不動産を所有している人であれば、自分の不動産が現在いくらで売れるのかに関心を持ったことのある人は多いでしょう。また、実際に不動産を売却するとなるといくらで売却できるのかは重大な関心事です。

 そこで、不動産の価格査定の意味や種類・査定価格と売却価格の関係・高値で売ってくれる不動産会社の選び方などについて説明します。

不動産売却を完了するまでの流れは?価格査定の位置付け

価格査定について説明する前に、不動産売却を思い立ってから売却を完了するまでの一般的な流れについて説明しましょう。不動産を売却するには、広く購入者を募る必要がありまたトラブルにならないような取引の専門的知識が必要です。

不動産売却までの流れ

1.売却する不動産の相場価格を大まかに把握

まず、売却を依頼する不動産会社にコンタクトを取る前に、自分で売却する不動産の相場価格を大まかに把握しておきます。多少の目安を把握しておいてから不動産会社とやり取りをしたほうが、価格について理解しやすいからです。

2.複数の不動産会社に対して不動産の価格査定を依頼

次に複数の不動産会社に対して不動産の価格査定を依頼します。査定の方法には、物件への直接訪問を受けず伝えた物件情報だけを基に査定をしてもらう机上査定と不動産会社の訪問を受ける訪問査定とがあります。査定は不動産会社とのコミュニケーションの機会ですから、売却を依頼する不動産会社を選ぶ重要な機会でもあります。

3.不動産会社に対して正式に売却を依頼

価格査定の結果を受けて、不動産会社に対して正式に売却を依頼します。この際に不動産会社とは不動産売却に関する媒介契約を結びます。媒介契約に基づいて不動産会社は販売活動を行い、売主は売買契約が成立したら成功報酬として仲介手数料を不動産会社に支払うことを約束するのです。

4.査定価格を参考に売り出し価格を決定

次に、売却を依頼した不動産会社とのあいだで査定価格を参考に売り出し価格を決定します。不動産会社は物件の広告をして購入希望者を探します。

5.売買契約の準備

現れた購入希望者と売買条件について交渉を行い合意に至ったら売買契約の準備をします。

6.売買契約を締結

売買契約を締結する際には買主が手付金を支払い、後日残金決済と物件引渡し・所有権移転登記手続きを行います。これらの手続きが終わり、不動産会社に仲介手数料を支払ったら不動産の売却は完了です。

価格査定を依頼する前に自ら相場を知っておく

価格査定は不動産の売り出し価格を決定するための重要な情報ですから、不動産会社から提示された査定価格を自分でもある程度評価できるようにしておく必要があります。そのためには、自分の所有する相場価格を大まかにでもつかんでおき不動産会社の査定と照らし合わせながら、疑問点などを解消できるようにしておくことが大切です。

価格査定前に自身でも相場を知っておく

不動産会社の力を借りずに不動産の相場価格を知る方法にはいくつかあります。最も簡単な方法は、不動産ポータルサイトなどで周辺の物件情報を収集し自分の所有する不動産と似通ったものを探して価格を知る方法です。ただし、不動産ポータルサイトなどに掲載されている物件価格はあくまでも売主が希望する売り出し価格に過ぎず、実際の成約価格ではありません。

不動産取引の現場では売り出し価格に対して買主から値引きの交渉が入るのが一般的ですので、成約価格は売り出し価格よりも安くなることに注意をしておく必要があります。また、不動産はひとつずつ異なる唯一無二の財産ですのでそれぞれの物件の特殊性によって価格は大きく異なることも意識しておかなければなりません。

たとえば同じ町内にあるマンションであっても、マンションの築年数や規模・ブランド価値・管理状況などによって価格は異なります。また、同じ3LDKであっても所在階や日照・設備のグレードなどによって大きく価格は左右されるのです。さらに、一戸建ての場合は土地の形状や向き・接道状況などによっても価格は異なります。

