住宅の購入を検討している人なら、都市計画税という税金を聞いたことがあるのではないでしょうか。
都市計画税は住宅を所有していると毎年かかりますが、実はすべての人に課税される税金ではありません。ただ、実際は大半の人が課税されますので、住宅を購入する上ではどのようなものなのか理解しておくのがおすすめです。この記事では都市計画税について知っておくべき知識について解説します。

住宅にまつわる税金はさまざま

住宅は購入から売却まで様々な税金がかかる

住宅は購入してから売却するまでの間、さまざまな種類の税金がかかります。

取得した時にかかる税金
◇不動産取得税
◇登録免許税
◇消費税
◇印紙税
◇贈与税
◇相続税
保有している間にかかる税金
◇固定資産税
◇都市計画税
売却した時にかかる税金
◇所得税

取得した時や売却した時にかかる税金はその時だけですが、固定資産税と都市計画税は保有している間、毎年かかります。いわゆるランニングコストですので、購入前の時点でいくらくらいかかるのかを把握しておいた方が良いでしょう。

住宅を取得したときにかかる税金のうち、贈与税や相続税はそれぞれ贈与または相続によって住宅を取得した人だけがかかる税金です。贈与税は年間で110万円を超えるとかかってしまいますが、婚姻期間が20年以上あるような夫婦で、夫に所有権のある住宅を妻が相続したようなケース(配偶者の税額の軽減が適用できるケース)では、他の遺産も含めて1億6千万円まで相続税はかかりません。
※参考:配偶者の税額の軽減(国税庁)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4158.htm

住宅を売却した時に所得税がかかるのは、あくまでその売却によって利益が出た時のみです。長く住んだ後で売却した場合は軽減措置が設けられていますので、住むための目的で購入した住宅の売却で所得税を支払う必要がある人は、限られています。

ただし、売却によって利益が出ている場合は確定申告をする必要があります。計算してみたら所得税がかからないと分かっても確定申告をしないといけません。その点は気をつけてください。

固定資産税と都市計画税の違い

固定資産税、都市計画税とは

固定資産税と都市計画税は毎年、1月1日時点で市区町村が土地や家屋などの所有者に対して課税する税金です。相続税や所得税は国税ですが、これらは地方税です。

固定資産税は用途が決められていない一般税ですが、都市計画税は道路や下水道、公園の整備といった都市計画事業または土地区画整理事業にあてる目的で課税される税金です。

住宅を購入する人にとっての違いは税率のほか、固定資産税がすべての人にかかるのに対し、都市計画税はかからない人がいるという点です。

都市計画税がかかるのはどんな地域?

私たちの住んでいる街には「都市計画」というものがあります。少しくだけた言い方をすれば「まちづくり計画」です。そのため、いくら所有権を持っていても、住人が好きなように使い方を決められない場合があります。

自治体が管理している区域は、都市計画の観点からは次のように区分されています。

都市計画区分
■都市計画区域
◇市街化区域
◇市街化調整区域
◇非線引き区域

■都市計画区域外
◇準都市計画区域
それ以外

都市計画区域とは、都市計画法という法律によって、都道府県知事や国土交通大臣が指定する地域のことです。その区域を一体として総合的な視点から開発・整備するために指定している地域で、都市計画税がかかるのは、この区域の中にある「市街化区域」に建てられている不動産です。

市街化区域

市街化区域は開発や整備を行うことで住環境をよくする区域

市街化区域とは、秩序のない市街地の拡大を防いだり、市街地の形成や公共投資を効率的に行ったりすることなどを目的として、県又は市区町村が定める区域です。

例えば東京23区の場合、主要河川の河川敷以外はすべて市街化区域に指定されています。でも横浜市では、市街化区域は全体の約4分の3にすぎません。自治体の方針によって、その範囲にはかなり違いがあります。

市街化調整区域

無秩序な開発を望まず抑制する区域

市街化調整区域は逆に、市街化を抑制するために指定された地域で、家屋を建てるなどの開発を極力おさえる地域です。非線引き区域はそのどちらでもありません。

都市計画区域/準都市計画区域

都市計画区域と準都市計画区域では、マンションを建てるなどの「開発行為」を行う場合、一定の規模以上になると許可を取ることが必要です。

例えば市街化区域の場合は1000平方メートル以上だと原則として許可が必要ですが、条例で300平方メートルまで引き下げることができます。つまり、より条件が厳しくなるということです。なお、市街化調整区域は原則としてすべての開発行為について許可が必要です。

都市計画税はいくらかかる?

