不動産の価格は、どの都市にあるのかによって大きく異なります。特に、コンパクトシティの不動産は、他の都市と同じように考えてはいけません。そう言われても、コンパクトシティについてよく知らないというケースも多いでしょう。そこで今回は、どのような都市なのかを解説し、不動産の売却を検討する際のポイントなども紹介します。

そもそもコンパクトシティとは?

コンパクトシティとは、コンパクトな都市のことです。ただし、コンパクトというのは人口や面積が少ないことを指すわけでありません。行政サービスや商業施設といった生活するうえで欠かせない要素を、特定の範囲に集約していることを意味します。

さまざまなスタイルのコンパクトシティ

コンパクトシティといっても、さまざまなスタイルがあります。そのため一概にはいえませんが、居住地域や環境保全地域というように区域を分けて、生活圏を制御することを基本的な構想としているケースが多いです。

◇交通機関を充実させることによって、徒歩によって暮らせる生活様式を前提としている

◇行政を効率化することによって財政の改善や環境の保全を実現することも期待される効果

◇訪問介護をはじめとした福祉関連サービスも効率化できるので、行政がそれらを支援する経費の縮小も視野に入れられる

以上のようにコンパクトシティは、郊外に広がってコントロールしにくくなっている状態を改善しキープするために、都心部にあらゆるものを集約して効率化を図ります。

自分の不動産のある都市がコンパクトシティになることも

自分の不動産のある都市がコンパクトシティに移行する場合は、不動産の売却価格に大きな影響が出ることを視野に入れなければなりません。

一般的な都市は、都心部にオフィスや商業都市が立ち並び、多くの人々が暮らす住宅地は郊外にあります。郊外にマイホームを購入したけれど、会社からの指示で転勤してマイホームが残ったままになっている人もいるのではないでしょうか。

マイホームのある都市がコンパクトシティに移行した場合、あるいは以降する計画が発表されている場合は気を付ける必要があります。この他にも、所有している不動産のある都市がコンパクトシティに移行する例はいろいろ考えられます。

どの場合であっても、不動産の価値がどのように変動するのかを見極めることが大切です。コンパクトシティに移行する場合は、居住地域などの区域の線引きを自治体が決めることになります。

いったん決定が下されると、不動産の活用に大きな制限が強いられてしまう可能性が高いです。自由にビルを建築できず許可を得ないと住宅も建てられなくなることがあります。その他にも、さまざまな制限が生じると考えられるので、移行が決定する前に変動を予測して今後の方針を決めておくのが理想です。

そこで参考になるのは、コンパクトシティと深いつながりのある社会的な背景です。不動産のある都市がどのような問題を抱えているのかを調べておくと良いでしょう。その解決のためにコンパクトシティへの移行を実施する可能性がどの程度あるのかを判断しやすくなります。

コンパクトシティに移行する社会的な背景とは?

コンパクトシティに移行する背景の代表として、人口の減少が挙げられます。

人工の減少がコンパクトシティーに移行する背景

かつて高度成長や人口増加によって、都市は郊外に広がっていきました。その広がりが大規模であったほど、逆に人口が減少していくと広い範囲に人口が分散している状態になってしまいます。さまざまな面で非効率であるため、拡大させた都市を次は縮小させる方向に転換する必要が出てきます。

人口の減少が激しい場合、コンパクトシティに移行することで都市を構築しなおす可能性は十分あるでしょう。少子高齢化もコンパクトシティに関係する社会的な背景です。都心部の過密化を避けるために、過去に多くのニュータウンが郊外につくられました。

当時は若いファミリー層が多く移住しましたが、時代が進むにつれて高齢者ばかりの町になっているところが多いです。ところが、郊外は都心部に比べて福祉の施設が少なく、交通の便も良くありません。そのため、多くの高齢者にとっては生活しにくく、行政への解決の要望も少なくありません。

