2010年代に入ってから、日本の空き家率について取りざたされるようになりました。誰も住んでいない空き家が管理されることなく放置され、さまざまな弊害をもたらしています。

空き家率は将来的に増加する見込みで、なんとか食い止めなければなりません。空き家を減らすために、どのような取り組みがなされているのでしょうか。

増加の一途をたどる日本の空き家率の現状

2013年に総務省が行った住宅・土地統計調査では、全国の空き家数は820万戸で空き家率は13.5%という統計が出ました。この数字は当時の最高記録で、増加の一途をたどると予想されています。

売却用や賃貸用、別荘など二次的住宅であれば空き家であっても活用の道はあります。全国的に問題になっているのは、どの分類にも当てはまらないその他の空き家です。

高齢の親が亡くなり子どもも独立して自分の家を持っていると、誰もいなくなった実家がそのままの状態で放置されるケースが跡を絶ちません。

増え続ける日本の空き家

住宅は通気や掃除など、定期的な管理がなければ割とすぐに傷みます。特に、その他の空き家は木造戸建てが多く、適切な手入れをしなければ経年劣化でどんどん朽ちていくでしょう。倒壊のおそれがあったり景観が悪くなったり、不審者が勝手に住み着いたりなど、さまざまな弊害をもたらします。

その他の空き家率が多い都道府県は鹿児島県の11.0%で、次が高知県の10.6%、一番低いのは東京都の2.1%でした。ただし、東京都は人口が多い分だけ空き家の数が多く、空き家率が低いからといって安心はできません。賃貸用の空き家率は増加傾向にあり、賃貸物件の供給過多と新築物件人気が原因と見られています。

中古賃貸物件の持ち主が管理し続ければいいですが、万が一管理をしなくなれば、賃貸用からその他の空き家に分類が変わります。

不審者や仕事にあぶれている低所得者が住みつく可能性があり、将来的には戸建ての空き家問題よりも深刻になるかもしれません。

空き家が増える背景には、少子高齢化による人口減少や核家族化、中古物件の資産価値が低く売却できないなどがあります。人口は減少していても核家族化が進んでいるため、東京の世帯数は増加しているという声も上がっています。

しかし、2023年以降は減少に転じるとされており、空き家問題は今後ますます深刻化していくと見られています。空き家率や空き家数の増加は今後も見過ごせない問題と言えるでしょう。

なぜ?空き家率が増えている原因とは?

なぜ、全国各地で空き家が増えているのか、原因を探るには日本の住宅事情を知る必要があります。

第二次世界大戦後、多くの都市が焼け野原となり日本は圧倒的な住宅不足に陥りました。政府は大掛かりな住宅建設計画を発表し、同時に数多くの公営住宅やマンションが作られるようになります。

高度成長期を経てバブル期へ突入し、豊かな暮らしを求める人々が増加しました。マイホームはサラリーマンの夢と目標で、住宅ローンを組んで新築物件を購入する人が続出します。

空き家問題は少子化という時代と逆行して作られ続ける新築物件が原因

同時に、自由気ままな夫婦2人の生活を楽しみたいと、子どもを作らない世帯も増えます。やがてバブルは崩壊し、社会人になれば誰もが住宅購入をしていた時代は終わりました。不況とともに少子化と高齢化はますます進みます。

一方、日本の住宅事情は新築住宅を作り続けました。需要が滞らないように住宅の寿命を短くし、次々と新しい家を建て続けています。

日本の空き家率が増加しているのは、社会は変わり少子化が進んでいるにも関わらず、新築物件の供給過多が原因です。古くなった住宅は資産価値が下がり、地域によってはリフォームをしても買い手が付くかわからないケースもあります。かといって、更地にするにも何百万円とお金がかかります。

空き家と住んでいる場所が離れていれば、こまめな家の手入れも難しくなるでしょう。

このままの状況が進むと、2033年の全国の空き家率は28.5%にまで跳ね上がると予想されています。

空き家の増加は倒壊の危険性のみならず、治安や景観の乱れも助長します。住宅の処分や売却は手間と時間、お金がかかるので、足踏みしてしまう人も少なくありません。しかし、放置すればするほど資産価値は下がり、売却や処分の手間が増えていきます。

所有者が高齢者になると空き家の管理が困難になるケースも多々ありますので、空き家を所有している人は体が動くうちの対応が重要です。

日本は特殊?諸外国と異なる住宅事情

日本のものづくりは世界でも評価されていますが、住宅に至っては少々事情が違うようです。

諸外国との比較

家の寿命
日本35年ほど
欧米70~100年以上


空き家率
日本13.5%
イギリス3%~4%
ドイツ1%
アメリカ10%

 

アメリカは国土の広さが空き家率を押し上げている原因になっていますが、国土の狭い日本と比べれば相当低いと言えるでしょう。

欧米では、住宅購入は中古物件が主流です。パリやロンドンなど有名都市で賃貸を探せば、70年前の賃貸物件がいまだに活躍しているケースはザラです。市街地とそれ以外の区域が明確に区別されて、好き勝手に住宅建築ができないようになっているのも、欧米の空き家率の低さにつながっています。