固定資産税と都市計画税は一緒に請求される

固定資産税と都市計画税は同時に請求されますので、固定資産税の計算方法と合わせてご説明します。

固定資産税と都市計画税の税率

まず、固定資産税と都市計画税の基本となる税率は次のとおりです。

■固定資産税
課税標準 × 1.4%(標準税率)
※課税標準とは、資産税課税台帳に登録されている価額のことです。課税標準は負担調整の特例で調整されている場合があります。
※標準税率は、各地方公共団体が決定します。
 
■都市計画税
課税標準 × 0.3%

何も知らずに計算すると、例えば3000万円で購入した住宅(土地1200万円、家屋1800万円と仮定)なら、次のように計算してしまうのではないでしょうか。

■固定資産税
土地:1200万円×1.4%=16万8000円
家屋:1800万円×1.4%=25万2000円
合計:42万円

■都市計画税
土地:1200万円×0.3%=3万6000円
家屋:1800万円×0.3%=5万4000円
合計:9万円
 

両者を合計すると、なんと51万円です。
ですが、実際はこれほどかかるわけではありませんので、安心してください。

税額計算のベースとなる「課税標準額」について

税額の計算においてベースになる金額は、購入価格ではありません。

税額計算における住宅の価格は、総務大臣が定める「固定資産評価基準」をもとに計算します。この金額は、3年おきに評価されて変わります。なお、この固定資産税評価額は、市場において取引される金額のおよそ7割程度です。

税率をかける対象となる住宅の価格は、正確には「課税標準額」と言います。課税標準額は税額計算の基礎となる金額で、さまざまな要素を考慮して決められます。税額を軽くする意図が入ることも多いです。

固定資産税の計算

固定資産税の計算方法

まず、土地の固定資産税の計算方法について解説します。
住宅用地は税負担の軽減措置が適用されます。一般住宅用地を超える部分については適用されません。

住宅用地の場合

小規模住宅用地
200平方メートル以下の土地
一般住宅用地
200平方メートルを超える分のうち家屋の床面積の10倍までの部分
課税標準額
■小規模住宅用地の場合
6分の1
■一般住宅用地の場合
3分の1

先ほどの例で出した住宅がすべて小規模住宅用地に該当するとした場合

◇土地の固定資産税評価額
(購入価格の7割とすると)
⇒1200万円×70%=840万円

◇課税標準額
⇒840万円×6分の1=140万円

◇土地の固定資産税の税額
⇒140万円×1.4%=1万9600円

となる

次に、家屋の固定資産税について解説します。

家屋の固定資産税

家屋の課税標準額も土地と同様、買った時の金額ではありません。家屋の場合、3年に1度の評価時点において仮に同じものを新築するとした時にかかる費用(再建築価格)をもとに、経過年数を考慮して評価額を減らします。

すなわち築年数に応じて金額が変わるので、材料費が高騰でもしない限り、10年20年と時間が経てば評価額は下がります。その結果、税額も減ることになるわけです。
建物の評価額の減額については法務局のHPから「経年減価補正率表」で確認できます。ただし、補正率の最低限度は0.2とされているため、どんなに古い家屋であっても評価額が0円になることはありません。

家屋の固定資産税評価額
再建築価格×経過年数の経年減価補正率

家屋の固定資産税の税額
家屋の課税標準額×1.4%

仮に購入から10年経過しているとして、家屋の課税標準額が800万円とすると、800万円×1.4%=11万2000円となります。

ちなみに、新築家屋の場合は一定期間固定資産税が2分の1になる軽減措置があるため、一戸建ての場合は3年間、マンションの場合は5年間半額に減額されます。
そのため、新築家屋の減額が終了した翌年度分から急に高くなったと感じるかもしれませんが、それは本来の税額に戻ったことが理由です。中古家屋についての軽減措置はありません。

マンションの方が軽減措置期間が長くなっていますが、建物の耐用年数が一戸建ては22年マンションは47年とマンションの方が長く設定されているため、建物の価値が減る減価償却期間も長くなります。そのため、結果的には建物部分の評価が高くなるマンションの方が固定資産税の高い状態が続きます。

なお、2017年の税制改正によって高さ60m以上のタワーマンションの固定資産税について部屋の階層によって固定資産税額が変動するようになりました。
これまでは専有部分の床面積が同じであれば階数に影響されず固定資産税は同額でしたが、高層階ほど高く、低層階ほど安く補正される仕組みです。ただしこれは2018年度以降に新たに契約されたタワーマンションにのみ適用されるため、2017年3月31日までに契約が結ばれたものに関しては適用されません。

都市計画税の計算

都市計画税について、まず土地から解説します。
都市計画税においても住宅用地は税負担の軽減措置が適用されます。一般住宅用地を超える部分については適用されません。

課税標準額
■小規模住宅用地の場合
3分の1
■一般住宅用地の場合
3分の2

先ほどの例から

◇課税標準額
⇒840万円×3分の1=280万円

◇都市計画税の税額
⇒280万円×0.3%=8400円

となる

■家屋
家屋の課税標準額を800万円としたので
⇒800万円×0.3%=2万4000円
となる

固定資産税と都市計画税の合計

以上を合計すると、1万9600円(土地の固定資産税)+11万2000円(家屋の固定資産税)+8400円(土地の都市計画税)+2万4000円(家屋の都市計画税)=16万4000円となります。
最初に計算した51万円と比べると、ずいぶん少なくなりました。

固定資産税や都市計画税がかからない場合

固定資産税や都市計画税は、同じ市区町村内において、同じ人が所有する土地や家屋の課税標準額の合計が一定の金額に満たない場合はかかりません。いずれも基準は同じです。

なお、一定の金額とは土地で30万円、家屋で20万円に満たない場合です。地方で全く値がつかないような土地であるとか、かなり古くなって買い手が見つからないような家屋が該当します。

税額に不服や疑問点があるときは

額が高すぎると感じたら役所に問い合わせ

固定資産税や都市計画税の税額は、市区町村役場の担当者が決定して通知してくるのですが、税額を軽減する特例の適用を忘れているケースもあるかもしれません。
特に増築したり、2世帯住宅に改装したりするような場合にミスが起こりえるので、金額が高すぎると感じたら役所に問い合わせて、念のため確認しましょう。

都市計画税の税率は市区町村によってどのくらい違う?

