不動産売買では、売主と買主の間でトラブルが起こりがちです。意図的に相手をだましたようなケースで諍いが起こるのは当然ですが、なかには過失によって不法行為を働いてしまう可能性もあります。

この記事では、不動産売却を安全に行うために知っておきたい「不法行為」を説明します。

どうして不動産売却では不法行為が起こりやすいのか

不動産取引では、法律によって最低限のルールが定められています。たとえば、「瑕疵担保責任」などの法律によって売主は物件の引渡し前に汚れや傷を修繕しなければいけません。そのほか、引渡しのタイミング・支払いの方法・交渉の進め方も法律によって一応の「指導」はなされています。

不動産売却では不法行為がおこりやすい

ところが、不動産に関する法律のほとんどはあくまで目安であって売主と買主の了承があれば独自のルールを設けることも許されています。そのため、不動産売買では往々にして売主と買主間で細かい条件のすり合わせが行われて交渉は長引いていくのです。多くの取引では双方の合意が得られたうえで契約書が作成され、不動産売却が完了します。しかし、なかには意図的に相手をだまし自分に有利な条件を取り付けようとする人も少なくありません。

もちろん、すべての売主や買主が相手をだまそうとしているわけではないのですが、不動産の法律は非常に複雑です。十分な知識をともなっていない素人同士で交渉を行っていると、どうしても「法律と照会して矛盾している内容」が出てきます。それでも、交渉時には気がつかないまま契約書を作成してしまうと、あとになって「だまされた」「詐欺にあった」などの声が上がり最悪の場合には裁判にまで発展しかねません。

不動産売却を行うなら「不法行為」についての十分な知識や事例も知っておきましょう。そして、売主と買主の双方にとってメリットのある契約を目指します。

瑕疵担保責任について起こりがちな「不法行為」とは

不動産売買でよくある不法行為「瑕疵担保責任」についてのものです。不動産売却を行った売主には自動的に瑕疵担保責任が発生し、買主が発見した瑕疵については修繕する義務を持たなくてはいけません。

瑕疵担保責任の有効期限は1年と民法で定められています。買主は物件を引渡されてから1年以内に発見した瑕疵について、買主に修繕を要求可能です。そうならないように多くの売主は物件を引渡す前に修繕を完了させ、できるだけ美しい状態にしてから引き払います。

しかし、売主のなかには瑕疵を隠すことによって担保責任を逃れようとする人もいます。小さな汚れ、傷については「上からペンキやニスを塗る」「家具で隠す」などの方法で秘密にできるでしょう。そのため、買主に報告をしないまま1年をやり過ごそうとする不法行為は珍しくないのです。

また、契約書にこっそりと瑕疵担保責任を逃れる項目を加えておく売主もいます。「内覧の時点で瑕疵は発見されず、売主にも了承をもらったので今後は修繕に応じない」などの一文があると、売主の瑕疵担保責任は免除されてしまいます。

買主側の「不法行為」も珍しくありません。契約書を民法に基づいて作成した場合、1年間は新たに発見した瑕疵の修繕責任を売主に押し付けられます。しかし、売主が修繕しないといけないのは「引渡しされた時点ですでにあった瑕疵」のみです。それでも、自分でつけた瑕疵まで売主のせいにして修繕費用を節約しようと考える買主もいます。売主が「自分はこんなところに傷などつけていない」と反論したら水掛け論になり、大きなトラブルにまで発展するでしょう。

引渡し時期についての不法行為!前の住人はいつ出て行くべき?

不動産を売却する契約が成立すれば「引渡し」に向けて売主と買主は動いていきます。まず、不動産登記を済ませて「不動産の持主」を名義変更しなければいけません。家を売却するなら売主は汚れや傷をきれいにして瑕疵担保責任を果たします。土地を売却するなら、「建物を壊す」「更地にする」など、契約内容に則した手続きを進めます。

前住人の退去時期

一方、売主は現在の住宅を引き払い、引っ越してくる準備に取り掛からなくてはいけません。そして、「引渡し期日」までに売主は退去し買主が新たに移ってきます。

ところが、引渡し期日になっても家から出ていかない売主もいます。こうした売主の主張としては「引渡し期日が契約書に記載されていない」「まだ引渡せるだけの準備が整っていない」などが挙げられるでしょう。しかし買主がすでに前の家を引き払っている場合、新居にまだ前の持主がいるのは非常に迷惑です。今すぐにでも退去してもらうため、口論になることもありえます。引渡し日を口約束で決めてしまうと、売主と買主の間で齟齬は起こりがちです。

一方、買主側の不法行為として「家に移ってきたのに支払いをしない」といった問題が考えられます。売主にいつ代金を支払うかも、買主との交渉で決められるためうっかり期日を定めないまま契約を締結してしまったら支払いは遅れる可能性があります。また、売主は一括払いを想定していたのに買主は分割払いで払ってくるなどの齟齬も起こりえるでしょう。あまりにも買主の支払いが遅れるようなら立派な「契約不履行」「不法行為」にあたり、裁判所に訴え出ることもひとつの解決策です。

内覧をしっかり対応したつもりが「不法行為」にされてしまった!

