この記事で分かること

・重要事項説明書の目的や法的根拠について
・重要事項説明書の主要記載項目と影響ポイントについて
・重要事項説明書で必ず確認すべき3つのチェックポイント

「重要事項説明書」と聞いて、あなたはどんなイメージをお持ちですか?

「専門用語だらけで難しそう」「説明を聞いてもよく分からないまま契約してしまいそう…」そんな不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

不動産購入は一大イベント。時間がない中で、複雑な書類を理解するのは至難の業ですよね。

でも、安心してください。この重要事項説明書は、あなたが安心して不動産を購入するための「最強の味方」になるんです。

この記事では、不動産の購入を検討している方の目線に立ち、重要事項説明書の「何が書かれているのか」「何に注意すればいいのか」といった悩みを解決できるよう、分かりやすく丁寧に解説していきます。

この記事を読み終える頃には、重要事項説明書への不安が解消され、自信を持って次のステップに進めるはずです。

この記事の目次

重要事項説明書とは?なぜ契約前に必要なの?

重要事項説明書がなぜ契約前に必要なのかのイメージ画像

不動産の売買契約を結ぶ前に、必ず目にするのが「重要事項説明書」です。

これは、物件の状態や取引条件に関する重要な情報を買主に伝え、理解してもらうための大切な書類です。

不動産会社には、宅地建物取引業法※という法律に基づいて、この重要事項説明書を交付し、内容を説明する義務があります。

【宅地建物取引業法とは】
不動産取引を規制して、不正行為を防止し、購入者の利益の保護を目的とした法律のこと。
不動産広告の規制や報酬に関する規制などが記載されている。

重要事項説明書の目的と法的根拠

重要事項説明書の最大の目的は、買主が契約内容を十分に理解し、納得した上で契約を結べるようにすることです。

万が一、重要事項説明書に記載されていない情報によって買主が損害を被った場合、不動産会社に責任を問えることもあります。

この説明は、宅地建物取引業法第35条で定められた不動産会社の「説明義務」です。

これにより、不動産の知識が少ない買主でも、不利な状況に陥ることなく、安心して取引できるよう守られています。

誰が、いつ、どこで説明してくれるの?

重要事項説明は、宅地建物取引士(宅建士)の資格を持つ人が行わなければなりません。

説明は、通常、売買契約を締結する前日、または当日に、不動産会社のオフィスや物件内で実施されることが多いです。

説明には通常1~2時間程度かかります。
書類は膨大に見えますが、宅建士が要点を絞って説明してくれます。

もし小さなお子さんがいる場合は、事前に不動産会社に相談して、子連れでも落ち着いて説明を聞ける環境を整えてもらうか、ご家族に協力してもらうことを検討しましょう。

説明中に分からないことがあれば、遠慮せずにその場で質問することが大切です。

重要事項説明書の主要記載項目と影響ポイント

重要事項説明書のチェックポイントのイメージ画像

重要事項説明書には、様々な情報が盛り込まれています。

ここでは、特にチェックすべき主要な項目を、分かりやすい言葉で解説していきます。

【物件の基本情報】所在地、地目、面積、私道負担

チェックすべき項目

詳細

所在・地番・地目・面積

・購入する土地や建物の基本的な情報。

・登記簿謄本と相違がないか確認しましょう。

・特に「面積」は重要で、登記簿上の面積(公募面積)と実際の面積(実測面積)が異なる場合もあります。

私道負担

・購入する物件が、他人と共同で利用する私道に接している場合、その私道の所有権や利用に関する取り決めが記載されます。

私道負担があると、将来的に修繕費用の負担が発生したり、再建築の際に通行の許可が必要になったりするケースがあるので注意が必要です。

私道負担がある場合は、その範囲や費用負担の有無、通行・掘削承諾※の有無などを具体的に確認し、将来的な予期せぬ出費がないか確認しましょう。

【通行承諾とは】
他人の所有地を通行する権利を、地権者から承諾してもらうための書面や契約のこと。

【堀削承諾とは】
地中に埋設物(上下水道管・ガス菅・電力ケーブルなど)を設置・改良・点検などを行うために必要な承諾のこと

【私道負担はどのような負担がある?】
私道に面している場合、私道所有者の許可を得て、自分の土地や私道の配管や整備などを行う必要があります。

【法令上の制限】建ぺい率・容積率、都市計画、用途地域

チェックすべき項目

詳細

都市計画法、建築基準法に基づく制限

・建ぺい率(敷地面積に対する建築面積の割合)や容積率(敷地面積に対する延床面積の割合)用途地域(住居系、商業系など、建築できる建物の種類を定めたもの)などが記載されます。