これらの事情を加味して相場観をつかむのは意外と難しいことでしょう。

ほかに不動産会社の力を借りずに価格相場を知る方法としては、国土交通省が提供している「不動産取引価格情報検索」というサイトを利用する方法があります。

このサイトは、取引時期・物件所在地・物件種別で絞り込んで実際の取引での成約価格情報を見ることができるようにしているものです。情報の中身には、町名までの物件所在地や最寄り駅・駅からの距離など位置を示す情報や建ぺい率や容積率など土地に対する規制を示す情報・建物構造や間取り・面積など建物を示す情報などが含まれており、実際に取引された価格も表示されます。

非常に有益な情報ですが、難点はサンプルがあまり多くないことです。これらの情報は不動産業者が利用しているデータベースを通じて収集されているものですが、不動産業者は取引後の成約価格まできちんと報告しないことも多いため情報が充実しているとは言えません。しかし、不動産業界の人間以外が実際の成約価格情報に触れることはできない積極的に利用してみると良いでしょう。

これらによって大まかな相場観を養ったうえで、次は不動産会社に価格査定を依頼してみましょう。

机上査定と訪問査定

自分の所有する不動産の市場における価格を知りたいなら、やはり不動産会社の査定を受けることが必要です。価格査定には、不動産会社に物件の情報を伝えるだけで訪問を受けずに査定をしてもらう机上査定と、不動産会社の訪問を受けて物件を確認してもらい査定を受ける訪問査定があります。

不動産の取引価格は、不動産市場における需要と供給や不動産市況などとともにその不動産のある地域の市場の動向、物件の立地条件や周辺環境・土地の向きや接道状況・建物や設備の劣化状況などの個別条件によって左右されます。そのため、査定をする物件を直接確認しなければ厳密な査定は行えません。したがって、物件を直接見ないで行う机上査定に正確な査定結果を期待することはできないのです。

ただ、不動産会社は一般の人が見ることのできない業者間データベースを利用して多くの不動産取引に関する記録を確認することもできます。周辺地域で行われた直近の取引データなどを活用して査定を行うので、大きく的外れな査定結果を出してくることもないでしょう。

机上査定はメールや依頼フォームで手軽にできる


机上査定の良いところは、メールや依頼フォームなどを使って簡単に依頼できることです。また、不動産会社からの訪問を受けないので手間や時間もかからずしつこい営業をされる可能性も低いというのもメリットとなります。したがって、机上査定を多くの不動産会社に依頼してもあまり不都合はなく多くの査定データを入手して比較して見ることも可能です。

ただ、実際に不動産を売却するときには不動産会社に直接物件を確認してもらう訪問査定を受ける必要があります。現地周辺の環境や土地建物の向き・建物や設備の劣化状況などを直接確認したうえで、ほかの物件に対して優れている点や劣っている点を洗い出し価格を正確に査定してもらうのです。

訪問査定を依頼する不動産会社は、机上査定を依頼した会社のなかから次の点に留意して選びましょう。まず、こちらの要望をきちんと把握し的確な応対をしてくれるかどうかです。

たとえば、連絡手段をメールと指定しているのに電話をしてくるような会社は要望を確認していないか要望を重視しない会社と言えるでしょう。このような会社に依頼しても、良い付き合いに発展する可能性は低いと言えます。また、机上査定結果の提出内容が合理的で納得できるものであるかどうかも大切です。

単に査定価格だけを示し、ほかは売却依頼をしてもらうための広告文句ばかり並べているような会社には今後も良い仕事を期待することはできません。どのような物件の取引事例を参考にしたのか、そのエリアの市場動向をどうとらえているのかなど客観的な根拠を示して査定を出している会社を選びましょう。

訪問査定はどのように行われるか

訪問査定は机上査定でも利用されるデータのほかに、不動産会社の担当者が現地で直接調査した結果を使って行われます。

一戸建てであれば土地の形状や擁壁などの状況、接道状況や隣地との境界の状況なども調査します。建物の外部内部ともに劣化の状況を確認することや、設備のグレードや作動状況などを確認するのも大切な調査項目です。さらに、依頼者である不動産所有者に質問をして建物の不具合を聞き取ったり、近隣関係にトラブルがないかどうかをチェックしたりもます。

