特定の商品やサービスを購入・契約したあとに不要になった場合でも、特別な理由がない限り返品や契約の解除を行うことはできません。そのような状況に陥ったとき頼りになるのがクーリングオフです。ここでは、クーリングオフがどのようなものなのか、不動産では適用できるのかについて説明していきます。

消費者保護の「クーリングオフ」ってどんな制度?

クーリングオフ制度とは?

クーリングオフは、契約後であっても一定の期間内であれば消費者が一方的に契約を解除することができる制度です。

クーリングオフできるのは、法律の規定に当てはまる場合や業者側がクーリングオフの規定を設けている場合です。たとえ、法律の規定外であっても業者側に規定があり、消費者の要望に応じてくれれば適用できる可能性が高くなります。しかし、すべての契約に対して適用になるわけではないので注意が必要です。

認められるのは、悪徳業者による強引な契約の合意や訪問販売といったセールス関係の契約が大半です。そのため、店舗や広告を見て自ら購入した物に関してはクーリングオフできません。ほかにも、通信販売・自動車・3000円未満の現金取引・一定の期間を過ぎた場合などは適用外となります。

クーリングオフが適用になれば、消費者に違約金や損害賠償の請求が来ることはないですし、払ったお金も返還されます。契約後に消費者が何らかの利益を得ていたとしても、業者側は利益の返還を要求することはできません。 商品を受け取っていた場合の返送費用も業者持ちです。クーリングオフは、消費者保護を目的とした制度なので消費者に負担がかかることは一切ありません。  

買うのをやめたいときクーリングオフはどうやったらできる?

クーリングオフは書面で行うのが基本ですが、口頭やハガキを使っても問題はありません。しかし、口頭では証拠が残らないですし、ハガキでは証拠力が不十分です。確実に行うためにも、手紙を使う内容証明郵便が適切です。

内容証明郵便を用いると郵便局がクーリングオフの意思表示を公的に証明してくれるので安全です。手紙の内容と差出日付を証明することができれば、消費者が一定の期間内にクーリングオフを申請した証拠を残せます。悪徳業者や金額が大きい契約などでは、確かな証拠がないと手続きに応じないケースもあるためクーリングオフでは証拠を残せるかどうかがとても重要なのです。

内容証明郵便はどこの郵便局でも出せるわけではなく、本局の郵便局でのみ扱われます。時間がなくて出しにいけないという場合には、インターネットで書面作成・発送ができる電子内容証明郵便を利用するのが良いでしょう。クーリングオフは適用となる期間内に意思表示を示すことが重要なので、できるだけ早く書類を出すようにしましょう。  

クーリングオフは不動産売買にも適用できる?

不動産売買では一定の条件が揃っていればクーリングオフが適用となるので、やむを得ない事情で不動産売買契約の破棄が必要となったときには利用すると便利です。不動産売買のクーリングオフは、宅地や建物の売買契約が第一条件です。

建物の敷地として契約していれば、山や農地、駐車場であっても宅地とみなされるので問題はありません。契約期間は、売主側のクーリングオフの通知を受けてから8日間です。8日以内に手続きをしなければ適用対象外となります。基本的に、売主側が消費者に対してクーリングオフを通知する義務はありません。

しかし、通知をしてから8日を過ぎないと消費者がいつでも契約破棄できる状態のままになってしまうので、売主側はできるだけ早く権利を排除できるように確実に告知を行います。契約時に説明がなかったという場合はクーリングオフ適用外ということになりますが、気になる場合は直接尋ねてみても問題はありません。 適用となる消費者には通知と一緒に制度の内容とクーリングオフの方法を文書で説明されるので、制度についてまったく知らないという場合でも安心です。

不動産売買のクーリングオフでは期間以外にも、契約した不動産の引き渡し前であることや購入代金をすべて支払っていないことも適用条件に含まれます。ひとつ該当するだけなら大丈夫ですが、どちらにも当てはまる場合は適用されないので注意しましょう。  

適用できるかは売買の相手と場所が超重要

不動産売買のクーリングオフは売買する相手と契約場所がもっとも重要です。

まず、売買する相手は、売主が宅建業者であることと買主が宅建業者でないことが必須です。どちらにも当てはまっている場合のみクーリングオフできますが、売主が個人であるときにはクーリングオフは適用されないですし、宅建業者を仲介していても適用外となるので注意が必要です。

次に、契約場所ですが、不動産売買の申し込み・契約締結が宅建業者の事務所以外である必要があります。不動産会社の事務所で契約していればクーリングオフの適用外です。事務所で申し込みはしたけれど契約締結は事務所以外でしたという場合でもクーリングオフを受けることはできないので注意しましょう。 また、自宅や勤務先で契約を行っている場合は、申し出た人がどちらであるかによって適用可否が異なります。

買主が自ら申し出た場合は適用されず、売主の申し出では適用されます。喫茶店やホテルなどでは、買主が申し出た場合であっても事務所以外であるためクーリングオフは可能です。つまり、不動産売買のクーリングオフを利用するには、売主が宅建業者で事務所以外の場所で契約をしている必要があります。

そこからさらに、クーリングオフ適用期間や購入代金の支払いなど、そのほかの条件も加わってくることを覚えおきましょう。万が一、クーリングオフが適用されない場合であっても、手付金の放棄やローンの不成立などでも契約解除になる可能性があります。
また、売主の営業方法に問題があったり脅迫などがあったりした場合でも消費者契約法が適用されるので、消費者センターや自治体に相談してみるのが良いでしょう。  

売主側も知っておきたいクーリングオフ

売主が宅建業者であれば宅地・建物の売買に詳しいので、消費者からクーリングオフの申し出があっても焦ることはないでしょう。しかし、売主が個人であった場合は、制度を詳しく知っておかないと消費者側の不正利用に気付くことができない可能性があるので注意しなければいけません。

消費者がクーリングオフ制度について把握していた場合、相手が個人で適用外と知っていても手続きしてくることがあるのです。売主が宅建業者である場合にのみ適用されることをあらかじめ知っておけば、消費者が契約破棄を伝えてきても適切な対処をすることができます。
不動産売買は大きな取引となるので、双方がスムーズに契約を進められる状況を準備しておくことは大切です。

その一歩として、クーリングオフ適用条件についてきちんと把握しておくと良いでしょう。より効率よく行うために不動産の利用を検討してみるのもひとつの方法です。売主が個人であれば宅建業者が介入してもクーリングオフの適用外なので問題はありません。
さらに、不動産を利用すればより多くの人に見てもらうことができますし、トラブルの対処も自分ひとりで行わずに済みます。    

まとめ

不動産売買は一般的なクーリングオフとは違い、期間だけではなく売買の相手と契約を行った場所も重要になってきます。クーリングオフしたいと思っても、契約したあとではどうすることもできない場合が多いのです。お互いに無用なトラブルや不利益を生み出さないためにも、消費者はもちろんのこと個人で売買を行っている人は理解しておく必要があるでしょう。

不動産売買を不安なく行えるように、契約をする前にクーリングオフについて正しい知識を身につけておきましょう。