土地や建物など、不動産を売却するときには税金がかかります。売却金額によっては大きな金額になることもあるので、事前に知っておきたい人も多いでしょう。しかし条件がそろえば免税になることもあります。今回は、不動産売却時にかかる税金やどういった人が免税対象になるのか、詳しく解説していきます。

不動産売却時にはどんな税金がかかる?

不動産売却にはいろいろな税金がかかる

免税について詳しく見ていく前に、そもそも不動産売却にかかる税金について知っておきましょう。売却時にかかるのは「印紙税」「譲渡所得税」そして「住民税」の3つです。まず、印紙税について見ていきましょう。

印紙税

印紙税は、不動産の売買契約書を交わす際に必ず支払わなければならない税金です。売却時だけでなく購入時にも支払いをしているはずなので、聞き覚えのある人も少なくないでしょう。印紙税は国税のひとつで、日常的な経済取引の際に作成される領収書や契約書に対して課される税金です。

印紙税法によって決められている「課税文書」、すなわち文書そのものが課税対象となるので、取引があっても文書が作成されていなければ課税はされません。しかし不動産売買においては契約書の作成が義務付けられていますので、必ず発生する税金なのです。

印紙税は文書の種類とそこに記載される金額に応じて支払うべき金額が定められています。

収入印紙の例

契約金額:10万円超~50万円以下
=400円
契約金額:50万円超~100万円以下
=1,000円
契約金額:100万円超~500万円以下
=2,000円
契約金額:5,000万円超~1億円以下
=6万円

といったように契約金額が大きくなればなるほど印紙税も高くなります。

譲渡所得税と住民税

譲渡所得税は「不動産を売却して出た利益(=譲渡所得)」に課される所得税です。これは単純に売却価格に課税されるわけではありません。売却価格からその不動産を購入したときの金額、売却時にかかった仲介手数料などを差し引いた、「最終的な利益」が譲渡所得税の対象となるのです。

ちなみに購入時の金額は「取得費」といいますが、譲渡所得を計算するときには購入時の金額を減価償却して計算します。

減価償却と取得費

減価償却とは、時間の経過と共に下がった価値を差し引くことです。建物は経年劣化によって新築時からだんだんその価値が下がっていきます。その「下がった価値」を購入時の金額から差し引いたものが「取得費」です。基本的に、居住用の建物の減価償却は下記の計算式で導き出されます。

建物の減価償却=建物の購入金額×0.9×法定耐用年数の1.5倍の償却率×経過年数

法定耐用年数、その1.5倍の償却率は築年数や建物の種類によって大きく変わります。

住民税もかかる

そして住民税も、譲渡所得に対して課されます。基本的に所得税とセットで計算されるものであり、所得税の申告をすれば住民税の申告も済ませたことになります。

ちなみに、不動産を売却したときに発生する所得税と住民税は通常の所得とは切り離されて考えられる「分離課税」です。そのため給与所得者であっても確定申告が必要です。

譲渡所得税と住民税を計算する際の注意点

譲渡所得税と住民税は売却する時点の不動産所有年数によって税率が大きく変わる

譲渡所得税、住民税は売却する時点でのその不動産の所有年数によって税率が大きく変わります。

長期譲渡所得
■所有年数が5年以上

所得税率
15%
住民税
5%
短期譲渡所得
■5年に満たない

所得税率
30%
住民税
9%

年数が違うだけで倍以上、もしくは倍近く税率が変わりますので、3年~4年目に売却を考えている人は少し待ったほうがお得に売却できます。

なお、平成25年1月1日~平成49年12月31日までは所得税に「復興特別所得税」が上乗せされます。復興特別所得とは東日本大震災に対する復興支援を目的とした税金であり、税率は2.1%です。そのためこの期間内の長期譲渡所得税は15%×2.1%=15.315%、短期譲渡所得税は30%×2.1%=30.63%の税率で計算されます。

譲渡所得計算での注意点

ここで注意しなければならないのは、譲渡所得について計算するときに、不動産の所有期間は「売却する年の1月1日時点での所有期間」で計算される点です。単純に購入日~売却日で計算するわけではないのです。

たとえば、平成25年5月に買った不動産を平成30年の6月に売却するとします。暦の上では5年間経過していますが、平成30年1月1日時点ではまだ5年を超えていません。そのため所有期間5年未満の「短期譲渡所得」となり、高い税率が課されます。

これを勘違いしてしまうと予想外に税金を支払うことになりかねませんので、注意しましょう。間違いを防ぐためには、「購入してから1月1日を何回迎えたか」で考えるとわかりやすくなります。

税金の軽減、免税もある!

