不動産を購入したときに税金がかかるように、不動産を売却したときにもいくつかの税金支払い義務が生じます。不動産の売却には、税金以外にもさまざまな諸費用がかかるので、節約すべきところはなるべく節約しておきたいところです。

今回は、不動産の売買時にかかる税金の節約方法について解説します。

どんな税金がかかる?不動産売却時に発生する税金

不動産売却時に発生する税金

不動産を売却する際に発生する税金は、「印紙税」「登録免許税」「不動産譲渡所得税」の3種類です。まず、印紙税について見ていきましょう。

印紙税

印紙税は、売買契約書に貼り付ける印紙にかかる税金のことです。文書を使ってお金のやり取りをする場合、収入印紙というものを文書に貼り付けなければなりません。収入印紙は、いわば公的機関のお墨付きのようなものなので、そこに税金がかかるわけです。

印紙税の税額は、売買の契約金額によって変わってきます。

登録免許税

一方、登録免許税とは、住宅ローンの残債がある場合、抵当権の抹消登記をする際に発生する税金です。不動産を購入する際は、住宅ローンを組む場合がほとんどです。住宅ローンを組むと、購入した不動産が担保となります。

抵当権の抹消手続きにかかる

抵当権とは、担保を優先的に処理できる権利のことです。抵当権が設定されたままの不動産は、その物件が担保に入っていることを証明することになるので、売却の際は抵当権を抹消しなければなりません。その抹消手続きにかかるのが登録免許税です。

登録免許税は1件あたり1,000円かかります。ただ、手続きには専門的な知識が要求されるため、司法書士に依頼して手続きを代行してもらうのが通常です。司法書士に手続きを依頼すると、1万円ほどの手数料が発生します。

不動産譲渡所得税

そして、不動産売却時に最も厄介になる税金が、不動産譲渡取得税です。不動産を売却すれば、売主は売却代金を得ることになります。不動産譲渡取得税は、その売却代金にかけられる税金です。所得税のようなもので、売却代金が大きければ不動産譲渡取得税も高額になります。

デジタル文書で印紙税を節約する

ただし信頼性が劣ることも

デジタル文書なら印紙税を節約できるけれど。。。

不動産売却時にかかるそれぞれの税金の節税方法を見ていきます。

まず印紙税ですが、これは契約書に貼付する収入印紙にかかる税金です。しかし、収入印紙を貼付しなければならないのは紙媒体の売買契約書だけです。PDFなどのデジタル契約書には、収入印紙を貼付する必要がありません。もちろん、収入印紙が貼られている紙の契約書は、改ざんするのが難しいため信頼性が高くなります。

これに対して、収入印紙を貼付する必要のないデジタル契約書は、紙の契約書に比べて改ざんしやすく、信頼性という意味ではどうしても劣ります。しかし、少しでも節税したいと考えるなら、デジタル契約書を作成したほうがお得です。

印紙税は、売買契約で決められた売却代金に応じて税額が変わります。たとえば、1億5,000万円で不動産が売却されたとき、印紙税は売買契約書1部あたり6万円かかることになります。契約書は、売主と買主の双方がそれぞれ保管するため、収入印紙も2枚発行しなければなりません。したがって、印紙税は計12万円です。

デジタルで契約書を作成すれば、この印紙税12万円は一切かかりません。ただ、デジタルでは信頼性の面で不安だと感じる人もいるでしょう。その場合は、紙媒体の売買契約書を1部だけ用意して、それをコピーするという方法を検討してみてください。
コピーした文書には収入印紙を貼付する必要はありません。ですから、この場合は6万円分の印紙税を節約できることになります。

登録免許税の節約方法は?

