不動産の所有や取引となるとさまざまな税金がかかってくるものですが、所有している限り切っても切れない税金が固定資産税です。土地を所有している限りはずっと発生する税金ですから、仕方がないと払い続けている人は多いのではないでしょうか?
この性質上、発生する税金を免除するのは難しいですが、農地にして節税するという方法があります。具体的にどんな方法なのかをチェックしてみてください。
そもそも固定資産税とはどういう税金?
そもそも固定資産税とはどういうものなのかというと、流通せず消耗もしない土地や建物などいわゆる固定資産にかかってくる税金です。
土地や建物の所有者は、その資産がある市町村の提供する行政サービスによって利益を得ているため、その利益に応えるための負担をするという名目で固定資産税を設けています。
固定資産はいずれの市町村にも存在するため、市町村が課税するのが基本です。
土地の規模や建物の状況に関わらず、不動産所有者は基本的に課税対象となると考えておきましょう。その年の1月1日時点で不動産を所有していた人が課税対象であるとされているため、年度途中で売却した場合でも、その年度分の固定資産税を支払う必要があるので間違えないように注意してください。
課税額は基本的に所有する資産の金額に応じて決められます。固定資産の評価額から出される課税標準額に標準税率の1.4%を掛けた金額が固定資産税となるので覚えておきましょう。ただし、土地の場合は課税標準額が30万円を下回るようであれば、課税対象とはなりません。
土地の固定資産税の計算方法
一般的な土地の固定資産税を計算する場合には、先述したように課税標準額に対して標準税率である1.4%を掛けたものが固定資産税となります。課税標準額とはいわゆる固定資産税評価額のことです。
固定資産評価額は前年度の固定資産税課税標準額に負担調整率を掛けたものとして計算されます。ただ、これはあくまでも土地のみの場合の計算です。家屋や償却資産が関わってくるとまた話は変わってきますから注意しておきましょう。
土地の評価額は地目という土地の用途別の区分によって判別されます。一般的な空き地や空き家であれば宅地として区分されますが、ほかには田や畑・牧場や池沼・山林などさまざまな区分けされます。区分のいずれにも該当しない土地の場合には雑種地として判別されるので覚えておきましょう。なぜこのような区分が必要なのかというと、どの区分をされるのかによって課税額が変わってくるためです。
判別内容によっては固定資産税の金額が大きく左右されると考えておいてください。
固定資産税に重要なのは課税地目?
固定資産税による課税額を判別するための材料として地目がありますが、この地目には大きく分けて、登記地目と課税地目の2種類あります。
登記地目 |
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登記簿に記載されている地目のことです 土地の利用目的や状況が変わった際には申請をする必要があります |
法務局の手によって変更されるということはありませんから、登記した申請人がきちんと地目変更登記の手続きを済ませましょう。
課税地目 |
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固定資産税の算出に関わってくる地目です 登録地目とは違い、市町村によって現地調査が行われ土地の状況や使用方法に変更があった際には市町村の手で課税地目の変更がされます |
ただ、そうなると課税地目と登記地目の内容に違いが生じてしまうという問題が発生します。そうなると、登録地目には合わない固定資産税が課税されていると判断してしまうケースがあるので注意が必要です。
誤解や勘違いをしないためにも、土地の使用目的や状況に変化があった段階で、速やかに登記地目の変更をするように心がけましょう。
農地の固定資産税の計算方法は?
一般的な土地の場合には、固定資産税は課税標準額に1.4%を掛けたものになりますが、農地の場合にはもっと安くなる傾向にあります。ただ、一口に農地といっても4種類に分けられますし、種類ごとに固定資産税の金額も変わってくるので注意しなければなりません。
主に土地計画区域外にある一般農地
一般農地の場合、2014年時点だと1平方メートルあたりにかかる課税標準額の全国平均は約68円となっています |
つまり、300坪の一般農地を所有している場合は、固定資産額が1,000円に満たないほど安いということです。
一般市街化区域農地
特定エリア外にある市街化区域内の農地もあります 一般市街化区域農地の場合、市街地にあることから資産価値の評価額は宅地並みであると判断されます 宅地と変わらないのではないかと思うかもしれませんが、必ずしもそういうわけではありません 農地で営農している場合だと課税標準額は評価額の3分の1として計算されます つまり、宅地よりも3分の1程度は安くなるということです |
農地を営農している場合に限られるのでハードルは高いですが、元々農地として使用している土地であれば難なくクリアできる課題と言えるでしょう。
特定市街化区域農地
一般市街化区域農地以上に宅地化の可能性が高いとされているため、より宅地の区分に近い課税がされる傾向にあります 特定市街化区域農地は三大都市圏の中にある特性のエリアに該当するためです 一般市街化区域農地と同様で、農地で営農している場合には評価額の3分の1という計算が適用されます |
しかし、負担軽減措置に関しては宅地と同様になりますので注意が必要です。
転用の手続きをした農地
少々扱いが複雑になります 農地から宅地に転用する場合、転用のための許可申請をしなければならないのですが、届出をした段階では雑種地、あるいは介在農地として区分されます |
元が一般農地であった場合には宅地並みの評価をされることになりますし、市街化区域内にあった農地の場合には評価額の3分の1にするという特例措置を受けられなくなってしまうのが難点です。転用の手続きをした農地に関しては固定資産税の金額がかなり跳ね上がってしまうことを覚悟しておいたほうがいいでしょう。
農地にすると節税効果がある?
