土地活用には、さまざまな方法がありますが、自身が所有している土地だからといって好きなものを建築できるわけではありません。その地域によって、建築できる建築物の用途や大きさが細かく制限されていることがあります。今回は数ある地域のなかでも「準工業地域」について説明していきます。

準工業地域

準工業地域とは、環境悪化の心配がない工業の利便を図る用途地域の一つです。

用途地域

市街化区域で定められる区域で、少なくとも道路・公園・下水道の整備がされていて、良好な都市環境を形成するために定められています。原則として、一定以上の面積で開発行為を行う場合は、都道府県知事などの開発許可が必要です。

用途地域は大きく分けると

住居系
第一種低層住居専用地域
第二種低層住居専用地域
第一種中高層住居専用地域
第二種中高層住居専用地域
第一種住居地域
第二種住居地域
準住居地域
商業系
近隣商業地域
商業地域
工業系
準工業地域
工業地域
工業専用地域

の3つです。

それぞれの建築制限や用途制限は、建築基準法と政令で細かく定められています。地域内で新たな建築物を建築する場合はもちろん、既存の建築物の用途を変更する際も制限が適用されます。

ちなみに、全国で指定されている面積が一番広い地域は第一種住居地域で、二番目に広いのは第一種低層住居専用地域です。逆に面積が狭いのは、第二種低層住居専用や準住居地域となっています。

また、商業系の用途地域よりも工業系の用途地域の面積のほうが広いのも特徴です。

準工業地域で制限されていることは?

準工業地域というと、工業という単語が含まれることから工場ばかりが建ち並ぶ地域を、想像する人が多いかもしれません。

たしかに、工場やサービス施設を建築することができる地域ではありますが、住宅や商業施設などの建築も可能なので、多種多様な建築物が存在しています。とはいえ、建築できる建築物には制限があります。

■建ぺい率
50%、60%、80%

■容積率
100%、150%、200%、300%、400%、500%

さらに

■道路車線制限
道路に面する側の建築物の高さを制限

■日陰規制
日照確保を目的

■敷地面積の最低限度

が定められています。高度地区や防火地域・準防火地域・法22条区域は自治体によって定められている内容が変わります。

準工業地域には、戸建てやマンションなどの住居、幼稚園や小中学校のほか、交番や病院など生活に関する施設のほとんどを建築することができます。ほかにも、商業施設をはじめボーリング場、劇場などのレジャー施設、パチンコ店やマージャン店など遊戯施設の建築も可能です。それから、工場やガソリンスタンド、火薬類・ガスなど危険物の貯蔵や処理施設も建築できる地域です。

ただし、危険性が大きい工場や環境をいちじるしく悪化させる工場、扱う危険物の量が多い施設の建築はできません。また、キャバクラやナイトクラブの建築はできますが、個室浴場型の性風俗店は建築できないと定められています。

ほかの工業系の用途地域との違いは?

工業系の用途地域には、準工業地域のほかに工業地域と工業専用地域がありますが、どのような違いがあるのでしょうか。

工業地域
◇危険性の大きさや取り扱う危険物の量に関わらず、どんな工場でも建築することができる
◇建ぺい率や容積率、道路斜線制限や敷地面積の最低限度は定められているが日影規制はない
◇住宅や床面積が1万平方メートル以下の店舗なら建築することはできる
◇大規模な工場の建築もできる地域なので住環境よりも工業の利便性が優先されている地域と言える

■建築不可・制限
◇幼稚園や小中学校、病院やホテルなどの宿泊施設の建築ができない
◇劇場や映画館、ナイトクラブの建築も制限されている
◇準工業地域では建築できる施設でも工業地域では建築できないものがいくつかある

そのため、工業地域では一般住宅よりも工場や事務所などの需要の方が高いのが特徴です。

工業専用地域
◇住宅や飲食業、物品販売業の店舗を建築することが禁止
◇工業の利便性が最優先されている

住居系、商業系の用途地域の特徴

住居系用途地域・・・快適な住環境を優先して用途が定められている

第一種・第二種低層住居専用地域
◇住宅や幼稚園、小中学校のほか、神社や寺院、老人ホームなど建築できる建築物の種類が限られている
◇建築できる建築物の高さ制限も、ほかの地域と比べると厳しい制限がある
◇大規模な商店や事務所、遊戯施設などの建築は禁止されている
◇第一種・第二種低層住居専用地域には閑静な住宅街が広がっている
第一種・第二種中高層住居専用地域
◇基本的に建築物の高さ制限はなくなる
◇店舗の面積や業種の制限が緩和されるので低層住居専用地域よりも利便性が高まる地域
◇宿泊施設や遊戯施設の建築は禁止されている
◇静かな住環境を優先する人向きの地域
第一種・第二種住居地域・準住居地域
◇規模は制限されるものの宿泊施設や運動施設、遊戯施設などの建築も可能
◇にぎやかな街並みになるので、住環境よりも利便性を優先する人から人気の地域
近隣商業地域・商業地域
◇商業に関する利便性が優先されている
◇住宅や店舗、さまざまな商業施設が混在していて、駅周辺や幹線道路沿いに広がっていることが多いのが特徴
◇駅前の商店街やにぎやかな繁華街のイメージ
◇住居専用地域のような静かな環境ではないが通勤や商業の利便性を優先したい人に向いている地域

準工業地域で不動産売買を考える際、ほかの用途地域と比べてどんなメリットやデメリットがあるのかを把握しておくことも大切です。

準工業地域のメリットは?

1.住宅や商業施設など建築できる建築物の種類が多く利便性が高い
準工業地域には
◇環境をいちじるしく悪化させる工場・危険性の高い施設は建築されない
◇同じ地域内に住宅地が広がっていることが珍しくない
◇工場跡の広い敷地を利用してマンションが建築されていることも多い
2.準工業地域内の土地の価格は住居系の用途地域と比べると安い
住居系の用途地域より
◇広々とした空間を手に入れることができる
◇利便性を優先したいという人にとっては嬉しいメリット
3.日照規制は売却・購入どちらにもメリット
日照条件が良好な部分は
◇売却側のアピールポイントになる
◇購入側にも嬉しいポイントになる

※準工業地域と同じく、利便性が高い商業地域では日照規制がない

利便性が高い準工業地域

準工業地域は、都市計画法で定められている12種類ある用途地域のなかのひとつで、用途地域にはそれぞれ特徴があります。

準工業地域は工業系の用途地域に分類されているので、工場ばかり建ち並んでいると思われがちですが、住居や店舗も建築されています。

ほかの用途地域と比べると建築できる建築物の種類が多く、学校や病院など生活に密着した施設も建ち並ぶため利便性の高い地域と言えます。

準工業地域ならではのメリットを活かして、不動産売買を考えましょう。