コンパクトシティへの移行はそれに応える方策の一つです。

また、経済面に関する都市の格差も影響があります。産業が盛んでない都市は、他の都市と比べて高い収益を期待できません。収益を上げるには、労働力を確保して産業を活性化し消費者の需要も高める必要があります。人口や商業地域が分散している状態より、集中しているほうがそれらを実現しやすいです。

収益の少ない都市にとってコンパクトシティへの移行は、産業と消費の循環を促す魅力的な手段といえます。

コンパクトシティのメリットを把握して参考に

コンパクトシティのメリットを享受できる不動産は、値上がりをする可能性があります。不動産を売却する相手が行政でないなら、住民側のメリットを把握しておくことも大切です。どのようなメリットが考えられるのか整理しておきしょう。

まず、あらゆる面で利便性が向上することが挙げられます。生活するうえでよく用いる商業や行政の施設が集約されているため、それらを利用する際のアクセスがとても簡単です。移動距離が減るので交通費が減りますし、維持費をカットするために自動車を所有しないという選択もしやすくなります。

あらゆる面で利便性が向上することが挙げられるコンパクトシティ

また、アクセスしやすくなることで時間的な制約が少なくなります。たとえば、長距離の通勤がなくなるのでその分だけ家に長くいたり余裕を持って仕事をしたりできるでしょう。さらに、充実した住民サービスを受けられることも大きなメリットといえます。

人口が少なくなると自治体の税収が減って住民サービスの質は低下するのが一般的です。しかし、コンパクトシティでは行政を効率化することによって、住民サービスの予算を増やす余裕を持てるようになります。

高齢者の精神的な豊かさにつながることもメリットです。過疎化している郊外に住んでいるときのような孤立感がなくなるからです。若い世代と同じ地域に住むことになるため、世代を超えたコミュニケーションを楽しめるようになります。また、同年代の他の人との距離も近くなるため、趣味を一緒に楽しめるコミュニティも作られやすいです。

このように、高齢化社会にもマッチしたスタイルと考えられます。

コンパクトシティのデメリットも知っておくことが大事

不動産の価格の変動を推測するには、コンパクトシティにはデメリットがあることも知っておかなければなりません。

行政側にとってはメリットであっても、住民側にとってはデメリットの場合もあります。そのため、価格が上がると思っていても実際に売りに出すと下がってしまうケースもあるでしょう。

たとえば、限定された居住地域への移住を促されることに対して不満を持つ人もいます。人によってライフスタイルや趣向は異なるため、過疎地域でゆったり暮らしたいという人がいるのも不思議ではありません。移住に合意しない人に対して非難が集まるケースもあるでしょう。

多くの人が特定の範囲で暮らすことによって、住環境が急激に悪化することも懸念されます。人口が増えるとそれだけゴミも増えますし、騒音も生じやすくなってしまうからです。

住宅間の距離が近くなることでプライバシーや日当たりの問題なども出てくると予想されます。人口が増えるにつれて、ルールを守らない人も出てきて、住民トラブルが頻発することもあるかもしれません。静かで、穏やかな住環境を望む人にとっては許容できない恐れがあります。

また、郊外でしかできない仕事をしている場合は、逆に利便性が低下したと感じることが多いでしょう。林業や農業などの現場は都心部から離れているのが一般的です。

コンパクトシティでは都心部のインフラを充実させますが、代わりに郊外のインフラに関しては維持費を削減して縮小します。そのため、少しの用事のためにも都心部まで行かざるをえないケースが増えると考えられます。

居住地域の不動産!長期的な視点を持って判断を

コンパクトシティになることが分かり、焦って不動産を売却してしまう人もいます。特に不動産の価格が下落しはじめた場合は、下がりきる前に売りたくなるのは当然でしょう。しかし、すぐに判断せずに長期的な視点を持つことも大切です。

ポイントになるのは、不動産が居住を推進されている地域の内側にあるかどうかです。コンパクトシティへの移行がスタートしても、そのような居住地域への移住が急に進むわけはありません。最初は様子見の人が多くて一向に進まないケースもあるでしょう。

