不動産を売却するとき、建物に設置しているエアコンの取扱いはどのようにすべきなのか迷うことがあるでしょう。

エアコンを売却対象に含めるのかどうかは、売主の判断で決定することができます。最も良い決定方法は、買主との話し合いによって決めることです。エアコンがついていれば誰もが喜ぶとは限らないため、買主の要望に応じて柔軟に対応する姿勢が必要です。

ここでは不動産を売却する際のエアコンの取り扱いや対応方法について説明します。

エアコンは不動産の一部なのか

不動産売却の際、建物に設置されているエアコンは不動産に含まれるのでしょうか。民法第86条1項は不動産を「土地及びその定着物」と定めており、2項でそれ以外の物はすべて「動産」であるとしています。

したがって、エアコンが「土地及びその定着物」に該当するのであれば不動産に含まれる売却対象となり、該当しないのであれば売却対象にはならない動産ということになります。

土地の定着物とは

エアコンは不動産の一部?

土地の「定着物」というのは、建物や樹木・未分離の果実や移動困難な庭石などを指します。

エアコンは建物に付いているものの、比較的容易に建物から取り外し可能なものであるため建物の一部とは言えません。部屋の中にあるさまざまな家電製品や家具と同様に動産として扱われるのです。

したがって、不動産を売却する際にエアコンを売却対象に含めないとしても、不完全な不動産を売却したとされることはありません。

たとえば、マンションであれば売却対象となるのは専有部分と呼ばれる居室と、廊下やエレベーターなどの共有部分、敷地に対する権利などです。また、一戸建てを土地建物ともに売却する場合は、土地及び建物、庭石や門柱などが売却対象になります。また、ユニットバスやトイレ、キッチンなどの設備も建物の一部分として売却対象となります。

したがって、不動産を売却するという場合、エアコンは当然には売却対象には含まれません。実際、売却にあたって不動産会社が価格査定をする際にも、エアコンを査定の対象にすることは基本的にないのです。

マンション売却時にエアコンは残してもいいのか?

売主の判断で決定することが可能

エアコンが売却対象に含まれないとしても、建物と一緒に売ることができないというわけではありません。不動産売買だからといって、ほかの動産を一緒に売ることが禁止されるわけではないのです。

エアコンを売却対象に含めるのかどうかは、売主の判断で決定することができます。

売主が取り外したエアコンを新居に移転して使いたいと考えている場合は売却対象から外しておけばよく、新居では不要だと考えるのであれば残しておいて売却対象に含めることができます。あるいは、買主に引き渡す前にエアコンを撤去して処分することにすることも可能です。

ただ、買主が新しいエアコンを設置したいと考えているような場合、売却対象にエアコンが含まれていると、買主は無駄なものを買わされると感じます。エアコンがついていれば誰もが喜ぶとは限らないため、エアコンを売却対象に含めるのかどうかは慎重に判断する必要があります。

最も良い決定方法は、買主との話し合いによってエアコンを売却対象に含めるかどうかを決めることです。

購入希望者がエアコンの撤去を望んでいる場合は売主が撤去費用を負担することになりますが、撤去をしてあげれば購入する可能性は高まるでしょう。また、エアコンを残していきたい場合に、買主もこれを望むのであればお互いにとって良い合意になります。

エアコンの取扱いは買主との話し合い

エアコンをめぐる売主と買主の事情

エアコンを外して新居に設置し直そうと考えているのでない限り、売主にとっては買主がエアコンも一緒に買い取ってくれると都合が良いでしょう。エアコンを撤去するにも工事費用や自治体の処分費用がかかるため、買主が引き続き利用してくれれば費用の節約になるからです。

しかし、買主としては自分で新たにエアコンを設置したいと考えている場合もあります。中古のエアコンは内部が汚れていて臭いがする場合もあり、他人が使ってきたエアコンをそのまま利用することに抵抗を感じる人もいるからです。また、家電については好みの問題もあります。

