不動産を少しでも高く売るための方法としてオークションがあります。オークションは一般の人には耳慣れないものかもしれませんが、オークション形式での不動産売買は業者には馴染みの深い方法です。ところで、オークションでの不動産売却は業者に限らず個人でも利用することができます。今回は、個人でもできるオークション形式の不動産売却について解説します。

不動産がオークションにかけられるタイミングとは?

オークションには個性が求められる!?

オークションには個性が必要

オークションとは、出品された物の購入希望者を集め、最も高い買値を提示した人がそれを手に入れる売買形式のことです。購入希望者の間で価格の競り合いが行われるため、通常よりも高く売れる売却方法であるとされています。しかし、どんな物でもオークションにかければ高く売れるというわけではありません。

オークションに向いているのは、芸術作品や著名人の私物など、唯一無二の個性を備えた物です。工業製品のようないくらでも複製できる物を出品したところで、期待以上の値がつくということはまずありません。

オークションでは買い手側にも必要以上に出費するリスクがあるので、出品する物には「どうしても欲しい」と思わせる個性が必要なのです。

不動産には個性がある

その点で、立地や間取り、内装などさまざまな要因で価値が変動する不動産には唯一無二の個性があり、オークションに向いた品目であると言えます。実際、ローンを払えずに差し押さえられた不動産などは、債権者によってオークションにかけられることになります。

これは強制競売と呼ばれ、民事執行法にのっとって厳粛に行われます。強制競売には個人も参加できますが、参加者のほとんどは不動産業者です。強制競売に出品された不動産はプロ同士の駆け引きによって、相場よりかなり低い価格で競り落とされることになります。

競り落とす際のリスク

また、強制競売に参加する不動産業者には不動産を競り落とすにあたってさまざまなリスクがあります。

あとから欠陥が見つかる可能性がある

まず、競売の前に不動産を内覧する権利が認められているとはいえ、ほとんど行使することができないのが現状なので、あとで欠陥が見つかった場合は落札した業者が修繕しなければなりません。

明け渡しの交渉をしなければならない

また、落札した不動産を元の所有者が占有していた場合は自身で明け渡しの交渉を行う必要があります。退去の強制執行を申し立てた場合にはその費用も落札者が負担することになります。

強制競売の前に不動産を処分しよう!

これらの理由から、強制競売にかけられた不動産はほとんどの場合、相場より安い価格で引き取られることになります。そこで、債権者によって強制競売にかけられてしまう前に、債務者自身の手で不動産を処分する任意売却という方法があります。

任意売却において債務者は不動産業者に売却を依頼したり、自身でオークションにかけたりすることで強制競売よりも高い価格で不動産を売却できる可能性が出てくるのです。

企業と個人の不動産売却方法の違い

不動産業者へ売却依頼をするデメリット

個人的に不動産業者に売却を依頼するといっても、そこにはさまざまなデメリットがあります。

まず、ほとんどの場合オークションは行われないので、いつ売却できるのかがわかりません。また、不動産業者と専任媒介契約を結んでいた場合は業者が連れてくる買い主の提示価格を一つひとつ吟味していくことになります。

しかし、買い主との相対取引で不動産の価格が決定することになるので、妥当な価格かどうかの見極めは難しいものです。さらに、不動産を買う見込みのある買い主がもっと安い物件との間で悩んでいるような場合は、値下げも検討しなければなりません。

このように、個人で業者に不動産の売却を依頼するにはさまざまな弊害があります。

不適切な価格での取引を避ける

一方、企業が不動産を売却するときのやり方は個人のものとはかなり異なります。

工場跡地などの処分したい不動産があるときは、企業はまず不動産業者と専任媒介契約を結びます。企業は不動産業者にオークションの手はずを整えてもらい、不動産業者への仲介手数料はオークションで落札した人が支払うことになります。

つまり、企業は不動産をオークションにかけることで不適切な価格での取引を避け、さらに業者への手数料も負担せずに済む賢い方法を選んでいるのです。

個人でもできるネットオークション!そのメリット

個人的に不動産を売却する際にはネットオークションがある

個人的に不動産を売却する際にオークションを利用する方法としてネットオークションがあります。ネットオークションはインターネット上で不動産を出品し、定められた期日までに購入希望者に入札をしてもらい、そのなかで最も高い価格を付けた人が落札するというシステムです。

ネットオークションの利用者は増加傾向にあり、需要が高まっていくと考えられています。

素早い取引が可能

ネットオークションを利用するメリットは、スピーディな取引を実現できるという点が挙げられます。

不動産業者に売却を依頼すると、まずチラシなどで宣伝を行い、購入希望者からの連絡を待つ必要があります。しかし、ネットオークションでは入札期限が決められているので、入札されていれば締め切った時点で売却が成立することになります。

宣伝効果が高い

また、ネットオークションには絶大な宣伝効果があります。

売却したい不動産の情報はネットオークションに出品した段階で日本国内だけでなく世界中に知れ渡ります。そのため、海外在住の日本人なども知るところとなり、従来の方法よりも購入する客層がぐっと広がるのです。

不正行為などを防ぐことができる

そして、ネットオークションには透明性の高い公正な取引を期待できるのもメリットです。

ネットオークションでは入札状況がリアルタイムで表示され、世界中の人がそれを目撃しています。そして、不特定多数の人が入札するので、事前談合などの不正行為を心配する必要もありません。ですから、購入希望者が多ければ価格競争の原理が適正に働き、相場を上回る価格で落札されることもネットオークションにおいてはあり得るのです。

ネットオークションのデメリットとは?