抵当権抹消登記をしたときに発生する登録免許税は、1件あたり一律1,000円の税金が課されます。たとえば、2つの土地に1つの建物が建っている場合、それぞれの土地と建物に1,000円ずつ課税され、合計3,000円の登録免許税が発生することになります。

専門的な知識が要求される抵当権抹消登記は、専門家の力を借りないと手続きが困難です。しかし、司法書士などの専門家に手続きを依頼すれば、その手数料は高額なものになってしまいます。依頼する司法書士によっても違いますが、相場としては1万円、高ければ2~3万円ほどする場合もあります。ただ、抵当権抹消登記は自分でも手続きをすることが可能です。

自ら手続きを行えば、司法書士への依頼料を節約することができます。ただし、抵当権抹消登記は簡単な手続きではありません。不動産を売却したら、物件の引渡しまでに抵当権抹消登記を済ましておかなければなりませんが、手続きに手間取って期日までに抹消登記ができていないと、引渡しがスムーズにできなくなってしまうこともあります。

自分で手続きを行う際は、きちんと準備をして計画的に行うよう注意してください。

不動産譲渡取得税がかからない人もいる?

不動産譲渡税がかからない人って?

不動産譲渡取得税は、場合によってはかからない人もいます。この税金は、売却した不動産が高く売れたときのみ発生する税金だからです。

たとえば、2,000万円で購入した不動産を3,000万円で売ることができたとします。この場合、売主には1,000万円の利益が発生することになります。その場合、この1,000万円に対して不動産譲渡取得税がかかります。
一方、同じ3,000万円で売却した不動産でも、それが4,000万円で購入した不動産であったら、むしろ1,000万円の損失を被ったことになります。この場合は、不動産を譲渡したことによる利益がないため、不動産譲渡取得税もかからないのです。

このように、不動産譲渡取得税は不動産を売却したことによる利益にかかる税金です。

また、1,000万円の利益があった場合、この1,000万円すべてに税金がかかるわけではありません。不動産を購入したときや、また売却するときにはさまざまな経費が発生します。不動産譲渡取得税は、売却時に上げた利益から経費を差し引いた金額に課税されます。

たとえば、利益が1,000万円だったとき、購入時に200万円、売却時に250万円の経費がかかったとします。このとき、不動産譲渡取得税の課税対象は1,000万円-(200万円+250万円)=550万円となります。

不動産譲渡取得税の節税方法とは

5年を目安に変わる

不動産譲渡取得税の税率は、その不動産の所有期間に応じて決められます。不動産の所有期間が5年を超えている場合、これを「長期譲渡取得」といい、5年を超えていない場合は「短期譲渡取得」となります。

長期譲渡取得の税率が15%なのに対して、短期譲渡取得の税率は30%です。つまり、長く所有していた不動産を売却するときのほうが、税金がかからないということです。先ほどの例を挙げると、不動産譲渡取得税の課税対象が550万円だった場合、もしそれが長期譲渡取得であれば税金は82万5,000円になります。

一方、同じ550万円であっても、短期譲渡取得だと165万円もの不動産譲渡取得税がかかってしまいます。そのため、不動産譲渡取得税を節税するためには、なるべく長期譲渡取得の不動産として売却するということが重要です。また、不動産譲渡取得税には、ほかにもさまざまな特別控除や特例が適用できます。

たとえば、3,000万円の特別控除です。適用には条件がありますが、条件を満たせば譲渡所得が3,000万円以下の場合、不動産譲渡取得税がゼロになります。また、所有期間が5年を超えると税率で優遇されますが、さらに10年を超えた不動産に対してはより厚い税の優遇措置を受けることができます。

もちろん、この特例にも条件がありますが、条件を満たせば税率が10%に軽減されます。こうした特例を利用すれば、不動産譲渡取得税を大幅に節税することもできるでしょう。

【購入してから5年以内の不動産を売却する場合に注意したいこと】

まとめ

節税すれば利益になる!しっかり対策しよう

 不動産を売却したときに得られるのは利益ばかりではありません。仲介会社に支払う仲介手数料や司法書士への代行報酬など、さまざまな経費が発生することになります。売却時にかかる税金も一種の経費です。

しかし、経費は工夫次第で削減することもできます。うまく経費を削減できれば、利益を増やすことにもつながります。不動産の売買で高い利益を得るためにも、しっかり節税対策をして経費を少しでも減らしましょう。