相手に、自身の所有する物の使用やそれによる収益を認めるかわりに、その相手から賃金を支払ってもらう契約を「賃貸借」といいます。不動産、物件の貸し借りで一般的なのがこちらです。

そして、無償での貸し借りを「使用貸借」といいます。

使用貸借と賃貸借の違いはなに?

賃貸借
利益を得ることを目的とし賃金のやり取りが伴う
使用賃借
個人間などで利益を求めずに無償でやり取り

利益の見返りを目的にした貸し借りを賃貸借

一見、2つの違いはお金のやり取りがあるかないかだけのように思われますが、契約で大きな違いあります。特に不動産の時に複雑化します。

不動産の使用貸借は、特に親族間で多く行われています。たとえば、土地や家の無償の貸し借りです。権利金を払うことも、地代家賃を払うこともないため、第三者との間で行われることは少ないです。

親子関係にあるときの使用貸借

使用貸借で多いのが、子が親の土地を借りて家を建てるというケースです。

多くの場合は、親子で地代を取ることなく使用貸借になります。この時、子が地代家賃を払えば賃貸借となります。

使用賃借代表は親子間

親子間で使用貸借の関係にある場合は、贈与税や相続税について理解しておかなければ、税金に関する事項が問題になります。

使用貸借に関する相続税

使用貸借の場合、贈与税は課税されませんが相続税はかかります。これは、使用貸借自体には大きな財産的価値はないものの、借地権に相当する資産を相続することになるためです。しかも、借地権分も含めた更地の評価ですので、思った以上に相続税が発生します。

これに対して、親子間でも賃貸借契約がきちんと結ばれていれば、減額評価されます。

土地・・・約15%
建物・・・約30%

土地だけを見てみましょう。

賃貸借では、更地の価格から借地権を差し引きます。借主が、貸主に地代を払う通常の賃貸借契約にするほうが相続税評価額は低くなるので、相続が節税できるのです。

土地を貸している場合
◇賃貸借契約であれば相続税の評価上は貸宅地として扱われる
◇貸宅地には一定の減額をした評価が認められる
(借地権に対する評価分がいくらか減額されるため)

しかし、賃貸契約で相場よりも安い賃料にしてしまうと賃貸契約を結んだ意味がなくなってしまうこともあります。賃料が固定資産税にあたる程度の金額であれ、使用貸借とみなされてしまうからです。

使用貸借の場合は、評価の減額はありません。

使用貸借は、貸すことで収入を得ているわけでないため、土地は更地扱いになります。これらの条件に沿って相続税が計算され、借地権の評価分が上乗せされるため減額対象になりません。

これは、その土地に子が建てた家があっても同じです。

使用貸借の契約書や 契約の解除は?

親などから、使用貸借で土地や住宅を借りるときには、使用貸借契約書を交わすことはあまりなく、ほとんどの場合は口約束できめてしまいますが、これが後々トラブルになることもあります。

トラブル回避のためには、やはり使用貸借契約書をきちんと作成しておくことが、望ましいです。

使用賃借でもトラブルはある!念のため契約書を

使用貸借の契約書では

契約期間・使用目的・費用負担・禁止事項

などを明確にしておきます。禁止事項には、転売のようなトラブルを回避するための状況を記載します。

使用貸借の契約をするうえで、気をつけなければならないのは契約の終了に関する項目です。契約期間の満了や合意解除、契約違反による解除は他の契約書でも同じですが、使用貸借の場合はこれに

借主の死亡によって契約が終了する

民法で使用貸借は借主が死亡すると、その効力を失うことが決められてる

借主が亡くなると自動的に契約が終了

契約が終了してしまうと使用貸借の継続ができなくなる

立ち退きの要請があればそれに応じなければならない

そうならないためには、借主が存命の間にあらかじめ

借主の死亡後も相続人に引き続き使用貸借をさせること

といった特約を結んでおくなど、対応を取っておけば安心です。

使用貸借は良し悪しを見極めよう

使用貸借は、親子や親せきなど親しい関係で結ぶことが多い契約です。

お互いに、第三者のような対応が取りづらい関係のため、実際には細かい様々なトラブルを抱えやすい契約ともいえます。

トラブルを回避するためには、使用貸借であっても契約を結び誰が見てもわかるようにしておくことが重要です。

また、税金に関してもやり方によっては、増税に感じてしまうこともあります。使用貸借がよいのか、通常の賃貸借が良いのかはケースによって変わってきます。

その時の状況、借主貸主の関係や税金への対策等、総合的に考えて判断をするようにしましょう。