農地のある場所によって異なりますし、状況にもよりますが、一般農地であれば大きな節税効果を見込めるのは確かです。ただ、先に述べたように、一般市街化区域農地や特定市街化区域農地の場合には3分の1の減免措置を受けるために農地を営農している必要があるというネックもあります。
元々宅地であった場所を節税対策のために農地にする場合、市街化区域内だとハードルが高いと考えるべきでしょう。ただ、元々農業を始めようと考えていたのであれば有効的な手段だとも言えます。
営農する予定がないという場合には宅地並みの評価を受けることになってしまいますから十分に注意しなければなりません。せっかく農地にしても営農していないと判断されてしまえば宅地とほぼ変わらない固定資産税を支払うことになります。そのため、農地にさえすれば節税効果が期待できるとは一概には言えないでしょう。
農地にしたら大幅な節税になるかどうかを判別するために、まず所有している土地の場所が市街化区域に当てはまるかどうかを確かめてみてください。
宅地を農地にする方法は?
宅地を農地にするためには特別な法律があるというわけではないため、土地の状態さえ問題ないのであれば自由に農地へと転用することが可能です。ちなみに、農地を宅地やほかの土地に転用する場合だと農地法によって制限されてしまうので誤解しないように注意しておきましょう。
農地として区分されるためには、誰の目から見ても農地だと思えるような状態にしなければなりません。具体的には、作物が生育できるような環境にし耕作をすることです。
口にするだけなら簡単に聞こえますが、土地の状態によっては農地にするには大変な手間がかかります。たとえば、土地に建物が建ってしまっている場合や基礎がある場合にはそれらをすべて解体し、処分しなければなりません。土もただ掘り返せばいいというわけではなく、耕作用の土に入れ替える必要があります。また、実際に耕作をしなければ農地としての役割を果たせていないことになりますし、農地だと判別してもらえない可能性も出てきますからそれもしっかり取り組む必要があるでしょう。
農地はあくまでも家庭菜園ではなく、農地法にのっとった農作業が求められます。畑を耕し、登記地目の変更をしたら農作業を続ける覚悟が必要になってくるでしょう。
農地は将来的にどうなるのか?
明らかに市街化区域に該当しないような一般農地であれば特に心配する必要もないと言えますが、市街地に少しでも近い場所であればあるほど宅地並みの評価をされてしまう可能性はあると考えられるでしょう。
市町村の都市計画が進み所有している農地にアパートやマンションを建てられるようになれば、宅地化できる農地として判断されます。今は一般農地であっても、数年後や数十年後先の未来には市街化区域の農地になっている可能性は決して否定できません。
市街化区域になり、アパートやマンションとして活用できるとなれば土地としての価値が上がるというメリットもあります。そうなれば、売却したければ需要がある限り高額で売ることができますし、アパートやマンションを建てて不動産経営をすることも可能です。もちろんそうなれば固定資産税は高額になってしまいますが、収益化することで対処できる方法もあると言えるでしょう。ただ実際の未来では、市街化区域の拡大がされるかどうかはわからないものです。
数年や数十年経てば税金に関する法律に変化が起こる可能性も十分にあります。将来はどうなるのかわからないからこそ、状況に応じた土地の活用や工夫が求められるのは確かです。
農地にすれば節税できるとは限らない!
一般農地であれば宅地よりもはるかに固定資産税が安くなるのは確かですし、農地に変えることで対処することは可能です。しかし、必ずしも一般農地に該当するとは限らないのもまた事実と言えます。
営農しなければ減免措置を受けられない農地もありますし、状況によっては宅地並みと判断され殆ど節税できないという可能性も考えられます。所有している土地の場所や状態によってどのように対処するのが最善なのかは異なってくるものです。
土地の状況に応じて最適な対処をすべきだと言えるでしょう。