都市計画税の税率は0.3%と説明してきましたが、あくまでこれは上限なので、各市区町村の判断で引き下げることができます。ただし、実際は上限の0.3%としているところの方が多いようです。

主要都市の都市計画税の調査結果を列挙しますと次のとおりです(令和4年6月15日現在)。

■北海道  札幌市  0.3%
■宮城県  仙台市  0.3%
■東京  23区  0.3%
■東京都  狛江市   0.25%
■神奈川県  逗子市  0.2%
■愛知県  名古屋市  0.3%
■大阪府   大阪市  0.3%
■福岡県  福岡市  0.3%

各地域の都市計画税を調べるのは簡単です。
各市区町村のウェブサイトに掲載されていますし、問い合わせれば回答してもらえますので、気になったら調べておきましょう。

都市計画税の払い方

都市計画税は4回に分けて支払う

都市計画税は、年間の税額を4回に分けて納付します。課税される時期は地域によって違いますが、東京23区では6月(第1期)、9月(第2期)、12月(第3期)、2月(第4期)となっています。

市区町村から送られてくる納税通知書で納税する場合は、銀行や信用金庫、郵便局、コンビニなどで支払うことができます。このほか口座振替やクレジットカード、ペイジーで納付することもできます。

東京23区の場合、「都税クレジットカードお支払いサイト」というウェブサイトが用意されています。クレジットカードの場合、VISA、Master、JCBといった主要国際ブランドはすべて対応していますので、どのカードでも支払うことができると言っていいでしょう。
税金は金額が大きいので、還元率の高いクレジットカードで支払うとメリットがあります。

売却した年の都市計画税は?

固定資産税や都市計画税は、その年における1月1日現在の所有者に対して課税されますが、年の途中で売却した場合は税額を日割り計算し、購入日以降に対応する金額は購入者が負担するようにするのが通例です。

都市計画税を滞納するとどうなる?

滞納すると財産差し押さえに。。。

固定資産税や都市計画税の自主的な納付がない場合、市区町村から督促状や催告状が届きます。それでも納付がない場合、財産の差し押さえが行われます。

地方税法では「督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しないときには、滞納者の財産を差し押さえなければならない」という規定がありますので、この規定に基づいて差し押さえをするのです。

埼玉県朝霞市の例ですが、平成27年には年間で1418件もの差し押さえが実際に行われたとのことです。そのため、あまり軽く考えない方が良いでしょう。差し押さえられた財産で一番多いのが預金で、次いで給与・保険・不動産の順となっています。

なお、滞納した場合は延滞金がかかります。
延滞金は次の計算式で計算します(令和3年1月1日以降)。

■納期限の翌日から1カ月を経過する日までの期間
延滞金特例基準割合+1%

■納期限の翌日から1カ月を経過した日以降の期間
延滞金特例基準割合+7.3%

延滞金特例基準割合とは

「延滞金特例基準割合」とは、銀行の新規の短期貸出約定平均金利を基準に、各年の前年の11月30日までに財務大臣が告示する割合に年1%の割合を加えた割合なので、変動します。

令和4年1月1日~12月31日の延滞金特例基準割合は1.4%なので、納期限の翌日から1カ月を経過する日までの延滞金の率は2.4%、1カ月を経過した日以降は8.7%となります。

病気や災害などの事情で都市計画税が払えない時は、あらかじめ市区町村の収納課に出向いて相談しましょう。事情によっては、減免や分納、猶予といった対応をしてもらえる場合もあります。

また、一時的ではなく将来的にも支払いが苦しいと感じる場合には、家や土地の売却も選択肢に入れても良いかもしれません。不動産を差し押さえられると競売にかけられることになり、住んでいる家から強制的に退去させられてしまいます。
その前に売却を行うことで滞納分の支払いができるだけでなく、売却先から賃貸してもらうことで売却後もそのまま今の家に住み続けられるリースバックを利用できる場合もあります。

余計な税金を払わないようにするため、最低限の知識は持っておこう

都市計画税は不動産を所有している限り、基本的に固定資産税と合わせてずっとかかる税金です。また固定資産の評価は実際に人が住宅を見て行うため、ミスが出ることもありえます。

そのため、固定資産税と都市計画税については簡単でいいのでその計算方法を知っておき、おかしいと思ったら問い合わせて、正しい税額を確認するようにしましょう。