「高度地区」に指定されている地域では、建造物の規模に制限が定められています。そのため、土地の売買を行う際には、買主が制限に見合った建物を予定しているか確認しましょう。この記事では、不動産取引でトラブルを招かないために「高度地区」について解説します。

高度地区の意味は?どうして建造物に制限がかかるのか

高度地区
建造物に高さの制限がかけられている地区のこと

高度地区に指定されている地区では、指定の基準に見合わない建造物が認められません。そのため、「規準に違反する建造物を意図的に建てる」のは法令違反となりますし、そのような買主だとわかっていて高度地区の土地を売却するのも罪に問われます。

不動産売買の際は、物件が高度地区に該当しているかどうかを確かめてから取引を行うのが無難でしょう。

高度地区には「最高限度高度地区」と「最低限度高度地区」の2種類があります。

高くても低くてもダメ

最高限度高度地区
■建物の高さに制限がかけられている地区
「高い建物を建てることで地区内の住民の日照権が奪われてしまう」
「高い建物があると道路などの運営に支障が出る」
などの理由があるときその地域は最高限度高度地区に指定される

非常に重要な自然・観光施設などがあり、高い建物があると著しく景観が乱されてしまうケースでも最高限度高度地区は適用される
最低限度高度地区
■建物の低さに制限がかけられている地区
近隣に工場や工業地帯があり、建物に一定の高さがなければ弊害の出る地域などに適用される

建築基準法第58条「高度地区内においては、建築物の高さは、高度地区に関する都市計画において定められた内容に適合するものでなければならない」としている

つまり、高度地区を認める基準は法律によって明確に制定されているわけではない

※高度地区を管理している都道府県、自治体の運用用途により、高さや低さの制限は変動する

高度地区にはどんな種類がある?制限のかけ方とは

高度地区は「第1種」などの呼び方に分類されており、内容が差別化されています。具体的には、種別によって制限の厳しさが変わっていくため、高度地区に指定されている土地を売買するなら種別にも気を配りましょう。

ちなみに、種別ごとの内容は地域によって異なります。同じ「第1種高度地区」でも、都道府県が変われば基準もまったく変わるので、必ず地元の基準に照会して高度地区の制限を確認しましょう。

高度制限は景観や日照権の確保などを目的として設定されている

高度地区ではまず「高さ」や「低さ」が制限されます。これは、建物の最高到達点のことであり、建物の一番高い部分が「15メートル」だとすれば「絶対的高さが15メートル」と登録されます。しかし、斜面のある建物においては、各部分の高さも細かく指定されるので制限内容は隅々まで目を通しましょう。

最高高度制限が「15メートル」の地域で、絶対的高さが15メートル未満の建物を建てたとしても、建物の一番低い部分についても細かく指定されているはずです。

制限内容を読み込んでいくと「建物の北部に関しては」など、方角ごとに制限が設けられていることも珍しくありません。なぜなら、高度制限は「景観への影響」「日照権の確保」などを目的として設定されている基準だからです。

高度制限は建物の建築段階から知っておかなければいけない数値です。もしも、高度制限を知らないまま建設工事に着手してしまうと、莫大な費用が無駄になるでしょう。そのため、売主は買主に対して高度制限についての説明を行っておくのが不動産売買におけるルールのひとつです。

高度地区の不動産売買で考えられるトラブルとは

高度地区に該当する土地を取引するとき、もっとも考えられるトラブルは「高度制限の侵害」でしょう。そして、こうしたトラブルの大半が売主の意図しないところで起こる傾向があります。

たとえば、売主が所有している土地について十分な知識がなく、説明を怠ったまま売却したとします。すると、買主は問題がないと思い込んでいるので、高度制限を気にしないまま建物を設計してしまうでしょう。そのため、工事の最中になってクレームが入り、計画を大幅に変更せざるをえなくなるのです。

また、売主が一軒家やビルなどを売却するときも同様の問題は起こりえます。売主は高度地区であることを知らないまま過ごしてきたので、建物が高度制限に基づいて設計されていた事実を知りません。そのうえ、買主が建物をどのように運用するのかも聞いていないとなると、トラブルの確率は高まります。

もしも、買主が自分のものになった建物を増築したり改築したりしてしまうと、法令違反となり罰せられます。しかし、買主からすれば、「契約の際にまったく聞いていなかった」と感じてしまうでしょう。

高度地区について確認を怠った買主にも責任はあります。しかし「高度地区だと知っていれば買わなかった」「売主が意図的に情報を隠していた」と買主が考えると、売主の責任が追及される事態へと発展します。水掛け論の末に裁判沙汰になり賠償責任が認められると、売主は高額の賠償金を買主へと支払わなくてはいけません。

意外に所有している土地の情報を把握している売主は少ないため「高度地区かどうか」は見逃しやすいポイントだと言えます。

高度地区は不動産売買において不利になるのか?