しかし、居住地域に指定されている限り人口が増えていく可能性は十分あります。何年もかけて少しずつ増えていくケースも珍しくありません。どのような推移の仕方をするにしても、人口が増えていけば需要も大きくなるので不動産の価格も上がっていくと予想されます。コンパクトシティの構想が発表された影響で価格が下落しても、いずれ回復する見込みがあるということです。

したがって、価格が下がって驚いてもすぐに手放さずいったん冷静になって自治体の人口推移の見通しなどをチェックしてみてください。

また、所有している不動産の種類も考慮しなければなりません。都心部を避けて郊外に住む理由の一つとして、都心部の暮らしは経済的な負担が大きいことが挙げられます。経済的な余裕がない人たちが都心部に移住しても、高い戸建てを購入する余裕はありません。そのため、居住地域への移住が進むにつれて、需要が高まりやすいのはアパートなどの集合住宅です。

それらを所有している場合は、特に長期的な視点で考えたほうが良いでしょう。

居住地域以外の不動産!郊外でも需要がある場合も

不動産が居住地域に指定されていない区域にあっても、必ずしも価格が下がるわけではありません。コンパクトシティの施策が開始されても、移住が進むとは限らないからです。最後まで移住しない人もいると考えられます。

たとえば、自動車を使った生活が当たり前になっていると、交通機関を中心とする生活への移行に抵抗を感じるケースがあります。交通機関を使う生活では、自動車を使う生活と比べて徒歩による移動距離が増えます。駅までの移動や乗り継ぎのたびに歩かなければなりません。そのような生活になるのを嫌って、ずっと郊外に住み続けることを望む人もいます。

また、住まいに関する不満があって移住をしないケースも見受けられます。居住地域への移住が急激に進んだ場合、そこにある不動産の価格は高騰しがちです。その場合、居住地域では理想の住まいを手に入れられないと感じる人が多くなるでしょう。

移住が急激に進んで、高騰しがちな不動産の価格の居住地域

人口の急激な増加で住環境の悪化が生じている場合も、そこに移住したいと思う人は減ってしまいます。このような理由によって、居住地域の外で暮らし続けることを希望する人が増えていくかもしれません。

その傾向が強くなると、居住地域に住んでいる人も郊外に価値を見出して、そちらに移住するケースが増えることもありえます。そのため、郊外の不動産であっても、居住地域にない魅力を持っているなら、残しておくのも一つの手です。

たとえば、広い敷地面積と都心部へのアクセスの良さを兼ね備えている戸建てに魅力を感じる人は多いでしょう。郊外は居住地域より価格が下落しやすいとはいえ、魅力的な不動産に対する需要は残っていくと考えられます。

売却するかどうか?計画や事例を確認して冷静に判断しよう!

自分の不動産のある自治体が、コンパクトシティに移行する計画を発表した場合は、価格にどのような影響が生じるのかを考える必要があります。ただし、コンパクトシティに関する知識が欠如していると判断を誤ってしまう恐れがあるので要注意です。

まず、移行する社会的な背景や移行によって生じるメリットやデメリットについて把握しましょう。また、不動産のある場所が居住地域なのかどうかもチェックしてください。このときのポイントは市町村単位で判断しないことです。

番地などの細かい区切りで設定されている場合もあります。居住地域の外だと思って焦って売却してから、実は居住地域だったと分かって後悔するケースもあるかもしれません。

コンパクトシティへ移行することが分かったら、自治体に詳しい計画を確認してから売却するかどうかを検討するが得策です。コンパクトシティに移行した都市の事例なども参考にしつつ、冷静に対処することを心がけましょう。

コンパクトシティに関する知識をしっかりもち売却するか否かの判断は冷静に

もしも売却するべきか判断に困ったり売却を決めた場合には、一度不動産会社へ相談をしてみることも大切です。売主にとって、この不動産選びが実は本当に大変なことかもしれません。大切な不動産売約を、納得できない業者に頼みたくないというのは当たり前のことです。

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