住宅を建てるときには法律や条例に基づいたさまざまな制限や制約があります。制限や制約は地域によって異なりますが、その一つが防火地域です。この記事では、防火地域とはどんなエリアなのか、防火地域に建築すると費用にどんな影響があるかについて紹介します。

防火地域や準防火地域って何?

防火地域には防火地域・準防火地域の二種類ありますが、どちらも市街地から火災の危険を防ぐため、建物の構造を規制する地域のことです。防火地域は市街地の中心部で建物の密集度が高く、火災の危険性が高い地域に定められます。

防火地域と準防火地域

店舗が立ち並ぶ繁華街、駅周辺などの人通りや交通量が多い地域などを指定することが一般的です。また、消防車や救急車などが通る幹線道路沿いも指定されます。これは、幹線道路沿いの住宅が火災になり、道路を塞いでしまうことを防ぐためです。そのような事態が起これば、緊急車両が駆けつけられなくなり、さらに火災が広がってしまいます。

防火地域を取り囲むように広がるのが準防火地域です。市街地の中心に近く、建物の密集度が高い場所が指定されます。市街地に近い住宅街などが多いです。

防火地域や準防火地域の制限

鉄筋コンクリート造か耐火性や断熱性の高い材料で覆った鉄骨造であること

防火地域

階数3階以上
あるいはのべ面積が100平方メートルを超える建物を建てる場合
■耐火建築物でなければならない
(火災が起きても倒壊せず、延焼しない建物のこと)
※鉄筋コンクリート造か耐火性や断熱性の高い材料で覆った鉄骨造であることが必要
※木造は採用できない

■外壁の開口部に防火設備を設置する必要がある
(延焼を防ぐため)
※玄関ドアや窓、換気扇などを防火仕様(防火扉や網入りガラスなど)のものにすることが必要
その他の建物を防火地域で建てる場合
火もしくは準耐火建築物でなければならない

■準耐火建築物
主要構造部を耐火建築物に準じた耐火性能にした建築物のこと

■主要構造部
屋根や梁、壁や床、柱や階段を指す
※主要構造部を耐火性の高い材料で覆うことで準耐火建築物になる
※この場合は木造も採用可能

■外壁開口部の防火設備も設置が必要

準防火地域

地上4階以上
あるいはのべ面積が1500平方メートルを超える建物
■耐火建築物でなければならない

■のべ面積が500超~1500平方メートル以下の建物
※耐火もしくは準耐火建築物にする必要がある
地上3階の建築物
■耐火・準耐火建築物あるいは外壁の開口部の構造や面積、主要構造部が法令で定めている基準に適合する構造でなければならない
※敷地の境界線から1m以内に開閉可能な窓はつけられない(防火シャッターなどをつければ可能)など
木造の建物
■延焼のおそれのある外壁や軒裏に対して防火構造が必要

地域がまたがるとどうなる?

建物が防火地域と特に指定がない区域など、複数のエリアにまたがっている場合、防火上の制限が厳しいほうの規制が優先して適用されます。すなわち、防火地域と準防火地域にまたがっていれば防火地域、準防火地域と特に指定がないエリアにまたがっていれば準防火地域の制限が適用されるのです。

制限が緩いエリアである部分に防火壁を作った場合、その壁の外側は本来の制限が緩い地域の制限を受けます。厳しい地域の規制が適用されることはありません。防火壁とは、耐火構造であり自立できる構造の壁です。火災によって周りの壁が焼け落ちても、防火壁が残り、その先の延焼を防いでくれます。

建築費用への影響は?

耐火建築物を建てる場合、一般的な建築とは用いる材料が異なるため、建築費用が割高です。

例えば、玄関ドアは防火仕様のものを選ぶ必要があります。防火対策が必要な位置に窓がある場合、網入りのサッシを選んだり防火シャッターを設置したりすることも必要です。工務店など自分で設備の仕様などを決めていく場合、ドアや窓など個別に防火仕様分の費用が上乗せされている場合が多いです。

ハウスメーカーなど、プランをベースに選んでいく場合、プランの基本価格+防火仕様の費用として計上されていることもあります。

個別に計上されている場合は、どの製品が取り付けられるか明確なので見積もりが分かりやすいのですが、製品を決めるまで総額が算出できないという難点があります。予算内に収まるか心配なときは、工務店におよその目安を確認しておくと安心です。

防火仕様の費用として概算で計上されている場合は、取り付ける製品によって追加の金額が必要になるリスクがあります。例えば、防火仕様として100万円計上されているとしたら、その中には何が含まれるのかを事前に確認しておきましょう。

外壁やサッシなど防火仕様の中で最低限のものを採用する見積もりとなっていた場合、気に入ったドアやサッシにするとオプションとなることもあります。特に3階建て以上の木造住宅を準防火地域に建てる場合は、制限がより厳しいので、防火仕様の費用が思ったよりも高額になるかもしれません。

自治体によっては不燃化促進地域を設けており、その地域に耐火建築物・準耐火建築物を建てると助成金が受け取れる場合もあります。建築助成費用や老朽建築物の除去助成費用、建て替え時の仮住居助成費用などが一般的です。

横浜市を例に挙げると、不燃化推進地域では4分の3,それ以外の補助対象地域では3分の2の割合で最大150万円までかかった費用を助成します。老朽建築物を耐火建築物や準耐火建築物に建て替えれば、除去と建築のどちらの助成も受けることができ、最大300万円まで受け取ることができるのです。

助成金の受け取りには期限などの条件が設けられており、多くの場合工事契約の前に申請書を提出しなければなりません。建築予定の土地が不燃化促進地域であり、自治体に制度がある場合は窓口で相談してみましょう。

防火地域に住宅を建てるには、そうでない地域に建てるのに比べて費用がかかります。ただ、駅の近くなどは防火地域・準防火地域に指定されていることが多いので、生活の利便性を考えると防火地域に建てるというのも選択肢の一つです。

建築費用とその地域の生活環境を考慮して、防火地域に建てるかどうか検討しましょう。

防火地域かを確認する方法

地図情報サイトで防火地域を検索すれば調べられます。市区町村のホームページから確認することも可能です。

確認するには地図情報サイトや市区町村のホームページから

具体的には、インターネットで「○○市(調べたい地域)防火地域」と入力しましょう。その地域の自治体が作成している都市計画図を見ることができます。地域ごとに色分けされているので、自分が住宅を建てようとしている土地が防火地域かどうかひと目で分かります。駅の周辺にある住宅街などは準防火地域に指定されていることが多いので、建てようとしている土地が準防火地域だったというのは珍しいことではありません。

建築費用や採用できる設備や外壁に影響するため、住宅を建てる際には早めに確認しましょう。

エリアを確認して建築を!

防火地域にはさまざまな制限があり、のべ面積が広く階数が多くなるほど制限が厳しくなります。建物の構造や開口部の設備も防火仕様のものである必要があるため、建築費用が割高です。ただ、それだけ厳しい制限をクリアした住宅しか建っていない地域というのは、火災に強い地域ともいえます。

建築費用だけにとらわれることなく、その土地の利便性や安全性とのバランスを考慮する必要があります。自分が住宅を建てようと思っているエリアが防火地域に当てはまっているかどうかを確認してから、建てるべきかどうかを改めて考えてみましょう。