税金の免税や軽減もある

印紙税・譲渡所得税、そして住民税が不動産売却時に課される税金ですが、それぞれ条件を満たせば税金が軽減あるいは免税されることがあります。

たとえば、印紙税は平成26年4月1日から平成32年3月31日までに発生する不動産取引に関する売買契約書について、軽減措置が講じられています。10万円超~50万円以下の印紙税は本来400円ですが、軽減税率によって200円に、それ以上の金額についても1,000万円超~5,000万円以下の取引までは税率がすべて半分になっています。

取引の金額が上がれば4万円・8万円・12万円と軽減措置によって得する金額も大きくなりますので、見逃せない制度です。

譲渡所得の特例

また、譲渡所得についてもさまざまな特例があり、控除や軽減措置が受けられることがあります。

たとえば、それまで住んでいた居住用の不動産を売却する場合、「居住用財産の特別控除」を受けることができ、所有期間の長短に関係なく3,000万円まで控除を受けられます。すなわち、売却によって得た利益が3,000万円を超えなければ課税されないのです。

3,000万円を超える場合には超えた分のみ、所有期間に応じた税率が課税されます。たとえば、すでに5年以上住んでいる不動産を売却し、譲渡所得が4,000万円だったとします。この場合、所得税は下記のように計算できます。

(4,000万円-3,000万円)×15.315%=153万1,500円

長く住んでいればお得になることも

長く住んでいれば得になる特例

10年を超えて所有している場合の特例

また、売却する年の1月1日時点で10年を超えてその不動産を所有していた場合にはさらに特例で所得税率と住民税率が下がります。その場合、譲渡所得が6,000万円以下なら所得税率は10.21%、住民税は4%、6,000万円を超える場合でも所得税率15.315%、住民税5%まで引き下げられます。

この特例は、上述の特別控除と併用することができます。ちなみに、この特例が適用されるのは不動産の「所有」が10年を超える場合であり「居住期間」については特に決まりはありません。

買い替え時の特例

また、ただ売却するのではなく新たに不動産を買う際には買い替え時の特例が適用されるケースもあります。これは、新しく買った不動産の価格が売却した不動産の売却価格を上回る場合に適用される特例で、売却時に発生した譲渡所得の課税を次の不動産売却まで先延ばしにできる制度です。

たとえば、元々住んでいた不動産の売却価格が5,000万円、新しく買った不動産の購入価格が6,000万円なら、売却に伴って発生するはずの譲渡所得税・住民税は課されません。

この特例が適用されるにはいくつかの条件があります。

特例の条件

まず、売却する不動産が「マイホーム」でなくてはなりません。マイホームとは「現在住んでいる家」「住まなくなった日から3年目の12月31日までに売却した家」を指します。すでに家屋を壊してしまっている場合にはさらに細かい要件があります。

そして不動産の売却価格が1億円以下であること、直近2年間で他の控除や特例を受けていないこと、不動産を売却する相手が親族など特別な関係の人でないこと、などが条件です。条件を満たせば売却時に税金が発生しないありがたい制度ですが、あくまで「先延ばし」であることは頭に入れておきましょう。

新しく買った不動産を次に売却するときに課税されますので注意が必要です。また、この買い替え特例が適用されるのは平成32年12月31日までです。

空き家の売却でも特別控除が!

相続をしたものの、特に住むこともなくその不動産を売却したといったような「空き家」の売却についても特別控除があります。これは、平成28年の税制改正で新たに制定されたもので、全国に多くある放置された空き家の有効活用を目的としています。

どんな空き家でも受け入れるわけではなく、適用されるためには細かな条件があります。主な適用条件は4つです。

4つの適用条件

1.旧耐震法の昭和56年5月31日までに建築された戸建住宅であること
2.被相続人(直前まで住んでいた人)が一人暮らしをしており、相続をしてから売却するまで貸し付けや事業、居住用に使われていないこと
3.相続をしてから3年後の年末までに売却をすること
4.売却価格が1億円以下であること

こういった条件を満たせば、譲渡所得から3,000万円の控除ができます。適用されるのは平成31年12月31日までであり、ほかと比べてかなり厳しい条件ですが、適用されれば大幅な減税となります。

損をしてしまったときに使える特例もある

不動産を売却する際、大きな利益が出ることもあれば反対に購入時より低い価格で売却し、損をしてしまうこともあります。

このように「譲渡損失」が出た場合には所得税や住民税は課されません。また、ほかの所得と相殺して所得税や住民税を減らすことができるのです。これを「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」といいます。

特例適用の条件
◇売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるマイホームであること
◇合計所得金額が3,000万円以内であること
◇売却の前日にその不動産に返済期間10年以上の住宅ローンが残っていること

買い替えの場合は住宅ローンに関する条件はなく、代わりに買い替え先の不動産についていくつか条件を満たす必要があります。いずれの場合も、譲渡損失について給与所得などそのほかの所得と合わせて計算し、翌年以後3年以内まで損失を繰り越しできます。

それによって課税されなかったり、所得税や住民税が減らせたりといった効果を期待できます。

以上を見てきたように、不動産を売却するときに発生する税金についてはさまざまな特例や控除を使うことで減らすことができます。不動産や自身の状況次第でそういった特例などが使えることもありますので、ぜひ売却の前に調べてみてください。

なお、今回の記事で記載した税率等はすべて2018年5月現在のものです。