オークションのデメリット

高い宣伝効果やスピーディな取引の実現などに強みがあるネットオークションですが、よいところばかりではありません。

信用性にかける

まず、不特定多数の人が関わるインターネットの特性に由来するトラブルとして、信用できない落札者が現れるおそれがあります。不動産に限らずネットオークションを扱っているサイトを利用するには、年齢制限などの条件をクリアしなければなりません。

しかし、どのサイトも条件が厳しいとは言えず、身元が確かではない利用者も少なからず存在します。出品した不動産がそのような利用者によって落札された場合、結局お金が支払われず契約に至らなかったり、物件の状態などで争うことになったりといったトラブルに見舞われるおそれがあるのです。

購入者が現れない

また、購入希望者が1人も現れないというケースも起こり得ます。希望者がいなければ当然不動産を売ることもできませんので、ほかの方法を検討するか、最低落札価格などの条件を見直したうえで再度出品することになります。

しかし、再出品するには時間がかかるのでネットオークションの最大の売りであるスピーディな売買契約という利点は損なわれます。

希望の価格よりも低くなる可能性が高い

また、最低落札価格を下げることで予想よりも安い価格で不動産を手放すことになるおそれも出てきます。ネットオークションを利用する際は、高い宣伝効果や即決性に伴うメリット、デメリットを考慮し、自身の不動産売却に向いた方法かどうかも含めて判断しなければなりません。

ネットオークションに向いている不動産

何が何でも売りたい物件は向いているかも。。。

ネットオークションに向いている不動産としては2つのケースが考えられます。「買い主を見つけるのが難しいと考えられる場合」と、「とにかく早く売りたいと考えている場合」です。

買い主を見つけるのが難しい場合

1つ目の買い主を見つけるのが難しいケースでは、たとえば田舎の古い家屋のように、交通の便も悪く建物自体も古いといったような場合が考えられます。こういった不動産を扱うには、不動産業者に売却を依頼するよりもネットオークションに出品するほうが賢明です。

というのも、ネットオークションに出品した不動産の情報は世界中に発信されるので、特殊な目的で需要の小さい不動産を欲しがる人が見つかる可能性があるからです。

とにかく早く売りたいと考えている場合

2つ目のとにかく早く売りたいというケースにもネットオークションは有効な方法と言えます。

業者に売却を依頼すると、買い主が現れるまでに時間がかかりがちです。しかも、買い主が現れたあとも、さらに高く買ってくれる人が出てくる可能性を検討し、場合によっては売却を延期することもあります。

一方、ネットオークションでは入札期限が設けられているので、買い主さえいればそれ以上延期することはありません。また、複数の買い主によって競りあいが行われるので、より公正な価格で売却することができます。

スピーディに不動産を売却でき、なおかつ業者に買い叩かれるリスクを避けられるネットオークションは、とにかく早く不動産を売りたい人にはうってつけの方法だと言えます。

ネットオークションだけじゃない!疑似オークションとは?

個人的に不動産をオークション形式で売却したいと考えたときは、ネットオークション以外の選択肢として疑似オークションというものがあります。

複数の業者に対して同時に売却依頼できる

疑似オークションとは、複数の不動産業者に同時に不動産の売却を依頼し、一斉に買い主を探しに行ってもらうという方法です。このときに業者と結ぶ契約は一般媒介契約なので、専任媒介契約と違って複数の業者に対して同時に売却を依頼することができます。

疑似オークションでは各業者の連れてくる買い主の提示する価格をそれぞれ比較して誰に売却するか決められます。ですから、結果的にはオークションを行うのと同じように、公正でスピーディな取引が期待できるのです。

疑似オークションをするには、複数の不動産業者と契約する必要がありますが、一つひとつ自分で交渉していくのは困難な作業です。

そこで、個人で疑似オークションをするには不動産の一括査定サイトを利用するのが賢明です。一括査定サイトで申し込むと、1度に複数の業者と一般媒介契約を結ぶことができます。不動産業者探しに奔走する手間もかからず、気軽に進められます。

オークションを利用して賢い不動産売却を!

 ネットオークションを利用することで不動産業者に売却を依頼するよりもスピーディかつ公正な取引を期待できます。特に、任意整理などの差し迫った事情がある人ほどネットオークションは有効な売却方法だと言えます。また、疑似オークションでより安全な取引を目指すのもよいでしょう。

オークション形式での売却には多くの利点があるので、不動産の売却を検討している人は試してみてはいかがでしょうか。