ただ、一方でエアコンが付いていればありがたいと考える買主がいるのも事実です。特に部屋数が多い物件や、一部屋のサイズが大きい物件の場合は、新たにエアコンを設置するには相当な費用がかかる場合もあります。

不動産購入という大きな買い物をする買主からすればこれらの費用を節約したいと考える場合もあるでしょう。特に、設置されているエアコンの作動状態が良好で清潔に保たれているのであれば、そのまま使いたいと考える買主も少なくないはずです。

したがって、エアコンを残していきたい売主と、エアコンをそのまま使いたいという買主が合致すればエアコンを売却対象に含める合意をすることができます。買主がエアコンを引き継ぐことに合意しても、売主の負担でエアコンの清掃をプロに依頼することを条件にする場合もあります。

ただ、不動産の売買価格からすればエアコンは小さな問題であることがほとんどですので、エアコンの有無で売却価格が大きく左右されることはありません。

買主の要望に応じて柔軟に対応する姿勢が必要と言えます。

エアコンを売買対象に含める場合の対応方法

エアコンを含めて不動産を売却する際には、売買契約時に売却対象になっていることを明示する必要があります。具体的には「付帯設備表」と呼ばれる書類を作成し、売買契約書の付属書類として買主に交付するのです。

付帯設備表とは

エアコンを売買対象に含めるなら付帯設備表を作成

付帯設備表は、物件に付帯している設備にどのようなものがあるのか、また設備の機能や作動状況を買主に説明する書類です。

この付帯設備表に記入するのは買主に引き渡す時点での設備の状態です。売買契約時にエアコンが存在する設備であっても撤去して引き渡すのであれば、付帯設備表には「なし」または「撤去」と記入します。反対に売却対象に含めるのであれば「あり」と記入します。もし作動状況に不具合がある場合には、その内容も記入して告知しなければなりません。

設備の状況をそのまま記載しよう

この付帯設備表の内容は売買契約の内容の一部になるため、不具合のない設備があると記入されていたにもかかわらず、あとでうまく作動しないものがあると買主とトラブルになってしまいます。したがって、付帯設備表には設備の状況をありのまま正直に記載しておきましょう。

エアコンを売却する設備に含めるのであれば、念のため実際に作動させてみて動作不良がないかどうかをきちんと確認しておくことが必要です。

現状渡しとは

現状渡しとは取引する物件についてリフォームや補修をせずに今の状態のまま買主に引き渡すことを指します。

売主にとっては引渡しのために修繕をしなくていいので費用をかけずに売却することができる点がメリットです。

ただし現状渡しといっても契約不適合責任が免責になるわけではありません。
売買契約書には引渡しが現状渡しであることに加えて、契約不適合責任の期間や特約が記載されます。売主は物件に不具合があれば売買契約書や告知書、付帯設備表にきちんと明記しておくことが重要です。

また買主にとっては見たままの状態で購入することができる点が現状渡しのメリットです。あまりきれいでない場合には安く購入できることがあるので、気になる点があれば自由にリフォームすることも可能です。

しかし設備の不具合が見つかれば、売主に修繕を依頼するなど手間がかかる場合があるので、売主に物件の状態をしっかり確認しておくことが重要です。

エアコンが故障した場合の責任は?

万が一引渡し後にエアコンが故障していることが発覚した場合、どのように対応すればよいか解説していきます。

問題になるのは引き渡し後のエアコントラブル

売買契約書・付帯設備表を確認

全国の不動産仲介業者の多くが加入している不動産流通経営協会(FRK)では不動産売買契約書のひな型を公開しており、その第14条には退去時の設備の引渡しについて、下記のように記されています。

第14条 売主は、買主に対し、別紙「設備表」中「設備の有無」欄に「有」とした各設備を引渡します。

つづいて同条第2項、第3項には、次のように記されています。

第2項  売主は、買主に対し、前項により引渡す設備のうち、「故障・不具合」欄に「無」とした「主要設備」にかぎり、使用可能な状態で引渡します。
第3項  売主は、買主に対し、設備について契約不適合責任を負いません。ただし、前項での「設備表」に「故障・不具合」欄に「無」とした「主要設備」については、売主は、買主に対し、引渡完了日から7日以内に通知を受けた故障・不具合にかぎり、修補する責任を負います。なお、修補の範囲等は、別表(修補範囲等)中「設備の修補範囲等」の記載によります。