高度地区の土地を手に入れても、一定の高さ、低さを超える建造物は許可されません。

運用に制限がかかるという意味で、高度地区を欲しがらない買主はたくさんいます。また、高度地区は往々にして「工業地帯」「工業専用地帯」など、一般的に人気の少ない地域と重なりがちです。また「高度地区に指定されているからには何か問題があるのではないか」と勘ぐってくる買主もいます。

「一部の買主は高度地区を敬遠する」という傾向は覚えておくといいでしょう。

一部の買主には敬遠されるがニーズに合う買主が買い求めることもある

しかし、必ずしも「高度地区は不動産売買において不利になる」とは言い切れません。

まず、高度地区を問題にする買主は、特殊な条件の物件を求めている層に限られるからです。普通の一軒家を建てるとき、高度制限に引っかかるような設計をしたがる人はごく一部です。

また、家やビルを購入した後で、高度制限に抵触するほどの改築を行おうとする人も少ないでしょう。それほど建物の規模にこだわりがあるなら、そもそも別の物件を購入するはずだからです。

「工業地帯」という条件も決してマイナスにばかり働きません。工業地帯だからこそ価格が下がり、逆に買主が出てくるケースもあります。しかも、工業地帯における汚水や空気などの対策は発達しているうえ、工場で発生した熱を再利用してレジャー施設を建設するなどの取り組みも行われています。

「工業地帯の高度地区」という要素は、場合によると買主にとって魅力的にもなりえるのです。「高度地区は売れない」と決めつけず、長所をアピールして買主を探しましょう。

高度地区を売却するときのコツ!肝心なのは説明責任

高度地区であること自体は、必ずしも不動産取引における弱点とはなりえません。ただし、売主の「説明責任」は果たすようにしましょう。

高度地区を購入してから高度制限に気づくと、多くの買主がクレームを投げかけてきます。たとえ、高度制限に抵触する建物を建てる予定がなかったとしても、売主への不信感を募らせるでしょう。そこで、売主は物件を売りに出した時点で「高度地区」だと明記しておくのがおすすめです。

次に、売主自身も高度地区について必要な知識を学びましょう。なぜなら、買主から高度制限や種別についての質問をされると予想されるからです。

買主からすると「どうして高度制限がかけられているのか」「高度制限は具体的にどうなっているのか」の2点は非常に気にかかるポイントです。なかには、かなり深く追求してくる買主もいます。売主が答えに窮してしまうと、取引が滞ってしまう可能性も出てきます。

自治体に問い合わせたり、契約書を確認したりして高度制限についての予習はしておきましょう。

そして、買主の運用計画についても知っておく必要があります。万が一、買主が高度制限に違反する運用計画を抱いていたとして、問題になってから売主にクレームを入れてくることもありえます。そこで、運用計画を聞いた時点で信用できない買主とは交渉を中断するのもひとつの方法です。

最悪の場合でも、契約書に「売主の責任にはならない」といった旨を記載しておけば、トラブルに巻き込まれずに済みます。買主の問題行動について、売主の責任が問われないような工夫を心がけましょう。

不動産仲介業者で高度地区を取引する不安を解消

高度地区のように、リスクや不安の大きい不動産取引に臨むなら「不動産仲介業者」を利用するのがおすすめです。

不動産仲介業者とは、売主と買主の間に入って不動産取引を進めていく企業です。多くの仲介業者は「成功報酬制」で動いているため、契約期間内に買主が見つからなければ費用はかかりません。特に、不動産売買に慣れていない人は積極的に仲介業者を頼るのが賢明です。

不動産仲介業者を利用すると、売主すらも知らない物件の情報を確認できます。

とえば、「近隣の開発予定」「世間での人気」などを調査してもらえるため、土地の適正価格が判明します。また「高度地区」をはじめとする特殊な条件も仲介業者は押さえているので「買主に説明責任を怠ってしまう」トラブルを防止できるでしょう。

もちろん、仲介業者は高度地区についての知識も十分に備えています。複雑な高度制限についても買主にわかりやすく説明してくれるので売主の負担は軽減します。

 何よりも「宣伝力がある」のが仲介業者ならではのメリットです。

個人で土地を売却するなら、伝手を頼るしかありません。心当たりのある人物に断られてしまうと、なかなか土地は売れなくなるでしょう。しかし、仲介業者は全国にネットワークがあり、条件に合う買主候補をしぼりだしてくれます。

見知らぬ相手でも「信用情報」「経歴」などを仲介業者が分析してくれるため、安心して取引できます。高度地区の売却で頭を抱えているなら、とりあえず不動産仲介業者に相談してみましょう。

しかし、不動産仲介業者を自身で探すのは大変ですし親身に話を聞いてくれるのか不安もあると思います。そこで、不動産売却専門サイト「イエイ」を一度活用されてはいかがでしょうか。自宅に居ながらにして所有不動産の査定価格が比較できるのはもちろんのこと、所有不動産に合う不動産仲介業者を見つけるのに一役買ってくれるでしょう。