不動産の売却を行う際、重要なポイントとなるのが不動産会社選びです。このときに有用な情報のひとつとして免許番号が挙げられます。とはいうものの、どこをどう見ればよいのか分からないという人も多いかもしれません。そこで今回は、不動産業者の免許番号をどのように見ればよいのかということについて詳しく解説しましょう。

不動産取引の仲介には免許が必要!

宅地建物取引業には、主に3つの業務があります。まずは宅地や建物の売買、そして宅地や建物の交換、最後にそれらの業務の代理や媒介です。

これらの業務は「宅地建物取引業法」という法律により、国土交通大臣か、あるいは都道府県知事の免許を受けた者でなければ営むことができないことになっています。

免許を取得するためには、いくつかの要件があります。これらは欠格事由と呼ばれ、該当すると免許を申請しても拒否されてしまうのです。

不動産取引の仲介には免許必須!

欠格事由には、たとえば過去に不正を行って免許取り消しの処分を受けたことがあるといったことなどが挙げられます。そのような場合には、処分を受けてから5年間は免許を取得することができません。

そのほかにも、自己破産をしている人や事務所に専任の取引主任者を設置していない場合も免許を取得できません。免許番号はそれらの欠格事由に該当していない、安心できる業者であることの証明だとも言えます。

特に不動産の売買に関しては無免許のブローカーが多く存在するといわれています。そのような業者とは決して関わらないことが大切です。

また、国土交通大臣や都道府県知事といった免許権者は、免許の交付を受けた宅建業者が法令違反を犯した場合、業務改善のための指示処分や業務停止処分、あるいは免許取消処分といった行政処分を行うことができます。しっかり法令を遵守していなければ、免許を保持し続けることはできないのです。

宅建業免許番号とは

宅建業免許番号とは、不動産業者が宅地建物取引業を行う免許を受けた際、割り振られる番号のことです。

新聞の中に入っている不動産の広告チラシなどには必ず記載されています。また、店舗などでも宅地建物取引業者名簿・免許事項を記載した標識などに登載・表示されています。不動産業者のID番号のようなものと言えるでしょう。

免許番号には「国土交通大臣免許(8)○○号」というように国土交通大臣が交付しているものと、「東京都知事免許(5)××号」というように、都道府県知事が交付しているものの2種類があります。

不動産会社が複数の都道府県に店舗や事務所を構えている場合には国土交通大臣が交付し、ひとつの都道府県内にすべての店舗や事務所がある場合には都道府県知事が交付します。

大臣許可の不動産会社は全国的に店舗や事務所を展開している会社で、知事許可の不動産会社は地域密着型だと言えるでしょう。これは単に事業規模の違いであり、不動産の取り扱い自体に差があるわけではないので注意が必要です。

カッコの中の数字は、免許の更新回数です。更新は、1996年以前は3年に1度でしたが、1996年以降は5年に1度に改正されました。つまり、更新回数の数字が大きいほうが、より営業している期間が長い不動産会社だということです。

なお、宅建業者が免許換えや廃業、免許の取消しとなった場合には、交付されていた免許番号は欠番となります。番号が再度別の会社で使用されることということはありません。

免許番号の大きさと不動産会社の信頼度は別!

免許番号に記されている数字は、免許取得時を1として、その後更新を重ねる度に大きくなっていきます。数字の大きい不動産会社はそれだけ実績と経験のある会社だという信頼性につながると考える人も多いでしょう。

免許番号の大きさと実力はリンクしない!?

しかし、実際は長期間営業しているということと、不動産業者の売買取引の仲介における実力がリンクしているとは限りません。というのは、更新回数はあくまでも同じ免許権者で免許を更新した回数を表しているにすぎないからです。

免許権者が変更になれば更新回数はリセットされるので、免許番号も変わることになります。これまで知事免許だった不動産会社が営業範囲を拡大して大臣免許になった場合には、更新回数が1になります。あるいは、個人事業で長年営業してきた不動産業者が法人化したときも、更新回数は再び1からのスタートになるのです。

一方、逆のケースもあります。たとえば、免許の更新番号が8の業者が他人に事業を売却したとしましょう。そうして事業を買い取った側に不動産業の経験が全くなかったとしても、事業そのものを買取ったのですから、免許の更新番号はそのまま8の数字を引き継ぐことになります。この場合、更新番号が大きくても実際は新興企業と同じということもあるのです。