「主要設備」とは給湯関係(給湯器、バランス釜)、水回り関係(厨房設備、浴室設備、洗面設備、トイレ設備、洗濯機用防水パン)、空調関係(冷暖房機、床暖房設備、換気扇等)を指します。

つまり、エアコンは「主要設備」と認められるので、付帯設備表の「設備の有無」欄に「有」と記載があり、「故障・不具合」欄に「無」となっていた場合、引渡完了日から7日以内に故障・不具合の通知があれば売主は修補する責任を負う必要があります。

反対に買主は引渡しから7日以内に「付帯設備表」と照らし合わせながら各設備に不具合がないか確かめることが重要となります。

冷暖房に関しては引渡しの時期によってはすぐに使わない場合もあるかもしれません。半年後にいざ使おうと思ったときに故障していることが発覚しても修理費用を請求することはできません。

引渡しが終わったらすぐに各設備に不具合がないか確認しましょう。

住宅の設備は契約不適合責任の免責とすることがポイント

中古住宅の売買において、住宅の設備は契約不適合責任の対象外とする(免責する)ことがポイントです。

契約不適合責任とは契約により引渡したものについて品質や種類、数量などが契約内容と異なった場合に売主が買主に対して責任を負うというものです。この契約不適合責任は2020年4月の法改正によって、瑕疵担保責任に代わり内容が変更となっています。不動産売買においては主に「雨漏り」や「シロアリ被害」等で契約内容と異なった場合売主が買主に対して責任を負うという内容です。

しかし中古住宅の売買において水道設備や電気配線等の設備が経年劣化により不具合があることは一般的であり、設備にまで厳密に契約不適合責任を適用させると取引自体がスムーズにいかなくなることが考えられるため住宅の設備は契約不適合責任の対象外とする(免責する)ことがポイントです。

中古住宅の売買では、家電製品はすぐに故障してしまう可能性があります。そこで付帯設備については、売買契約で売主の契約不適合責任を免責する条項を入れることに加えて、エアコンのような主要設備に限り、引渡しから7日以内に故障・不具合の通知があった場合、売主が修補する責任を負う旨の特約があれば買主も安心して売買を行うことができるでしょう。

また契約不適合責任においても、売主が知っていて告げなかった不具合については、免責特約があっても免責できません。売主は売買契約前に設備の不具合等について買主にしっかりと告げることが必要です。

まとめ

エアコンは不動産の一部ではありませんが、売却時に買主に一緒に売り渡すことも可能です。一緒に売却するのか撤去するのかは売主の自由に決められますが、エアコンの取扱いにこだわって優良な買主を逃してしまっては意味がありませんので、買主の要望を聞きながら売買条件を整えていくことが大切です。

また、エアコンを売却対象に加える場合には、壊れやすい家電製品を中古で売り渡すのだということを良く認識しておく必要があります。引き渡した直後にいきなりエアコンが壊れてしまい、買主からクレームが入るということも起こりえるのです。

したがって、エアコンを売却対象に含める場合には、きちんとした付帯設備表を準備し、売買契約書に契約不適合責任の免責条項を入れるなど十分に注意を払うことが大切です。

不動産会社選びが重要

告知書や付帯設備表の内容が不十分の場合、売主が買主から不要な請求を受ける可能性があります。内容をしっかり把握しており、信頼できる不動産会社に依頼しましょう。

不動産に関する知識がなく、どこの不動産会社に依頼すればいいかわからないという方は「一括査定サイト」の利用をオススメします。

一括査定サイトは、フォーム内に物件情報を入力することで複数の不動産会社から売却査定金額を確認することができ、簡単に相場を知ることも可能です。また信頼できる担当者が見つかれば、そのまま不動産会社に仲介を依頼することもできるので、安心して売却活動を進めることができるでしょう。

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