不動産取引における「不法行為」は、当人の悪意に基づくものばかりとは限りません。時には、よかれと思ってとった行動が「不法行為」と解釈されてしまうおそれもあります。

内覧トラブルは多い!

たとえば、内覧によるトラブルは非常に多いので売主は対応に気をつけましょう。内覧とは買主候補が実際に物件を見て、価値を確かめるための機会です。基本的には売主が立ち会って買主候補からの質問に答えます。内覧の感触がいいと取引成立に大きく前進します。買主候補も、取引の不安点を払拭するための重要なチャンスだと言えるでしょう。

内覧では、売主から買主候補に正直な説明をする義務があります。買主候補が「壁に傷が入っているように思うのですが」と質問してきたら「はい、以前の地震でついた傷です」という風に、正しく答えなければいけません。仮に「いいえ、単なる汚れなのですぐに消えますよ」などと答えれば虚偽報告として後々問題になります。また、買主候補は売主の言葉に注意深く耳を傾けています。買主が何気なく放ったつもりの言葉でも買主候補には、深刻にとらえられているおそれがあるのです。

そのため不動産売却が成立してから突然、買主から「話が違う」「売主にだまされた」と訴えられたとき、話を紐解いていくと内覧に原因があったケースも珍しくありません。また、内覧で売主が必死で「すぐに答えないと」と考えうろ覚えの知識で買主に対応した結果が混乱を招く可能性もあります。内覧で即座に答えることも大切ですが、それで間違った情報を与えてしまうのも本末転倒です。時には「調べてから連絡します」と素直に伝える勇気を持ちましょう。

そのほかにはどんな不法行為が考えられる?

あいだに人を挟んで行う不動産取引でも、たびたび不法行為は起こります。

たとえば、売主A氏のところにB氏が来て「自分はC氏の代理で動いている。C氏のために家を売ってほしい」と交渉してきたとします。A氏とC氏は会わないまま交渉が進み、取引が成立したとします。ところが、家を引渡したあとでB氏は「お金はC氏に払った。代金はC氏に請求してほしい」と言われました。一方、C氏は「そんなことは知らない。B氏に請求してくれ」と主張します。B氏とC氏の話が食い違ってしまい、A氏は誰に請求すればいいのかわからなくなりました。

結論から言えば、上記の場合だとA氏はB氏とC氏の両方から代金を請求できます。B氏とC氏のどちらが代金を支払うかはA氏が決めることではなく、重要なのは「交渉にあたったB氏」と「現在の名義人C氏」の両方に支払いの義務が発生している点です。とはいえ、A氏が「どちらでもいいので早く代金をください」と言ってもすぐに支払われるとは限らないでしょう。

このように、不動産取引ではあいだに入る人数が多くしかも全員が交渉の素人だと往々にしてもめがちです。

不動産仲介業者による不法行為も横行しています。仲介業者とは「専属専任媒介契約」を結ばない限り、売主自身が買主を見つけてきてもいいことになっています。そして、売主が見つけた買主については仲介業者が間に入れません。売主と買主のあいだだけで契約は取り交わされ、仲介業者が手にする報酬もなくなります。ところが、かたくなに「売主と買主が勝手に契約を結べません」と主張してくる仲介業者もいます。

仲介業者を利用するときには契約内容をよく確認して、売主が損をしないように気をつけましょう。

優良な不動産仲介業者を選んで不法行為を回避する

素人同士で不動産取引を進めていくと「不法行為」に手を染めた買主のターゲットになる危険があります。一方、売主側もうっかり犯したミスで「不法行為」のレッテルを貼り付けられ、買主からの信用を失いかねません。

不動産取引でのトラブルを避けるためには不動産仲介業者の利用がおすすめです。優良な不動産仲介業者を利用すれば、法律的に問題なく取引を進めていけます。また、仲介業者の審査によって悪質な買主を避けられるので取引でもめる確率は低くなるでしょう。

優良な不動産仲介業者の特徴としては「査定額が適正」であることです。よくあるのが、わざと高い査定額を算出して契約を結びそのあとで「詳しく調べたら査定額が下がりました」と言い出してくる仲介業者です。こうした業者を見抜くには複数の業者から査定をしてもらい「不動産物件の相場」を確かめましょう。

相場を踏まえながらも満足できる査定額を算出している業者が狙いどころです。そして直接コンタクトを取り「実績」「担当者の人間性」「地域での知名度・コネクション」などを見極めていきます。強引に自分たちの意見を押し付けてくる業者よりも、売主の気持ちを優先してくれる業者がおすすめです。

プロの力を借りて不法行為の対策をとろう

 不動産業界では不法行為が横行しており、多くの人が損をさせられています。プロの不動産仲介業者を頼れば不法行為に遭遇するリスクは減りますし、自らも間違ってルール違反を犯してしまう心配がなくなります。

まずは、気軽に査定サイトなどで仲介業者をチェックしてみましょう。