日本の空き家率を下げるには、子どもの数を増やし人口減少に歯止めをかけること、そのうえで新築の供給をストップさせる必要があります。しかし、どちらの方法も今すぐに効果が出る類のものではありません。新築物件の供給をストップさせるにしても、需要供給のバランスが崩れて経済に大きな影響をもたらすおそれもあるでしょう。

まずは、現在の空き家を処分・売却などで数を減らすか、地域の会議室やカルチャーセンターとして再利用するなどの方法を探すことが大切です。

空き家率や空き家数を減らすための自治体の取り組み

2015年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行され、各自治体で空き家対策を講じられるようになりました。空き家法では、管理や撤去の必要性が高い空き家を「特別空き家」に指定でき、特別空き家に対して指導や勧告、命令、代執行などの措置が可能です。

特別空き家の定義は4つです。

  1. すでに空き家の一部が倒壊しており、保安上の危険があると判断したもの
  2. 長年の放置状態により衛生上有害になるおそれが著しく高いもの
  3. 適切な管理を怠っているための景観の悪化が著しいもの
  4. 周辺の生活環境を守るために、放置状態が不適切だと判断されたものです

これらの定義は国土交通省のガイドラインがもとになっており、各自治体によって特定空き家かどうか判断されます。市区町村によって判断基準は微妙に異なり、空き家管理条例を制定・施行している自治体にも温度差があるようです。

最も施行率が高いのは秋田県で、次が佐賀県、山形県、山口県、新潟県と続きます。これらの都道府県は人口の減少が激しい、豪雪地帯で空き家の放置が著しく危険という共通点があります。

空き家法の措置で一番厳しい代執行では、所有者に変わって自治体が空き家を撤去できます。しかし、実際に撤去してもその費用を回収できる確率は低く、公費の持ち出しになっているのが実情です。

空き家撤去の補助金制度を敷いている自治体もありますが、撤去してもらえるのなら放置して自治体にお任せしたほうが楽だと考える所有者も出てくるでしょう。

自治体もただ補助金を用意するだけでなく、撤去したら固定資産税の免除を約束したり、ファミリー向けに建て替える場合に限り補助金を出したりなど、撤去を促進させるための工夫をしています。

空き家を活用するなら空き家バンクへ!

空き家を処分する方法は撤去して更地にする以外に、売却したり公共施設として利用してもらったりなどの方法があります。それらの活用法を促すために、空き家バンクが存在します。空き家バンクとは、空き家の所有者と中古物件を探している人同士を結びつけるマッチングサイトです。

空き家バンクで新たな住み主を!

各地方自治体が運営しているほか、国土交通省の「全国版空き地・空き家バンクの構築運営に関するモデル事業」として実施している事業者もあります。

空き家バンクを利用するには、所有者と利用希望者の双方が空き家バンクに登録をします。登録した空き家は空き家バンクのサイトで詳細を閲覧でき、気に入った空き家があれば所有者との交渉に移ります。

空き家バンクはあくまでマッチングスタイルなので、交渉・契約はあくまでも所有者と利用希望者の当事者間です。

所有者が空き家バンクを使用するメリットは、資産価値がほとんどない地方の空き家でも購入希望者を見つけられる可能性がある点です。景気の低迷に伴い、都市部での正社員生活を辞めて農業をやりながらの田舎暮らしや自然に囲まれながらのスローライフに憧れる人が増えています。

空き家バンクはそういったニーズの流れに乗ったサービスで、田舎暮らしを考えている人にとっても物件を探しやすいメリットがあります。

一方、空き家バンクの利用率は低く、全国に820万戸ある空き家のうち、各市町村の空き家バンクには20件程度しか空き家の登録がありません。また空き家だからといって、すべての物件を空き家バンクに登録できるわけではありません。倒壊のおそれがあったり内装がひどく崩れていたりすると、登録を断られるケースもあります。

空き家バンクで成約があっても、移住者への受け入れ体制が整っていなければ、空き家バンクの利用は広がりません。

空き家バンクの利用をいかに促すか、所有者に周知していくかも今後の課題と言えます。

空き家は処分が難しくなる前に対応を

 空き家は倒壊や劣化が進むほど、再利用が難しくなります。仕事が忙しい、空き家と居住地が離れていて管理ができない、売却にかける経費がない、撤去費がないなど、空き家の放置にはそれぞれ理由があります。しかし、空き家率は上がれば上がるほど、周辺の住環境は悪くなってしまいます。ある程度修繕しなければ、売却も難しいでしょう。もしも売却を望むなら、少しでも早めに不動産会社へ査定を依頼しましょう。

査定依頼いをする際には、不動産売却査定サイト「イエイ」を利用することをおすすめします。「イエイ」では、自宅にいながらにして気軽に1000社以上ある不動産会社から最大6社選び査定比較を行えますし、取引の有る不動産会社は優良会社ばかりです。また、万全なサポート体制で売主と不動産を守ってくれますので一度利用してみてはいかがでしょうか。

空き家問題は、新築住宅の供給を控えたり法整備をさらに進めたりなど個人ではどうにもならないことも多いですが、やはり空き家の管理や処分は所有者が行うべきものです。

不動産を売約しない場合、お金がなければ自治体の空き家対策を確認して、活用や撤去が可能かどうかを調べてみましょう。