これは、将来、増改築を検討する際や、近隣にどのような建物が建つ可能性があるかを知る上で非常に重要です。

ハザードマップ

災害リスク情報として、洪水、土砂災害、津波などのハザードマップ上での物件の位置が示されます。

「万が一の時に家族の安全は守られる?」という不安があるはずです。ハザードマップを確認し、必要に応じて地域の防災情報も収集しておきましょう。

【都市計画法、建築基準法に基づく制限でチェックすべきポイント】
「この地域は将来どんな風に変わるの?」「子どもの教育環境に影響はないかな?」といった視点で確認しましょう。

例えば、近くに商業施設が建つ可能性があるのか、それとも静かな住環境が維持されるのか、用途地域を確認することで見通しが立ちます。

【ライフライン情報】電気・ガス・水道・排水

チェックすべき項目

詳細

飲用水、電気、ガス、排水の整備状況

これらのインフラがどのように供給・整備されているか、料金体系、私設管の有無などが記載されます。

私設管の場合、将来的に修繕費用が所有者負担になる可能性もあるため、注意が必要です。

【私設管とは?】
太い管の本管は市区町村が所有しているが、私道には市区町村の所有でない本管が埋まっているケースもあり、これを「私設管」と呼ぶ。

【管理状況と費用】管理費・修繕積立金、長期修繕計画

これは、マンション購入において最も重要な項目の一つです。

チェックすべき項目

詳細

管理の委託先、管理費、修繕積立金

管理業務を委託している会社、毎月支払う管理費と修繕積立金の額、滞納状況などが記載されます。

管理規約、使用規則

マンションの住人全員が守るべきルールや、ペット飼育、楽器演奏などに関する細則が記載されます。

長期修繕計画

将来の大規模修繕(外壁塗装、屋上防水など)に備えて、いつ、どのような工事を行い、どのくらいの費用がかかるかを計画したものです。

修繕積立金が将来的に値上がりする可能性もここに示唆されます。

マンションの場合は、管理費用や修繕積立金など、購入してからも、色々と費用がかかってしまいます。

「毎月の家計は大丈夫そうか?」「修繕積立金が将来的に上がったらどうしよう」という不安がある方は、長期修繕計画で修繕積立金の値上げが計画されているか、また、積立金が十分に積み立てられているか(積立金の残高と滞納額)は必ず確認してください。

これが不足していると、将来的に一時金徴収や大幅な値上げが発生する可能性があります。

【売買条件と契約関係】手付金、引渡し、瑕疵担保責任

チェックすべき項目

詳細

手付金

契約時に支払う手付金の額や、その性質(解約手付など)が記載されます。

引渡しの時期、移転登記の時期

物件を引き渡される時期や、所有権が移転する時期が記載されます。

契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)

引渡し後に物件の隠れた欠陥(雨漏り、シロアリなど)が見つかった場合の売主の責任が記載されます。

「購入後に不具合が見つかったらどうしよう?」という心配がある方もいるかも知れません。

特に中古物件の場合、この責任の範囲と期間は非常に重要です。

売主が個人か法人かによっても責任の範囲が変わることがあるため、しっかりと確認しましょう。

【その他特記事項】アスベスト調査、土壌汚染、告知事項

チェックすべき項目

詳細

アスベスト調査、耐震診断

マンションにアスベストが使用されているか、耐震診断の有無などが記載されます。

土壌汚染

過去に工場などがあった土地の場合、土壌汚染の調査結果などが記載されることがあります。

告知事項

心理的瑕疵(過去に事件や事故があったなど)や、物理的瑕疵(雨漏り、シロアリなど)で売主が把握している事実があれば記載されます。

 これらの特記事項は、売主が知っている限りのネガティブな情報です。もし記載があれば、具体的にどのような内容なのか、詳細を確認することが非常に重要です。

後悔しないために!必ず確認すべき3つの最重要チェックポイント

重要事項説明書でチェックすべき項目のイメージ画像

多岐にわたる重要事項説明書の内容を全て完璧に理解するのは難しいかもしれません。

ここでは重点的に確認して欲しい3つのポイントをご紹介します。

重要事項説明書で必ず確認すべき3つのポイント
1. 「隠れたリスク」を見抜く(耐震性、修繕履歴、告知事項)
2. 「家計への影響」を把握する(修繕積立金の増加予測、管理組合の健全性)
3. 「家族のライフプラン」に合うか確認する(騒音、学校区、周辺環境の変化)