これらの例からも、不動産業の免許更新の番号が必ずしも信頼度とイコールの関係にあるわけではないということがよくわかるのではないでしょうか。

更新番号の大きい会社や小さい会社の一般的傾向

更新番号の大きさと不動産会社の信頼度は比例しないとはいうものの、一般的な傾向としていくつか言えることがあります。

まず、更新番号が大きい不動産会社は地元密着型の企業が多いということです。そういった会社はこれまでの経験から、地元についての情報を熟知しています。どの場所が台風に弱いということや、地盤沈下がかつて起こった場所、治安があまりよくない場所など、地域に古くから住んでいるからこそ知っている情報が多いのが特徴です。

更新番号が大きい会社は地元密着型企業が多い

ただし、地元密着型企業のなかには、自社物件を多く抱えているところがあります。そうした会社の場合、売却の仲介を依頼しても自社物件を優先してあまり積極的に動いてくれないということがあるのです。そのような会社であれば、営業期間が長いからといっても物件の仲介を依頼する人にとっては、あまりメリットを得られないでしょう。

一方、更新番号が小さい業者は、一般的な傾向として開業間もない会社が多く、ほかの会社と比較すると地元の情報についてもあまり深くは知らないことが多いです。しかし、逆に言えば、そのような会社だからこそ、少しでも実績を積み上げるために営業活動を積極的に行ってくれることが期待できます。

免許番号で行政処分の状況をチェックできる!

不動産業者は業務を続けるにあたって、宅地建物取引業法の規制に従わなければなりません。もしも法令違反があった場合には、行政処分の対象となります。

不動産業者の過去における行政処分の状況などを確認するには、行政庁のホームページなどで宅地建物取引業者名簿をチェックするとよいでしょう。そこには免許の年月日や役員の氏名、すべての本支店の所在地だけでなく、過去に受けたことのある行政処分の状況や他の事業との兼業状況などが記載されています。名簿を見ることによって、免許を交付されている不動産業者の概要を知ることができるのです。

そのほか、国土交通大臣の免許業者であれば、本店所在地を所管する地方整備局等などでも名簿を閲覧できます。都道府県知事の免許業者の場合は、各都道府県の宅地建物取引業者を所管する部署で閲覧が可能です。

もちろん、こういった情報だけで不動産業者を完全に判断することはできません。しかし、不動産を売却したいときにどの業者を選べばいいのか迷った場合には、ひとつの参考情報となるでしょう。

以前に法令違反を犯したことがある業者であっても、その後に業務内容を改善しているケースも多くあります。名簿に掲載されているからといって、絶対に信頼できないというわけではありません。行政処分のネガティブ情報はあくまで参考程度にとどめておくことも大切なポイントです。

一緒に所属する業界団体もチェックしておこう!

良心的な不動産会社を探したい場合、免許番号や更新回数のみで判断することは難しいというのが実状です。そこで、免許情報だけでなく業界団体への加入の有無も一緒にチェックしておくと、不動産会社の概要についてより詳しく知ることができるでしょう。

不動産業界の業界団体には

「全国宅地建物取引業協会連合会」「不動産流通経営協会」「全日本不動産協会」「全国住宅産業協会」

という4つの団体があります。この4団体は、細かなところで相違する点があるものの、全体的には不動産に関する取引において発生したトラブルを解決するといった役割を果たしているということで共通しています。

業界団体への加入は任意であって強制ではありません。しかし、多くの不動産会社は、いずれかの団体に加入しています。というのは、これらの業界団体に加入するためには、免許の有無だけでなく資本金や売上の額、業歴、過去の業法違反といったさまざまな基準をクリアしていなければならないからです。そのため、業界団体に加入している不動産会社は、それだけ信頼できる不動産会社であるとも言えるわけです。

また、この4つの業界団体に所属していない不動産会社は、日本全国の物件情報を閲覧できる指定流通機構のREINSが利用できないという決まりがあります。REINSが利用できない不動産会社に仲介を依頼すると、物件情報が広がる可能性が低くなってしまいます。そうすると、業界団体に加入している不動産会社に依頼するよりも売却が難しくなってしまうのです。

不動産業者の規模はもちろんのこと、業界団体に加入しているかどうかもしっかりと確認しておくことが大切です。

さまざまな情報を入手して不動産会社を選ぼう!

不動産業者の免許更新番号からは、さまざまな情報を読み取ることができます。しかし、ここまで説明してきたとおり、それらの数字だけですべてを判断できるというわけではありません。

免許番号だけでなく、電話での対応や実際の接客の様子など、自分の目でどんな不動産会社なのかを調べることが大切です。

また、良心的な不動産会社であれば好意的な口コミを多く見かけることができるでしょう。そういった情報を集めることも、不動産業者の評判を知る大きな手がかりとなります。

 不動産の売却が満足のいくものになるかどうかは、どの不動産会社に仲介を依頼するのかが重要なポイントとなります。そのためにも、免許更新の番号だけに頼るのではなく、より広く深い情報を集めることが大切だと言えるでしょう。