そして、これらの情報を会社に持ち帰ってから客観的な査定を行うのです。

訪問査定は不動産業者の信頼度をみる機会でもある

査定の方法には、大きく分けて取引事例比較法・原価法・収益還元法の3種類がありますが最もよく利用されているのが取引事例比較法です。この方法は同じエリアで過去に取引された事例を基本に、査定する不動産と比較して価格を求めるもので多くの不動産会社が採用しています。

この方法では比較対象となる取引事例を選択し、それぞれの評価項目について優劣を点数化することで価格を算出していきます。

土地であれば交通の便・日照や採光・接道状況や方位・敷地の形状などが比較されます。また、中古マンションの場合は住戸の所在階や室内の劣化の状況・耐震性・保守清掃の状況や管理人の勤務状況などが比較対象です。これらの項目に関する点数評価を入力することで自動的に査定価格を算出するソフトウエアも広く利用されています。

訪問査定の結果は文書にして提出されます。また、不動産会社の担当者が再度訪問してきて直接口頭での説明を行うことも多いでしょう。この際に、自分の考えている大まかな相場価格との違いや自分の考える物件の優位性などについて担当者に質問をぶつけてみることをおすすめします。率直に質問をぶつけてみて、きちんと根拠のある説明をしてくれるのかどうかを見極めましょう。

この応対によって信頼できる不動産会社なのかどうかを知ることができるからです。

査定価格で売却できるとは限らない

訪問査定の結果、各不動産会社が出してきた査定価格を比較して見るときつい高い査定価格に目が行きがちです。自分の不動産は少しでも高く売りたいと思うものですが、査定価格はあくまでもその不動産会社の意見に過ぎないということに注意しましょう。査定価格はその価格で実際に売却できることを保証するものではないのです。

また、不動産会社は査定結果を提出する際に売り出し価格の提案もしてきます。ほとんどの場合、売り出し価格はその会社が提示した査定価格よりも少し高めに設定されていることが多いのですが、これも必ずその価格で売ることを約束するものではありません。「とりあえずこの価格で売れるように努力します」と言っているだけだと認識しておく必要があります。

特に、査定価格や売り出し価格をほかの不動産会社よりも極端に高く提示してくる不動産会社には少し注意をしたほうが良いでしょう。高い査定価格や売り出し価格の提示は、自社で不動産売却の依頼を受けるための誘導材料に過ぎない場合もあるからです。査定価格や売り出し価格が高いからという理由だけでこのような会社を選んでしまうと、売却活動の途中で何度も値下げをせざるをえなくなり結果的に安く不動産を手放さなければなることもあります。

もちろん、高い売り出し価格を提示しているのにはそれなりの根拠を持っている場合もありますので、大切なのはその価格の根拠を説明してもらうことです。きちんと市場ニーズを把握したうえで明確な販売戦略を提案しているのであれば、提案された売り出し価格で成約になる場合もあります。

したがって、単に価格の高さだけに注目するのではなく、提案している価格の根拠や戦略に納得できるのかどうかで不動産会社を評価しましょう。

価格査定を依頼すれば不動産会社の質が見えてくる

不動産会社が行う価格査定は、市場動向やエリアでの取引状況を把握しているプロの目で不動産の価格を算定してもらう重要な機会です。特に訪問査定は、不動産会社の担当者と直接コミュニケーションを取ることのできるチャンスだとも言えます。

不動産の売却では、広告活動や買主との交渉・安全な契約の準備など、依頼した不動産会社が行う仲介業務の質が大きく成否を左右します。したがって、不動産売却が成功するかどうかは、信頼できる不動産会社を選べるかどうかにかかっていると言っても過言ではありません。そして、価格査定は単に価格を知る機会ではなく、不動産会社を選ぶための重要な機会なのです。

査定の際には不動産会社に対してできるだけ多くの質問をぶつけ、売却のパートナー選びに活かしましょう。