用相場として39~47万円程度を見込んでおいたほうがよいでしょう。

建物を建てたら必ず登記を!

建物表題登記は、自分で申請しなければ催促されることはありません。しかし、登記することは建物所有者の義務であり、怠った場合には罰則もあります。

また、融資を受ける際や遺産相続の際に申請しようとしても、書類をなかなか集めることができなかったり、仕事が煩雑になるために土地家屋調査士や司法書士に支払う報酬が割高になってしまったりすることもあります。

将来のリスクを避けるためにも、新築で建物を建てたら必要な書類をきちんと用意して必ず登記申請をしましょう。