都市計画法で住居の用途地域として指定されている地域は8つあるのですが、その中で最も厳しい規制が課されているのが第1種低層住居専用地域です。
厳しい規制はその地域を守るためのものがほとんどですが、家を買うまたは建てる際にはその規制がデメリットとなってしまう場合もあります。そこで、住宅購入前に知っておくべき第1種低層住居専用地域の規制内容と具体的なメリット、デメリットを紹介していきます。

第1種低層住居専用地域とは?

第1種低層住居専用地域とは、建物の利用目的が混同しないようにとの考えから都市計画法で一定の利用条件が指定されている用途地域の一つです。

用途地域とは、目的の異なる建物が一箇所に集まることで生まれる交通の不便や生産性の低下などを防ぐために、地域ごとにその用途、役割を分割してより暮らしやすい環境を作ろうという施策です。

第1種低層住居専用地域では、主に低層住宅の住環境を良好な状態に保つことを目的としているため、一般住宅のほか事務所兼住宅、規模の小さな店舗や小中学校などの建物しか建てられません。これは商業地域や工業地域など全部で13種ある用途地域の中で最も厳しい規制内容です。

このような規制の強さから第1種低層住居専用地域では、買い物や通院などがしづらいというような生活上での不便が嘆かれるケースもあります。

ですが、第1種低層住居専用地域に指定されている地域は広い敷地と低層の住宅が立ち並ぶ特徴から、閑静な高級住宅街になる傾向があるのです。

第1種低層住居専用地域の制限

住宅地

第1種低層住居専用地域では周辺の住宅と調和するようにとの考えから、建物の高さは10m(一部で12mまで可)に制限されています。当然、高層マンションなどは建てられず、集合住宅などは3階建くらいまでの高さしかありません。

また、建物の高さに関しては斜線制限という規制も存在しますし、日照を確保するための制限といったものまであります。

斜線制限とは、対象となる土地の周囲に存在している隣地や道路、水路のほか河川や公園というような場所から架空の斜線を発生させる制限のことです。対象地域の土地に建物を建設する場合には高さが架空の斜線を超えないように配慮しなければいけません。
よく道路側の壁が三角に切り取られたような形をしているマンションやビルがありますが、それらは斜線制限に抵触しないギリギリの範囲内で可能な限り建物の高さと容積を確保しようと工夫して作られた可能性が高いです。

また、斜線制限には北側の日照を確保するための「北側斜線制限」というものもあります。
第1種低層住居専用地域を含む低層住宅専用地では、真北に位置する敷地境界線上5mの高さから、1mにつき1.25m上がる斜線の内側に建物を収める必要があるなど、建築時には日照の確保も意識しなければいけないのです。

ほかにも、第1種低層住居専用地域では一定の街並みを維持するために建ぺい率は30~60%の範囲内、容積率は50~200%の範囲内で収める必要があるほか、敷地の境界から建物の外壁までの距離を1m(一部で1.5m)離さなければいけない「外壁後退距離制限」も設けれられています。

こうした制限がある第1種低層住居専用地域に建てることの可能な建物は、戸建や共同の住宅をはじめ、下宿や寄宿舎、図書館、幼稚園、小学校から高校までの教育機関、公衆浴場、老人ホームなどに限られるのです。

第1種低層住居専用地域のメリット

広々とした住宅地

多くの規制が掛けられている第1種低層住居専用地域ですが、こうした規制のおかげで生まれるメリットがあります。

まず1つめが、高層のマンションやビルがないため日当たりが良いことです。
一般的に戸建住宅の隣にマンションなどが建ってしまうと日当たりが悪くなり、住民同士でトラブルが発生してしまうケースがあります。
しかし、第1種低層住居専用地域では基本的に高層の建物が存在しないうえ、一定の日当たりを確保しなければいけないという制限も課せられているので、隣接する建物が影になってしまって家の中が暗いというようなご近所トラブルに巡り合う可能性は極めて低いと言えるでしょう。

2つめのメリットは敷地が広いということです。
都会を中心に住宅が密集している状態を目にする機会は多いですが、第1種低層住居専用地域に指定されている地域はたとえ都会のど真ん中であっても、建ぺい率や外壁後退距離の制限がなされるので建物同士が密着しない環境を作り出すことができます。そのため、このような地域では住宅の敷地に比較的ゆったりとしたスペースを確保することが可能になるので、圧迫感の少ない環境下で暮らせるのです。

3つめのメリットは、土地の価格が安定的だということです。
土地の価格が下落する要因として周辺環境の変化があげられますが、第1種低層住居専用地域では景観を乱すような建物が建築される心配がないので土地の価値が保たれやすく、資産として将来的に家を売却しようと考えている場合でも安心感があります。

第1種低層住居専用地域のデメリット

規制のおかげで生まれるメリットがある一方で、第1種低層住居専用地域におけるデメリットにも規制が絡んできます。

まず見逃せないのが、30~60%の間で制限が課せられる建ぺい率と50~200%の範囲内で収めなければいけない容積率の規制。

この2つの規制があるため、土地の広さに対して建物の大きさが小規模になってしまう場合があります。そのため、住宅にある程度の広さを求めようとした際には、必然的に大きな土地を準備しなければなりません。すると、土地を購入する費用がかさみトータルでの出費が多くなってしまう可能性があるのです。

さらに、大きな建物が建てられないという特性から第1種低層住居専用地域では、大型の商業施設や病院などがありません。もちろん、規制に対応した店舗で営業をしているお店や病院もあるでしょうが、利便性の観点からすると決して便利とは言い難いのが現実です。

住むのにおすすめな人・不向きな人

第1種低層住居専用地域のメリットとデメリットを考慮すると、この地で上手く暮らせるであろう人と、そうではない人がいるということが可能性として浮かび上がってきます。

まず、規制の多い第1種低層住居専用地域に適しているのは、質の良い住環境の中でゆったりと暮らしたい人、住宅は将来的に売却したいと考えている人、買い物などの利便性には特にこだわらない人などと言えるのではないでしょうか。

逆に、第1種低層住居専用地域での暮らしが向いていない可能性があるのは、大きな家を建てて住みたい人や自分で商売をするために一定以上の広さがある店舗、事務所を建てたい人、買い物には利便性が欠かせないと感じている人などです。

現地の環境を確認してみよう

何かと規制のある第1種低層住居専用地域でも、小規模であれば店舗の建設も可能ですし、その地に根ざしている商店などもあるため買い物で求められる利便性の問題もクリアできるでしょう。また、近所ではないにしろ大型の商業施設や病院などは隣接した地域にある場合もあります。確かに暮らしやすさがある一方で利便性に欠けるという第1種低層住居専用地域が持っているデメリットは否定できませんし、人によっては許容することのできないほど大きな欠点と言えるでしょう。

しかし、最も大切なことは実際にその地域を見てどのような環境なのかを自分で把握することです。

「住めば都」という言葉があるように、人づてに聞いた話だけではすべてのメリット、デメリットは理解できないでしょうし、実際に足を運んでみないと分からない意外な魅力があるかも知れません。ですので、良いこと悪いことに関わらず何か気になる点があるのであれば、自分の足で第1種低層住居専用地域を訪れてみてはいかかでしょうか。