1. 「隠れたリスク」を見抜くには?(耐震性、修繕履歴、告知事項)

中古の不動産を購入する場合、過去の経緯や現在の状況が非常に重要です。

チェックすべき項目

詳細

耐震性

1981年以前に建築された物件(旧耐震基準)の場合、耐震診断の有無や結果を確認しましょう。

新耐震基準の物件であっても、耐震性への関心は高いはずです。

修繕履歴と計画

これまでの大規模修繕の履歴と、今後の長期修繕計画を細かくチェックしてください。

特に、「修繕が計画通りに行われているか」「修繕積立金が計画に対して不足していないか」は、将来の資産価値や住みやすさに直結します。

告知事項

売主が把握している物件に関するネガティブな情報です。

心理的瑕疵(過去の事件・事故)や物理的瑕疵(雨漏り、水漏れなど)があれば、具体的な内容と、それがご自身の生活にどう影響するかを想像してみてください。

 2. 「家計への影響」を把握する(修繕積立金の増加予測、管理組合の健全性)

マンションの場合は戸建てと異なり、管理費や修繕積立金が毎月発生します。

これらは将来的に増額される可能性があるため、長期的な視点で家計への影響を把握することが大切です。

チェックすべき項目

詳細

修繕積立金の増加予測

長期修繕計画に、将来的な修繕積立金の値上げが明記されている場合があります。

具体的な値上げの時期や金額を確認し、ご家庭のライフプランと照らし合わせて無理がないか検討しましょう。

管理組合の健全性

重要事項説明書には、管理組合の運営状況の一部(滞納額など)が記載されます。

管理組合が機能しているか、財政状況は健全かを確認することで、将来的なトラブルを避けることができます。大規模な滞納がある場合、将来の修繕に影響が出る可能性があります。

 3. 「家族のライフプラン」に合うか確認する(騒音、学校区、周辺環境の変化)

「家族が安心して快適に暮らせるか」は、購入の最重要課題です。

チェックすべき項目

詳細

騒音・近隣トラブル

重要事項説明書に直接記載されることは少ないですが、説明の際に「周辺に嫌悪施設はないか」「過去に騒音トラブルなどはないか」を積極的に質問しましょう。

学校区

お子さんの小学校・中学校の学区は、不動産会社から説明されるか、ご自身で確認しましょう。

将来的な学区の変更なども念頭に置いておくことも大切です。

周辺環境の変化

用途地域や都市計画を確認し、将来的に物件周辺にどのような建物が建つ可能性があるのかを把握しましょう。

家族の生活環境が大きく変わる可能性がないか、確認しておくことで後悔を防げます。

 不動産会社の説明だけで大丈夫?「聞くべき質問リスト」

重要事項説明書で不動産に聞くべき質問リストのイメージ画像

「不動産会社の説明だけで本当に全て理解できるの?」という不安は当然です。

説明を最大限に活用し、疑問を解消するために、積極的に質問することが重要となります。

【具体的な質問例】気になる項目を徹底的に質問しよう!

説明中に、以下の質問例を参考に、疑問に思ったことをその場で質問しましょう。

・「この『私道負担』という項目は、具体的にどういう意味ですか?私たちに何か費用負担が発生する可能性はありますか?」

・「『長期修繕計画』で、将来的に修繕積立金の値上げが予定されているとありますが、何年後にいくらくらい上がる見込みですか?その根拠も教えていただけますか?

・「管理費や修繕積立金の滞納額が記載されていますが、これはどのくらいの期間の滞納ですか?また、管理組合として何か対策はされていますか?

・「『契約不適合責任』について、売主が個人の場合と法人の場合で、責任の範囲や期間に違いはありますか?具体的にどのような不具合が対象になりますか?

・「もしこの物件で『告知事項』がある場合、それはどのような内容ですか?また、それが私たちの生活にどう影響すると考えられますか?」

・「周辺の騒音や近隣トラブルについて、過去に何か問題はありましたか?

・「この物件の耐震性について、何か情報があれば教えていただけますか?

