転勤や住み替えなどで住まなくなった持ち家は、できれば上手に活用したいと考えるのが心情です。ただ、具体的にどう活用していくべきなのかわからないという人も多いのではないでしょうか。今回は、住まなくなってしまった持ち家を上手に活用するための方法について解説します。

購入時想定していなかったケースも!人生にはいろいろなことがある

マイホームを手に入れるときは、その家にずっと住むことを考えて購入するものです。その家に住まなくなるかもしれないということを、あらかじめ想定して購入するという人はあまりいないのではないでしょうか。ただ、人生のなかでは予測がつかないことが起こるものです。一生そこに住むつもりで家を購入しても、さまざまな事情から住み替えを決断しなければいけないこともあるのです。

たとえば、住宅を購入したあとに転勤が決まったとか、離婚や失職で生活が一変してしまったなど、購入時には想定していなかったことに見舞われることも決して珍しいことではありません。もちろん、基本的には、持ち家はずっと住むことを考えて購入するものです。ただ、やはりあらゆる事態を想定しておくことは、それ自体が将来にとっての糧になることもあります。

もし、これから住宅の購入を考えているならいつかそれを、売却したり賃貸に出したりするかもしれないことを想定しておきましょう。それだけで、実際にそうした事情に見舞われたとき冷静かつ迅速に対応することができるようになります。

住まないことが確定しているときは売却

それでは、住まなくなった持ち家は、具体的にどのように活用するべきなのかについて見ていくことにしましょう。たとえば、その家にもう住まないことが確定しているなら、まずは売却を優先的に検討してみると良いでしょう。売却という手段は、住まなくなった持ち家を最も手っ取り早く、かつ楽に処分する手段です。

住まなくなった持ち家を売却することは、第一に保有し続けることで発生する維持費を削除することができる点で大きなメリットがあると言えます。住宅を保有していれば、まず固定資産税を払い続けなければなりません。また、メンテナンスを行う費用も発生することになるでしょう。

持ち家を売却すれば、こうした維持費の支払いから解放されることになります。建物を維持する必要もなくなるので、精神的に楽な気持ちにもなれるかもしれません。

また、売却という手段は、残債があるときに有効な手段にもなります。売却代金を残債に充てたり、住み替え先の購入資金にしたりするなど、これから先の計画も立てやすくなります。

いつか帰ってくるかもしれないときは賃貸

一方、いつかまた帰ってくるかもしれないときは、売却をしてしまうと取り返しがつかなくなってしまいます。また、売却は不動産という大きな資産を失うことにもなり、売却代金を得られる一方で損失も決して小さくはありません。そのため、帰ってくる可能性がまだあるなら、売却だけでなく別の方法も積極的に探ってみてください。

賃貸

いつか帰ってくるかもしれない場合は売却しない

賃貸に出すという方法は、帰ってくる可能性があるとき、将来的にも安心な持ち家の活用方法です。賃貸の場合は、住宅の貸し出しをするだけで、所有権そのものは建物のオーナーに属することになります。そのため、いつか帰ってくることになったら、再びその家に住みはじめることもできるというわけです。

また、家賃収入が得られるというのも賃貸の大きなメリットのひとつでしょう。もちろん、固定資産税の支払いや、メンテナンスにかかる経費など、建物を維持するための費用はしっかりと計算しておかなければなりません。ただ、将来帰ってくるかもしれないなら、賃貸は売却によって手放してしまうよりも堅実な方法だと言えます。

転勤族には心強い味方のリロケーション

売却や賃貸は、確かに住まなくなった持ち家を有効に活用する手段ですが、難しいのは一時的な転勤をするというようなケースです。いわゆる転勤族の場合だと、売却をするのはまず難しいでしょうし、また賃貸に出したとしても、それでは帰りたいときにすぐに帰ってくることもできなくなってしまいます。

転勤族の人で多いのが、住まなくなった家をそのままに空き家として放置しておくということです。ただ、それでは住宅のメンテナンスもできませんし、家を一定期間空けることになるので防犯の面でも心配です。転勤などで家を一時的に空けるとき、売却はできないけど空き家にもしたくないという人は、リロケーションという手段を考えてみてはいかかでしょうか。

