不動産の重要事項説明書には、「供託所等に関する説明」という項目があります。耳慣れない言葉かもしれませんが。この供託所は不動産取引を行う上で極めて重要な意味を持っているのです。知っていなければ大きな損失にもつながりかねません。そこで、この記事では供託所とはどんな場所で、何のために重要事項説明書に記載されているのかについて説明をしていきます。

供託所とは

供託には金銭・有価証券・物品などを渡して預かってもらうという意味があります。そして、そうしたものを預かってもらう場所が供託所です。どこで、預かってもらうかというと法務局・地方法務局およびその支局などがあります。

つまり、一般的に供託所といえば、法務局のことを指すわけです。また、供託にはいくつかの種類が存在します。不動産取引において利用する可能性があるのは「保証供託」や「弁済供託」ですが、その他にも「選挙供託」「執行供託」などといったものがあります。

たとえば、選挙供託とは選挙の際に立候補者が定められたお金を預けることです。これは冷やかしなどで無責任な立候補者が乱立するのを防ぐためのもので、選挙の結果、規定の票数に満たなければ供託金は没収となります。

一方、執行供託とは第三者の元に差押命令が届いた場合にはそのお金を供託所に供託できるという制度です。

仮に、会社員が借金を返せず、給料の差押命令が会社に届いたとします。しかし、会社側としてはよく知らない金融機関に対して本当に従業員の給料を渡してよいのか判断がつきかねるところです。また、複数の金融機関から差押命令が送られてきた場合にはどこに渡せばよいのか迷ってしまいます。そこで、供託所にそのお金を供託すれば、借金の支払いを代行してくれるというわけです。

不動産取引で供託所の説明が必要な理由

不動産取引では供託所の説明が必要

不動産取引を行っているとトラブルによって損害が発生する場合があります。たとえば、売買契約を解除したにも関わらず、買主が手付金を返してもらえないなどといったケースです。

このような場合に顧客を保護できるように、宅建業者は営業開始前にあらかじめ営業保証金として供託所に一定のお金を預けるルールになっています。これが「保証供託」です。

ちなみに、その金額は本店事務所が1000万円、支店事務所が500万円です。

たとえば、本店1店舗、支店2店舗の営業を始める場合には、2000万円の営業保証金が必要となります。もちろん、支店を増やしていけば、その都度500万円を預けなければならないのです。

しかし、大手不動産会社ならともかく、実績が何もない新しい会社にとって1000万円は大きな負担です。そこで、国土交通大臣が指定した保証協会に加入して弁済業務保証金分担金を納めれば、営業保証金は免除されるという救済処置があります。

弁済業務保証金分担金の額は本店事務所が60万円、支店事務所が30万円となるため、営業保証金と比べて負担はかなり軽微です。その代わり、保証協会に入ると数万円程度の年会費を払う必要があり、供託金と違ってそのお金は廃業後も戻ってこないなどといったデメリットもあります。

こうして供託されたお金は宅建業者の顧客がなんらかの損害を受けた際の弁済に用いられます。ただ、顧客側が供託所や供託金の存在そのものを知らなければ、せっかくの制度を活かすことができずに大きな損害を被ることになりかねません。そのため、不動産取引をする際には、業者重要事項説明の一環として必ず業者側から供託所についての説明を書面ですることが義務付けられているのです。

不動産の重要事項説明書には、「供託所等に関する説明」という項目があります。耳慣れない言葉かもしれませんが、この供託所は不動産取引を行う上で極めて重要な意味を持っているのです。

知っていなければ大きな損失にもつながりかねません。そこで、この記事では供託所とはどんな場所で、何のために重要事項説明書に記載されているのかについて説明をしていきます。

不動産取引で生じた損害の請求先

不動産の取引で損害が発生した場合は重要事項説明書に記載されている供託所に損害額を請求することができます。

ただ、重要事項説明書に保証協会の名前が記載されている場合は直接供託所へは請求できません。まずは保証協会に連絡して事情を話します。すると、保証協会による仲裁の元で話し合いが行われることになります。

その結果、和解が成立すれば問題ありませんが、話がこじれて解決の目途が立たないといったケースも少なくありません。

そのときは、事情を確認し、業者側に責任があると認めた場合は保証協会が認証書を発行してくれますそれを添付して供託所に請求を行えば、弁済金を支払ってもらえるというわけです。

供託所に請求できる上限額は

供託所に請求できる補償には上限がある

供託所に対して損害額を請求するときに気をつけなければならないのは、補償には上限があるという点です。そもそも、損害額は業者が供託したお金の中から支払うため、その金額を超えた分に関しては補償ができないという理屈になります。

つまり、その業者の事業所が本店しかなければ支払えるお金は1000万円までです。もし、本店に加えて支店が2つあれば、「1000万円+500万円×2店舗」で上限は2000万円となります。

ただ、多くの業者は供託所の供託金よりも負担の軽い保証協会の弁済業務保証金分担金を選択しています。その場合は補償額の上限も100万円前後にまで減ってしまうのかと不安に感じる人もいるかもしれません。しかし、その心配は不要です。

確かに、保証協会を選択すれば、納付する額は本店60万円、支店が1店舗30万円とかなり少額です。その代わり、保証協会では加入している業者から補償の負担を分担する形で納付を受けています。したがって、補償をしなければならないときには、複数の業者から集めたお金を使って支払うことになります。

要するに、業者が保証協会に加入している場合でも、供託所に供託している場合と同額の補償を受け取ることができるのです。

家賃でもめたら供託所を利用する方法も

債務者が債務を履行しようとしても債権者がそれを拒んだり、あるいは債権者の居場所が分からなかったりして、それを実行できないケースがあります。

不動産取引の場合でよくあるのが地代や家賃でもめるパターンです。たとえば、大家が急に家賃を値上げすると宣言し、借主はそれが不服なので今までと同額の家賃を払おうとしたとします。

それで、大家が受け取れば問題はないのですが、受領を拒否された場合は支払債務を果たしていないという理由から借主の賃貸借契約が解除されることにもなりかねません。そのような場合に、供託所に家賃相当分のお金を預けておけば支払債務を免れることができます。これが「弁済供託」です。

ただ、弁済供託を実行するには正しい手順に基づいて行わなければなりません。極端な話をすると、大家に全く家賃を払おうとはせず、いきなり供託所にお金を供託しようとしても、それは認められないのです。弁済供託をするには「家賃を支払おうとしたけれど拒否された」という事実が必要になってきます。

また、大家の所在が不明で家賃が払えないといったケースでは家賃を払う準備があることを通知して受領を催促しなければなりません。そうした手順を経て、初めて供託所を利用することができるようになるわけです。

さらに、家主が亡くなって相続者も不明であるために家賃を払えないというケースもあります。このように、債務を履行したくてもそれが不可能な場合も、その事実関係を明らかにした上で弁済供託を行うことで支払債務から免れることができます。

万一のために供託所を知っておこう

不動産取引に関するトラブルは起こらないに越したことはありません。しかし、大きなお金が動くため、万が一のための備えは必要です。

そして、その備えの一つとして存在しているのが供託所です。供託所を活用すれば、思わぬ金銭トラブルに巻き込まれた場合でも損失を免れるケースが多々あります。

ただ、その仕組みを知らなければ有効に活用することはできません。安心して不動産取引を行うためにも、この記事などを参考にしながら供託所についての知識をしっかりと積んでいきましょう。