・「駐車場や駐輪場の空き状況はありますか?また、将来的に利用料金が変わる可能性はありますか?

【質問への備え】事前に準備しておくと安心なこと

【事前に準備しておくと安心なこと3つ】
①質問リストの作成
②筆記用具とメモ帳
③録音の許可

①質問リストの作成: 上記の質問例を参考に、事前に自分が特に聞きたいことをメモしておきましょう。

②筆記用具とメモ帳: 説明中に、宅建士の説明内容や、それに対する質問と回答をメモしておくと、後で見返したときに役立ちます。

③録音の許可: 念のため、説明内容を録音しても良いか事前に確認しておくと、聞き漏らしや誤解を防ぐのに役立ちます。
※(無許可の録音はトラブルの元になる可能性があるため、必ず許可を取りましょう。

もし不安なら?第三者機関の活用も検討しよう

不動産会社の説明だけでは不安が残る場合や、より客観的な意見を聞きたい場合は、第三者機関の活用も検討できます。

不動産コンサルティング会社

有料ですが、専門家が重要事項説明書の内容をチェックし、アドバイスをくれます。

弁護士

法律的な側面から、契約内容やリスクについて相談できます。

宅地建物取引業協会

不動産取引に関する相談窓口を設けている場合があります。

もしもの時のために!トラブルを未然に防ぐ心構えと相談先

トラブルを未然に防ぐ相談先のイメージ画像

重要事項説明書をしっかり理解することは、将来のトラブルを未然に防ぐ上で最も効果的な手段です。

しかし、万が一トラブルに巻き込まれてしまった場合の心構えと相談先を知っておくことも大切です。

よくあるトラブル事例とその回避策

「説明と違った!」

説明書に記載されていた内容と、実際の物件や状況が異なっていたというケース。


回避策

説明内容と現物(例えば、境界線や設備)を可能な限りご自身で確認すること。
疑問点は説明時に徹底的に質問し、書面で確認を取ること。

「後から高額な修繕費を請求された」

長期修繕計画や修繕積立金の状況を十分に確認せず、入居後に大規模修繕費用の不足分を一時金で請求されるケース。

回避策

修繕積立金の残高、滞納額、長期修繕計画の内容(特に値上げ計画の有無)を徹底的に確認すること。

「近隣トラブルが発生した」

入居後に騒音や迷惑行為など、近隣住民とのトラブルが発生するケース。


回避策

重要事項説明書に直接記載されない場合が多いですが、不動産会社に過去のトラブルの有無を質問すること。

可能であれば、時間帯を変えて物件周辺の環境を確認したり、管理組合の運営状況について質問したりすること。

契約後にトラブルが起きた場合の対処法と相談先

もし契約後にトラブルが発生してしまった場合は、以下の相談先を検討しましょう。

【まずは不動産会社へ連絡】
説明義務を果たしているか、契約内容に違反がないかなど、まずは取引をした不動産会社に直接問い合わせましょう。

【宅地建物取引業協会】
各都道府県にある宅地建物取引業協会には、不動産取引に関する苦情相談窓口が設置されています。専門家による相談が可能です。

【消費者センター】
各自治体にある消費者センターでも、不動産トラブルに関する相談を受け付けています。

【弁護士】
法律的な解決が必要な場合は、弁護士に相談することをおすすめします。特に契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)に関する問題など、専門的な知識が必要なケースで有効です。

重要事項説明書を味方につけて、安心の不動産購入へ

重要事項説明書を見方につけ安心して不動産を購入するイメージ画像

重要事項説明書は、難しそうに見えても、あなたの未来の住まいを守るための大切な羅針盤です。

この記事で解説した主要項目とチェックポイント、そして不動産会社への質問リストを活用することで、初めて不動産を購入する方でも、安心して手続きを進められるはずです。

次に何をすべきか?

①重要事項説明書を事前に読んでみよう
不動産会社から資料をもらったら、説明を受ける前に一度目を通してみましょう。この記事で解説したポイントを意識しながら読むと、理解度が深まります。

②質問リストを作成しよう
疑問に思ったこと、不安なことを具体的にリストアップし、説明の際に宅建士にぶつけてみましょう。

③必要であれば第三者の意見も
不安が残る場合は、専門家や信頼できる知人にも相談することを検討してください。

不動産の購入は、ご家族にとって大きな一歩です。

重要事項説明書を味方につけて、納得のいく不動産購入を実現してくださいね。
応援しています!