リロケーションは転勤族にとって心強い味方になってくれます。普通の賃貸とは違って、家を一定期間に限定して貸し出すことができ、急な転勤や急な帰還にも柔軟に対応することができる持ち家の活用方法なのです。

家賃収入だけじゃない!物件を管理してもらえるメリット

一般的な賃貸借契約とは違って、リロケーションは定期借家契約によって人に家を貸し出します。
普通の賃貸借契約は借主により強い権利があります。貸している側が退去をお願いしても、借りている側がそれを拒否すれば、貸主は借主に対して退去を強制することができません。

一方、リロケーションは定期借家契約で借主と契約を結びます。定期借家契約では、貸主が退去をお願いすれば、借主はそれに応じなければいけないようになっています。つまり、リロケーションでは、そもそも期間を限定して貸し出すため貸主の都合に応じた物件の貸し出しがよりしやすくなっているということです。

もちろん、契約の形は違っても貸し出しているという意味では普通の賃貸と何ら変わりません。そのため、家賃収入も普通に入ってきます。しかも、リロケーションの良いところはただ家賃収入を得られるだけでなく、貸している間は物件の管理をしてもらえるという点です。

空き家のまま放置すれば、家の管理も放置されることになります。リロケーションで人に貸し出すことで、自分で家を管理しなくても、入居者が生活における管理をしてくれます。そのため、転勤などで遠くにいる場合でも、持ち家の状態を維持しやすくなるというわけです。

リロケーションのデメリットも確認しておこう

もちろんいいことばかりではありません

リロケーションのデメリット

一時的に家を空ける人にとって、さまざまなメリットが享受できるリロケーションですが、もちろんデメリットもあるのでしっかり確認しておいてください。

まず、一般的な賃貸と比べてリロケーションは家賃相場が低い傾向にあります。リロケーションは定期借家として期間限定で貸し出す賃貸方式であるため、入居者にとっては住み続けることができないというデメリットがあります。そのため、家賃をあらかじめ低めに設定して入居者を応募することが多いのです。

普通の賃貸と比べると、だいたい1割から3割ほどは低めの家賃設定になるでしょう。

それから、入居者が住宅の管理を代わりにやってくれることは建物のオーナーとしてメリットでもある一方で、入居者が必ずしも家をキレイに使ってくれるとは限りません。借主は建物の所有者ではないので、持ち主に比べると管理の意識は低い傾向にあります。

誰かが住んでいれば、建物の風通しは良くなっても住むことによる傷や汚れはどうしても増えるものです。リロケーションは、一時的に家を空ける人にとっては便利な活用法ですが、こうしたデメリットもあることを良く知ったうえで運用するようにしましょう。

リロケーションを利用する方法

リロケーションを利用するためには、まずリロケーション会社を探すことから始める必要があります。リロケーションは、仲介や管理を本業にしている不動産会社がやっていることが多いので、まずは不動産会社にリロケーションについて相談をしてみてください。

リロケーションも賃貸と同じように家を貸し出すことになるので、やはり入居者を募ることが一番の課題になります。そのため、相談する際はできるだけ時間に余裕があったほうが良いです。家を空ける数カ月くらい前から、リロケーションをするための準備をしておきましょう。

不動産会社に相談すると、家賃や敷金・礼金の設定・それから契約期間などを決めていくことになります。細かいところを詰めて双方が合意すれば、不動産会社とのあいだで業務委託契約を交わすことになります。そうなれば、あとの入居者集めなどは不動産会社がやってくれるので、入居者が決まれば物件の持ち主に家賃が支払われるようになるということです。

まとめ

住まなくなった家を活用するためには、できるだけ早く手段を決めるということが大切です。資産である住宅は、株式とは違って、経年によって劣化してしまうことがあります。劣化すれば価値は目減りし、運用するにしても不利な状況になってしまうでしょう。だからこそ、早めの決断が肝心になります。

リロケーションなど、貸主が賃貸しやすい手段も増えています。さまざまな活用方法があるので、経年によって価値が落ちてしまわぬうちに、自分にあった運用の仕方を見つけましょう。